7歳児を引き取った。
なぜ?そんなこと俺が聞きてえよ。
ガキを養える金があるでもなし、知り合いのガキでもなし、依頼ですらなし。強いて言うなら昔の俺と重なっただけ、たったそんな理由なのに。
「ぎんちゃん、ぎんちゃん」
「んー?どうしたァ?」
久々の依頼で、それも結構危ない依頼なもんだから名前を置いて出かけようと準備をしているときだった。
ちょいちょい、と名前が俺の着流しの裾を引っ張る。目線が合うようにしゃがむと、名前は嬉しそうに笑って俺の頬をぺたぺたと叩いてきた。これはいつものことで、彼女にとってのスキンシップなのだが、力加減がうなくないので地味に痛い。
「ぎんちゃんお出かけでしょ?」
「おー。今日は遅くなっから、定春と仲良くいい子にして待ってろな」
「うんっ!」
頭を撫でながら優しく言ってやると、満面の笑みで元気よく頷く名前に癒しを感じた。新八や神楽では得られない癒しだ。
ああかわいい。もしも娘がいたらこんな感じなのだろうか。俺にとって名前は娘のような存在になりつつある。もう嫁になんかやらないからね。彼氏も駄目だからね。
「あ、そーだ!」
「ん?」
「ぎんちゃんわたしたいものがあるの!」
俺が癒しに浸ってると、本来の目的を思い出したらしい名前は自分のポケットをごそごそと漁り出した。
必死で探してる姿もかわいいな。こいつァ大きくなったら間違いなく上玉になる。本格的に嫁に出すの嫌になってきた。
「銀ちゃん紹介するね。彼と結婚を前提におつき合いしているの。銀ちゃん、今までお世話になりました」とか言ったりして。
ああ嫌だ!行かないでくれ名前!
お父さんは許しませんよぉお!!
「はいっ、どーぞ!」
なにかが手のひらに乗せられたことで、爆発しかけた被害妄想は縮んでいく。見てみると、そこにはイチゴミルク味のあめ玉が数個転がっていた。
呆気にとられる俺と、満面の笑みを浮かべる名前。名前がポケットに仕舞ってたあめ玉を俺の手のひらに乗せた状況は把握できる。だが、なぜ今?
「どうしたんだ、コレ?」
「ぎんちゃん、イチゴミルクがエネルギーげんだから、あまいもの食べないとうごけないんだよね?しんぱちが言ってたよ」
あの地味眼鏡。眼鏡のくせになんっつー嘘っぱち教えてやがんだ。今度から新八じゃなくて嘘八って呼ぼう。
「だからね、ぎんちゃんが元気でますようにって、わたしがいっぱいおまじないかけたアメあげるね!」
ああ、いいこと思いついた。
嫁に出したくないなら出さなきゃいい。
「名前」
「ん?どーしたの?」
「名前は俺が好きか?」
「うん!だーいすき!」
「俺も名前が大好きだ。名前は誰のお嫁さんになりたい?」
幸いなことに、俺が勝手に父親気分になってるだけで名前と血の繋がりはない。よって、合意があれば名前が大きくなったときに俺が名前を嫁にもらえばいいんだ。
「ぎんちゃんのおよめさんがいい!」
「よしきた!予約で婚姻届でも書くか!」
「? うん!」
かわいいかわいい俺の名前。
お互い好き合っているし、結婚の言質もとれた。これで名前が俺の前から去ることはない。
絶対他の野郎なんかにやらねえからなァアア!!
「アンタいい加減にしろよォオ!」
(名前ちゃん、あんな変質者なんか放っておいていいからね)
(大丈夫アル。名前は定春が守ってくれるネ。定春と大人しくいい子で待ってるヨロシ)
(うん!しんぱちも、かぐねえもがんばってね!いってらっしゃい!それじゃあさだはる、いっしょにおひるねしよっか)
(ワン!)
(え?俺放置…?)
2010.04.18
2019.11.05 fix.