また会う約束をした。今度はふたりでピクニックに行く。しかも苗字さんの手作り弁当という特典つき。ああやばい、今からでも涎が我慢ならない。



「汚ね、レッサーパンダ汚ね!」

「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」



ふふん、アンディーヌめ!そんなこと言われてもおれは屁の河童!痛くも痒くもないぞ!あ、でもいま背中は痒いかな。



「ごめん、遅れたー」

「おうチョキオ。さて、みなさんお揃いだしはじめますか!レッサーパンダ君に尋問!」

「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」



じんもんだと?そんなことアンディーヌの野郎にやられる筋合いなどなにもないぞ。



「昨日、一緒にご飯食べてた女の子って誰?おまえのなに?」



ああ、あった。でもアンディーヌの野郎にとやかく言われる筋合いなどなーい!(やっぱりなかった!)



「彼女は苗字名前さん。おれの財布ちゃんを探すのを手伝ってくれたのだよ。そのお礼にご飯を食べたんだ。それはそれは可憐なお嬢さんだぞ!」



いいだろ、と腕をくんであめ玉を口に放りこむ。今おれはとても勝ち誇った顔をしているのだろう。アンディーヌが苦虫を噛んだような顔をしている。



「レッサー。今なんて?」



苗字さんと出会って以降、ハテナッチがはじめて「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」以外の言葉をもらした。普段あまり開かれない眼をまんまるにして。



「可憐なお嬢さんだぞ」

「違うくて、名前だよ名前」

「苗字名前さん」

「あ、やっぱり…」



ハテナッチは携帯をぽちぽちしたあと小さく呟く。
様子がおかしいハテナッチに、おれたち3人の頭の上には疑問符が浮かぶ。

そんなおれたちに、ハテナッチは携帯の画面をずいっとおれに見せてきた。



「彼女、苗字財閥の娘さんだぜ」



思考が止まったせいであめ玉を飲み込んでしまった。苗字財閥といえば今をときめく(ときめいてるのかは知らないが)誰もが知ってる有名な金持ち。

ハテナッチが見せてきた画面はとあるニュース記事で、そこに苗字さんの写真があった。いつもの清楚で可愛らしい姿とは違い、ドレス姿は煌びやかでとても綺麗だった。そう、とても煌びやかで。彼女との高い壁を感じられずにはいられない。



「まじでお嬢さんだったな、レッサーパンダ」

「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」



さすがハテナッチ、こんな時でも指摘を忘れないとは。(これは突込みじゃなくて指摘なんだ!)
おれはその日、なかなか眠れなかった。

あーあ。
あめ玉丸ごと飲んだから喉がゴロゴロする。

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