「昨日からレッサーパンダが怪しい」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「ずいぶんとリアルなラブソングだったし、もしかしたら彼女ができたかもね」
「くそ!レッサーパンダの奴いつの間に彼女なんか…」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「…ハテナッチ、前回からそのセリフばっかりだね」
「よし。あとつけようぜ!」
あいつらがそんな会話を繰り広げているとはつゆ知らず。実現したお礼の日に、おれは人生でいちばんそわそわしていた。
レストランに着くとそこには既に苗字さんが座っていた。ああやばい可愛いしいるだけで絵になります。
おれは店の鏡で最終チェックをして席に赴く。先ほどから、やけに視線を感じるがきっと気のせいだ。
「こんにちは、レッサーさん」
「こっこんにちは!どうもすみません、遅くなってしまって…お待たせしました」
「あまり待っていませんので平気ですよ」と苗字さんが微笑んだ。なんて優しい子なんだ!と思わず言葉が出そうになるのを無理矢理飲み込む。しかもアンディーヌと違ってレッサーって言ってくれる、アンディーヌと違って。(ここ重要)
「メニューをどうぞ。わたし、決めるのに迷っちゃって…」
「ぜんぶ美味しそうで」と照れ笑いする苗字さんこそなにより美味しそうです。(はっ、いけない失言)
とりあえずおれはハンバーグ、苗字さんはナポリタンを頼む。雑談してる内に運ばれてきた料理を見て、そんなに話してたのかと楽しさで時間を忘れていたことに気づく。
「レッサーさん、このナポリタンとても美味しいですよ」
「まじですか?たしかに美味しそうですね!」
「食べてみます?」
「はい、あーん」と言いそうな苗字さんの動作に思わず固まる。あーんじゃん、それ、あーんじゃん!つうか間接チュウじゃん!?
「レッサーさん?」
「え、いや、んじゃいただきます」
苗字さんからもらったナポリタンはとてもじゃないが味は分からなかった。ナポリタンらしい味はしていたと思う。
ただ、ひとつだけ言えるのは、おれが彼女に恋をしたということは決定的で。
のども通らないくらい。恋しちゃったんだ、絶対。