なぜかつき添いでアンディーヌの野郎とハテナッチとチョキオがついてきたが、おれはいま苗字財閥の会社前にいる。
「苗字財閥…うわお…」
天にも届きそうで首が痛くなるほど見上げるビルすべてが苗字財閥の会社である。アンディーヌの野郎もハテナッチもチョキオも予想より凄くて口をあんぐり。もちろんおれもあんぐり。
「ちょ、あれってレッサーパンダが言ってたお嬢さんじゃね?」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「苗字さん…」
「とりあえず隠れる?」
チョキオの提案により、そこら辺に立ってる木に沿って隠れる。裏から見ればかなりの不審者だろうが、苗字さんから隠れられればなんでもよかった。
「名前!」
「あら、どうしたの?」
苗字さんを呼び捨てで呼ぶ男に彼女も親しげに呼び捨てで呼ぶ。それだけでもうなんとも腹立たしいのに、あろうことか男は苗字さんの肩を抱いて会社の中に入って行った。(羨ましい!)
腹立たしいが、その男はいわゆるイケメンで、美男美女同士、その光景は絵になっていた。
「レッサーパンダ…」
「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」
「いいんだ、ハテナッチ」
「レッサー、追わなくていいの?」
ああハテナッチ、やっぱりおまえ「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」以外の言葉を言うの、前回だけだったのな。
「もう、いいんだ!」
チョキオの言葉に投げ捨てるように言い放ち、おれは走りだした。
後ろから「レッサーパンダ!」というアンディーヌの野郎と、「だからレッサーのことレッサーパンダって呼ぶな」というハテナッチと、「今はそんな場合じゃない!」というチョキオの言葉を受けながら。 (つかハテナッチとチョキオはおれに対しての言葉じゃなくね?)
最悪だ。偵察したってさらに壁を感じることなんてわかっていた。挙句、イケメンの彼氏を目撃して自爆。完敗すぎて笑っちまうよ。
あーあ、雨まで降ってきたのかな。おれの顔が水浸しだ。なんて最悪な金曜日。快晴の空が憎い。
すべて忘れてしまいたかった。
さよならマイフォーリンラバー。
君のことなんて、さ。