ああ、だめだ。最近はずっと上の空。
苗字さんに財布ちゃんを拾ってもらったあの日から、彼女のことでいっぱいでなにも手につかない。
バンドの練習?
ノンノン、なかなか頭に入らない。
きみの瞳にやられたのさ。
きみに夢中、もう首ったけ。
おれの脳内はきみ一色さ、マイハニー。
イエー。
「あ。歌詞できた」
「珍しいじゃん、レッサーパンダが先に思いつくなんて」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「で、どんな歌詞なの?」
ただいま、バンドメンバーがおれの家に集合し、みんなで曲作り中。っていうかアンディーヌ珍しいってなんだよ。
おれは冒頭で思いついた歌詞を、苗字さんのところは伏せて伝える。するとアンディーヌもハテナッチもチョキオも驚いた顔をおれにむけた。
「レッサーパンダ、これってラブソングじゃん!」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「まあそういやそうだけど、前のもラブソングみたいなもんじゃん」
「今までのとはちょっと違うような…なんていうかリアルだよね」
チョキオめ。なんだって勘が鋭いんだ。
しかし、知られてはならない。知られたら最後ぜったい邪魔なり冷やかしなりしてくるはず!(特にアンディーヌ!)
そういえば今何時だ?
あ、やばい。
「ちょ、おまえら帰れよ」
「は?これからレッサーパンダの歌詞を元にフィーリングでやってこうってときになんで!」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「なんか予定でもあんの?」
「これから買い物に行くんだよ」
ちょうどよくメールが届く。携帯のディスプレイに表示された名前を見て思わずにっこり。
その数秒後にそそくさと出ていくアンディーヌとハテナッチとチョキオ。なんだ、やけに素直だな。なにはともあれ、これで邪魔者はいない。
「メンズノンはパーペキだぜ!」
そう呟いておれは部屋をあとにした。財布ちゃんも持ったし携帯ちゃんも持った。そしておれは服屋という名の戦場へ向かうのだった。