ガララッ!とけたたましく戸が開いた音が聞こえたと思えば、次にこれまたけたたましいどたどたという足音。

勝手に入ってきてはこんな足音で入ってくる奴なんて限られている。神楽か切羽詰った新八だがあいつらは定春の散歩ついで買い物に出かけたばかり。となれば残りはあいつしかいない。



「たいへんだー!」

「…なにが」



やっぱり名前だ。謙虚という言葉が最も似合わない女。いつもは笑顔でやってくる癖に今日はやけに顔が青ざめていた。



「どうしたんだよ?」

「…ううっ」



しまいには泣き出す始末。いったいどうしたってんだよ?いつもへらへら笑ってる奴の泣き顔を見るとやけに色っぽ…いやいやありえないから。銀さん、こんな礼儀知らずのゴジラ女なんか好きじゃないから。



「名前、」



それでも気にかけてしまう理由は自分がいちばんよくわかっている。辛いときにこいつの顔を見ると安心するのは、それだけ名前を信頼してるから。そして心の底が温かくなるのは名前のことが…。



「銀ちゃんの気持ち悪い目、糖尿病のせいだった!」



やっぱり名前のことがす……は?
こいつは今なんと言いやがった?



「銀ちゃんの死んだ魚みたいな目は糖尿病のせいなの!三大…なんてったっけな。とにかくこんな気持ち悪い目にしたのは病気のせいなんだよ!くっそう糖尿病め!よくも銀ちゃんの目を汚染しやがってえ!」



ごたごた言ってるが、俺の耳にはうまく入ってこなかった。俺の心配をしてくれて泣いてくれた、そこまではすげえ嬉しい。
問題はそのあとだ。俺の目は糖尿病のせい?気持ち悪い目?汚染された目?



「でも大丈夫!わたしがついてるからね!」



グッジョブ、というように親指を立てた名前に乾いた笑いしか返せない。俺の目は生まれつきだし、まだ糖尿病予備軍だ。つまり俺の目は名前の言葉を借りれば汚染などされてない。

堂々と目の悪口を言ったことに気づいていない名前に、乾いた笑いしか返せない俺は遠い目をしていることだろう。





君より糖尿病のほうがよっぽど甘い
(ただいまー。あ、名前ちゃん)
(おかえりーお邪魔してまーす)
(銀さん、なんで泣いてるんですか?)
(男がめそめそすんじゃネーヨ)
(きいてふたりとも!糖尿病が酷いんだよ!)
(…酷いのはおまえだよ)



2010.03.23

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