「なでなでするの、楽しい?」



いつも目を細めて気持ちよさそうにしながら、されるがまま撫でさせてくれる蛍くんが、にこにこしながら上目使いに尋ねてくる。



「楽しいというか癒されますね」

「ふーん」



なにかを考えている顔。もしかして撫でられるの嫌だったのかなと思って聞いてみると「俺、主になでなでされるの好きだしね」と否定された。
そういえば以前も同じようなことを言われた。



「ねえ、」



ほっとしたのも束の間。撫でている手を掴まれる。掴んだのは撫でられている蛍くんご本人。
自分の手を重ねた蛍くんは、わたしの手を優しく、それでいてしっかりと掴みするすると自分の頬に誘導した。



「こっちも、なでなでしてよ?」



さらに目を細めて笑う蛍くん。いつものあどけない表情ではない、いたずらが成功した子どものような表情で笑っている。そこに少し香る色気。

なおも蛍くんの手は重ねられていてすりすりとわたしの手に頬を擦りつけてくる。無理やり押しつけられているわけではないので、振り解こうと思えば容易いはずなのに、ただ目の前の光景を見つめることしかできない。

ああ、心音がうるさい。
不思議と耳障りじゃないことには気づかないふりをした。

「ねえ、主」と蛍くんの八重歯がギラリと光る。
萌黄色の両の目が、逃がさないと言っていた。





「なでなでするの、楽しい?」
(は、はい…)



2019.11.03

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