どうかあの日といつまでも変わらないまま、ずっと一緒にいられますように。そう願っていたはずなのに。
「名前、あれ見て!」
「今忙しいからあとにして」
「名前!おっきい街!」
「そうね」
「名前!名前ってば!」
「もう!うるさい!」
カールの蘇生のために旅立ったわたしとケヴィンに、ホークアイとリースという仲間も増えて心強い旅をしていた。それにつれてわたしは、ケヴィンに昔と同じ態度がとれなくなっていく。
「またケヴィンと喧嘩かい?」
「うるさいな、余計なお世話よ」
腹いせに関係のないホークアイにまで当たる始末。ほんとにわたしってば救いようがない。
「…ホークアイ、ごめんなさい」
「構わないよ。俺に当たれるくらい元気がある証拠さ」
気がついてしまった。ケヴィンのことが好きだと。
この気持ちに気づいてしまってから昔のようには戻れない。
ケヴィンが話かけてくれるのは嬉しいのに素直になれなくてきつくあたってしまう。それでもケヴィンは昔と変わらない笑顔で受けとめてくれるから心が痛い。
ケヴィンが他の女の子と喋ってると、いくらリース相手でもその女の子が恨めしくて仕方ないの。
ほんとうは素直になりたいし、リースにそんな汚い感情を抱きたくない。好きだという感情が邪魔をする。
いつまでも変わらないままでずっと一緒にいたい。そう願っていたわたしが変わってしまうなんて道化だ。あの日と変わらない笑顔のケヴィンが眩しい。
「昔のままなんて無理だったのかな。わたしばっかり変わってばかみたいだよ」
「うーん…それはどうかな?」
予想外な返答にうつむいてた顔をあげてホークアイを見やる。するとホークアイは得意気な顔をして笑った。
「試してみようか」
言葉の意味がわからずにいると、ホークアイに抱き締められた。どうしてこうなった?
「ホークアイ!?なにしてるの!離して!」
こっちは必死だというのに、ホークアイは笑いながら「大丈夫だよ」なんて呑気にしている。
ケヴィンにもこんな風に触れられたことないのに。って性懲りもなくなに考えてるの、わたし!
「おや?そんなに必死な形相でどうしたんだい、ケヴィン?」
引っ張られるような強い衝撃。ホークアイの花の香りから、いつも隣にあるほっとした香りに包まれる。
え?なにが起きたの?
目まぐるしく回る景色に理解できずにいると、目の前のホークアイは「だろ?」とわたしに微笑む。
「名前は渡さない」
ああそっか。わたしは今ケヴィンに抱きしめられているんだ。恐る恐る見あげれば、殺気を放ってホークアイを睨むケヴィンらしくないケヴィンがいた。こんなケヴィン見たことがない。
「さてと、俺はお邪魔みたいだし退散するとしよう。ケヴィン、名前を離したら今度は俺が戴くぜ」
「じゃあな」と言ってホークアイが去っていく。影が小さくなった頃、ケヴィンがわたしの肩を掴んでぐるりと反転させ顔を覗き込んでくる。
「名前、ダイジョーブ!?」
「だ、だいじょうぶよ…」
「そっか、良かった…」
安堵のため息をついてへにゃりと笑うケヴィンに、呆気にとられたわたしは状況についていけずにいた。だって先ほどまで殺気を放ってた奴が今度は笑っていて。しかもケヴィンが殺気を放つなんてよっぽどのことで。
「ホークアイに名前とられるって思ったら我失ってた。昔から名前のこと大切だから」
ケヴィンが変わらないと思ったのは昔からずっとそうだったから。わたしが変わったからじゃない。わたしがきみに気づいたのが遅かっただけ。わたしがやっときみと同じになったんだ。
「オイラ、名前のこと大スキなんだ」
昔も今もきみが好き
(わたしも、大すき!)
2019.11.05 fix.