ざあざあと、雨が地面に叩きつけられている。七夕だというのにこの調子じゃあ今年天の川を見るのは無理そうだ。仕方がない、この季節は雨が多いから。天気予報でも言っていたがやみそうもない。今日は朝から現在までこんな調子だ。

本来一緒に見るはずの相手は遠く離れているため、晴れようがなんだろうが無縁のイベントだと言っても過言ではない。課題をやっつけている最中、休憩時間がてら物思いに耽ってみたりする。

ヴーヴーと持ち主を呼ぶ携帯の音。画面を見てみればそこには愛しの彦星もとい遠く離れた彼の名前。
部活が忙しい彼がこの時間に電話をかけてくるのは珍しい。ちょうど考えていたし休憩中だったし、ナイスタイミングというかなんというか。



「もしもーし」

「悪ぃ、ぬうかしてたか?」

「んーん、課題やってちょうど休憩してた。こんな時間に電話かけてくるなんて珍しいね。部活は?」

「雨で中止。なま、家んかいけーってきた」

「おかえり」

「なまちゃん」



沖縄も降っているらしい。たしか天気予報のお姉さんも全国的に雨模様って言っていたかな。



「今日は見えないね」

「ぬうがよ?」

「天の川」



きっと沖縄から見た星空は綺麗なんだろうなあ。天の川とか果てしなく見えそう。なんて、見たこともない景色に想いを馳せる。

可哀想に。年に一度だけの逢瀬だというのに、会うことも叶わないなんて。わたしたちと同じ。



「永四郎がよお」

「それって部長さんだっけ?」

「ん。永四郎が言うとったけど洒涙雨っていうらしいぜ」

「ん?」

「七夕に降る雨のくとぅだしよ」



さいるいう。お洒落の洒に涙に雨と書くらしい。お洒落な涙の雨とは?と問いかけると、凛というか部長さん曰く、彦星と織姫が流す涙でできているらしい。へえ、なんてロマンチックで悲しいのかしら。
電話をスピーカーにして洒涙雨を調べてみる。


【洒涙雨】(さいるいう)
七夕に降る雨のこと。
彦星と織姫が逢瀬の後に流す惜別の涙が雨になったとも、逢瀬が叶わなかった悲しみに流す雨だとも言われている。


とのことだった。ヤホー先生ありがとう。
そのことを凛に伝えると「ふーん」とあまり興味のなさそうな返答だった。話を振ったのはそっちなのに。



「逢えなくて悲しんでるんだね。年に一度なのに」



まるでわたしたちのようだねとは言わない。だって凛もわたしも彦星と織姫って柄じゃないし、年に一度という誓約があるわけでもない。まあ実際に会えるのはその程度だけど。

でもせめて少しくらい晴れて欲しいと願った。
それは、純粋に空の川でふたりが逢瀬できるように願ったのか、はたまた空のふたりに自分たちを重ねて願ったのかは知らぬふりをした。



「俺は洒涙雨が降っても平気だぜ」



凛が静かに呟いた。
晴れようが雨が降ろうが関係ない。距離が縮まるわけではないもの。



「逢えなくても俺は名前のことが好きやっさー。この気持ちは誰にも負けんさあ。雨なんか屁でもねえよ」



平気だと言っていた割に落ち込んでいたのだと気づく。その証拠に、先ほどまで雨に打たれて冷たかった心が凛のおかげでじんわり温かくなった。きっと凛はそんなわたしにわたし自身より早く気がついてこんなことを言ってくれたんだ。



「わたしも、凛のことが好きだよ」



たとえ逢えなくても、優しい言葉をくれるきみが好き。どんなに距離があっても、それを感じさせないくらいわたしのことを想ってくれるきみが好き。

天の川に隔てられることも、洒涙雨を流すこともない。だってやっぱりキャラじゃないもの。



「あ。あがったな、雨」

「ほんとだ」





年に一度の再会を夢見る天の川
(叶わない涙ではなく、惜別の涙だった空に自然と笑みがこぼれた)


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