「ん。」



いきなり差し出されたのは彼愛用のたて笛。なにをするわけでなく、彼の部屋もといピヨ彦くんの部屋でふたりして暇人なりに各々過ごしてたときのことだった。



「え?なに?」

「ん」



問いただしても相変わらず「ん」としか言わず、たて笛を突き出す彼。いったいなにがしたいのかわたしには理解できない。今までピューピューと好き勝手吹いてたくせに、いきなりその笛を突き出すとは…。



「ほら」

「いや、だからなに?」

「ちょっとでいいから」

「ほんとになんなの!?」



もはや会話も成立していない。言葉のキャッチボールはいずこへ?同じ日本人のはずなのに言葉の壁を感じた。



「おまえがなんなの?」

「ああ、喧嘩売ってんのね」



そうかそうか、なるほど理解した。よーし、そっちがその気なら乗ってやろうじゃない。だが喧嘩への意気込みも無視してなおも彼は「ん」と笛をわたしに突き出すのだ。
あ、もしかして…?



「吹けってこと?」

「…名前が吹きたいなら」



そっぽ向きつつも顔を赤らめる彼を見てようやく答えを見つけた。吹いて欲しいなら最初からそう言えばいいのに、変なとこで照れ屋だなあ。
でもそんな彼が可愛く感じたのはひみつだ。



「はいはい、吹かせていただきます」



突き出された笛を持ってピューと吹く。まあ彼のように上手ではないけれど小学生に戻ったようで懐かしく感じた。



「懐かしいなー。久しぶりに吹くのもいいね」

「間接」



はい?また言葉の壁?
突拍子もなく言うのは彼の特徴だけど…。



「なに?」

「だから、間接ちゅーだな」



壁は感じない。けれど彼は爆弾を投下した。
先ほどの照れた顔はどこへやら、ジャガーさんはしてやったりな顔をしていた。前言撤回、ちっともかわいくない。すべては彼の言葉にまんまと乗せられたのだ。





言葉の壁は砕けた
(ごちそうさまでした)
(ちょっジャガーさん!?)

(赤面したのはわたしの番)



2010.03.22

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