遠ざかる距離
寮生活になってからというものの、瑠璃は天喰を寮に呼ぶのは日常茶飯事だったが、そこから部屋に行くのではなく天喰の3年A組の寮に行くことの方が多かった。
それは天喰が他所のクラス、それも違う学年の寮の中に入るのに耐えられなかったり、男女で分けられている生活スペースに足を踏み入れる度胸がなかったからである。
引っ越しの日は瑠璃一人では大変だろうという気持ちから何とかなったが、引っ越しが終わった今、緊急事態でもない限りはそちらに近寄れもしなかった。まず玄関の時点で瑠璃以外が対応しようものなら固まってしまう始末であった。こんな感じでも天喰は立派なビッグ3の一人である。心操は若干この人大丈夫かと心配した目を向けていたが、瑠璃の調子を見る限り瑠璃と比較的長く付き合える時点で只者ではないと思い直すのだった。
そんなこんなで、今日も今日とて天喰を寮に迎えに寄こし、そのまま3年A組の寮で瑠璃はまったり過ごそうとしていた。
「あ! 揚羽さんいらっしゃーい! ねぇねぇ、クッキー焼いたんだけど食べる? 食べるよね?」
「……波動先輩。おかまいなく」
思っていたのだが、玄関に着くなり波動に掴まってしまった。瑠璃は今まで同性と仲良くなった試しがなかった。異性関係を鑑みれば当然である。クラスでだって仲良くしている女生徒はいなかった。けれど天喰の寮に来るようになってから、天喰の彼女だと知った波動があれこれ話しかけてくるようになったのだった。
ぐいぐい話しかけてくるフレンドリーな女の先輩に瑠璃は辟易としていた。最初こそ愛想よく接していたのだが「ねぇねぇ、なんで揚羽さんの髪はキラキラしてるの? 鱗粉?」「蝶々を操るって個性なのに揚羽さんも蝶々っぽいのは何で? 不思議!」「羽は出せる? 出せない? ねぇねぇ、やっぱり花の蜜が好きなの?」「何の花が好き? 今度採ってこようか? ねぇ、聞いてる?」この質問攻めの前に愛想など剥がれ落ちてしまった。答える前に次々と質問をされたのが更に苛立ちをよんだ。
なぁにこの先輩、幼稚園児かしら。静かに青筋を立てる瑠璃に顔を青くした天喰が半ば無理やり話を切り上げさせ、部屋に連れて行った。普段の天喰なら自ら部屋に招くだなんて真似はできなかっただろう。賢明な判断だった。
その後機嫌の悪い瑠璃の機嫌をひたすら取り、何とか夕方には瑠璃の機嫌を取り戻して寮に送ることに成功した。根本的におそらく波動と瑠璃は相性が悪いのだ。
「えー! でも上手く焼けたんだよ? 揚羽さん来るかなって思ってこれも――」
「お・か・ま・い・な・く!」
「むぅ……残念」
瑠璃の強めの主張に頬をむぅっと膨らませ、残念そうにする波動にあざとい人だと思った。
波動は天然でそういうことをやってのける。色香を武器にする瑠璃はいつだって確信犯だが、波動のような天然ちゃんは瑠璃にとって厄介な相手でもあるのだった。主に男性人気的な点で。
そしてこの手のタイプは庇護欲を大変そそるタイプだ。その証拠に甲矢が何か言いたげな顔で瑠璃を見ている。敵意こそ感じないが、ちょっとは波動と仲良くしてやってほしいという思いが透けて見えた。瑠璃は全力で拒否するけれど。
正直波動とはあまり関わりたくない。傍から見て自分の方が悪く映るだろうという自覚があった。浮いた話ばかりの自分と、純粋無垢な波動。波動にそんな意志がなくたって人々が味方をしたいと思うのは波動の方だろうから。瑠璃はそれが嫌だった。男の人は自分の味方でいてほしいという思いがある。そう思った時点で、波動に驚異的な何かを感じ取っている自分に瑠璃は気づいていたのだった。
「環くん、行きましょ」
「あ、うん……ごめん波動さん、また今度」
「はぁーい」
申し訳なさそうに波動に断りを入れる天喰に瑠璃はむっとする。
天喰の性格と、女子の居住スペースに頻繁に他所の男子を連れ込むのもクラスの女子には良くないだろうと考えて瑠璃が天喰の部屋の方に来ているけれど、ほぼ毎回これだ。
嫌われるよりいいかもしれないけれど、波動はその可憐な見た目にそぐわずビッグ3の一人に名を連ねる実力者でもあった。1年からずっと一緒のクラスであるのもあってか、天喰と波動は何だか……仲がよさそうに見えた。
(……面白くないわ)
ツンと機嫌を損ねている瑠璃の様子に天喰が困った顔をした。
今回はどうやって機嫌を取ろうと頭の中であれこれ考える。寮生活になって結果的に一緒にいる時間は増えたけれど、瑠璃が不機嫌になることも多かった。その理由が理由なだけに、天喰は若干胃が痛くなる思いだった。
部屋に瑠璃を入れる時は未だに緊張する天喰とは対照的に、瑠璃は我が物顔で寛いでいた。今日は特に機嫌が悪いようでベッドで横になってそっぽを向いている。
天喰はよりのよってそこですかと頭を抱えた。だがこの状態の瑠璃に意見などできようはずもなかった。こんな時は黙って慰めるものだから。
「瑠璃ちゃん……」
どうしたのを飲み込んで恐る恐るその頭を撫でた。特に跳ねのけられなかったので今回もこれが正解だったらしいことにほっと胸を撫で降ろす。
しばらくそうやって撫でていると、瑠璃が天喰の方に顔を向けてくれた。
「あの人……」
「ん?」
「……仲、いいの」
急に聞かれたことに天喰は一瞬きょとんとした。あの人というのは波動さんだろうか。多分波動さんなんだろうと天喰は思った。
瑠璃が何だかいつもと様子が違った。いつもは波動に対してあの人いや、としか言わないのに。天喰がそんな風に思っていたからか、返答が遅れて瑠璃の顔がむくれる。それにはっとして慌てて返事をした。
「仲……は、いい、というか……話すことはあるよ。1年から持ち上がりのクラスだし、波動さんはあの通りクラスの中心にいる人だから……」
「いいのね……」
「いや、えっとそう、なのかな……?」
「そうなのね」
「そ……う、かも……?」
天喰は若干混乱していた。仲が良いとはどの程度を言うのだろう。確かに悪くはないしよく話す方ではあるけれど、それは波動の性格が大きい。入学したての時は波動の雰囲気も今とは違っていて、心配でミリオが自分にしてくれたように波動を気に掛けたことはあった。そこから今に至るけれど、波動は誰にだってあんな感じであるから天喰は「俺は波動さんと仲が良いよ!」とは言えなかった。
けれど瑠璃の目にはそう見えたらしい。瑠璃が言うのならそうかもしれない、と曖昧な返事をしたのがよくなかった。
瑠璃が嫌そうな顔をしている。まずいと思って慌てて何か弁解しようとしたのだけれど、それより早く瑠璃が天喰の唇に噛みついた。口付けるのは初めてではなかったけれど、今回のそれは深くてまるで全てを吸い尽くそうとするかのような口付けだった。天喰の見開いた瞳に瑠璃の怒りを宿した瞳が映る。天喰はふと蝶々って捕食者だっただろうかと思った。現実逃避だ。
「……はぁ」
「っ……瑠璃、ちゃ……」
瑠璃が怒っている。それだけは確かに伝わった。瑠璃の望む返答をできなかった。天喰は今度こそ弁解するために口を開く。
「あの……波動さんのことなら――」
「切って」
「え……?」
天喰が弁解しようとしても瑠璃はもう聞く耳を持っていなかった。一瞬何を言われたのかわからなかった。切って、ってどういうことだろうと瞳を瞬いていた。
瑠璃は冷たい目で一瞥すると、今度は興味なさそうに指先に舞う蝶を見ながら、何でもないことのように言った。
「あの人と縁切って。出来るでしょ? 私のお願いだもの」
「え……ちょ、ちょっと待って、波動さんと縁切るってそんな……」
「名前出さないで!」
「ごっごめんっ、でもさすがにそれは……!」
瑠璃は渋る天喰に冷たい目を向けた。瑠璃のことが好きだというのに天喰は瑠璃のお願いを叶えてくれないらしい。あの人はいやだって何度も瑠璃は言ってるのに、天喰が波動に瑠璃と関わるのをやめるように言うこともなかった。瑠璃は本当に自分を愛しているというのなら、それくらいできたはずだと密かに怒っていた。
「もういい。もうおしまい」
「おしまいって……」
「わかんない? 環くんと別れるって言ってるの」
「え……」
さっと天喰の顔から血の気が引いた。それに瑠璃は当たり前のことだと呆れた。瑠璃のいやを聞いてくれない、助けてくれない彼氏なんて瑠璃はいらないのだ。
「いやならあの人と縁切って。私を選ぶのか、あの人を選ぶのか……はっきりすることね」
「瑠璃ちゃっ、待っ――」
引き留める天喰を無視して瑠璃は部屋を出た。選ぶまで連絡なんて取ってあげないし、もし向こうを選ぶのであれば自分も好きなだけ遊ぼうと思った。今まで我慢してた分、遊ぶのだと。
寮に戻るために一階の共有スペースを通ると波動が「あっ! 揚羽さんもう帰るの? 天喰くんは? 喧嘩したの?」と無邪気に声をかけてきたのでいらっとした。誰のせいだと、と言おうとしてきゅっと唇を引き結んだ。何だか負け犬みたいなんだもの。
こんな屈辱も早々ない。せめて追いかけてくるくらいしなさいよとまた一つ天喰に失望するのだった。
それは天喰が他所のクラス、それも違う学年の寮の中に入るのに耐えられなかったり、男女で分けられている生活スペースに足を踏み入れる度胸がなかったからである。
引っ越しの日は瑠璃一人では大変だろうという気持ちから何とかなったが、引っ越しが終わった今、緊急事態でもない限りはそちらに近寄れもしなかった。まず玄関の時点で瑠璃以外が対応しようものなら固まってしまう始末であった。こんな感じでも天喰は立派なビッグ3の一人である。心操は若干この人大丈夫かと心配した目を向けていたが、瑠璃の調子を見る限り瑠璃と比較的長く付き合える時点で只者ではないと思い直すのだった。
そんなこんなで、今日も今日とて天喰を寮に迎えに寄こし、そのまま3年A組の寮で瑠璃はまったり過ごそうとしていた。
「あ! 揚羽さんいらっしゃーい! ねぇねぇ、クッキー焼いたんだけど食べる? 食べるよね?」
「……波動先輩。おかまいなく」
思っていたのだが、玄関に着くなり波動に掴まってしまった。瑠璃は今まで同性と仲良くなった試しがなかった。異性関係を鑑みれば当然である。クラスでだって仲良くしている女生徒はいなかった。けれど天喰の寮に来るようになってから、天喰の彼女だと知った波動があれこれ話しかけてくるようになったのだった。
ぐいぐい話しかけてくるフレンドリーな女の先輩に瑠璃は辟易としていた。最初こそ愛想よく接していたのだが「ねぇねぇ、なんで揚羽さんの髪はキラキラしてるの? 鱗粉?」「蝶々を操るって個性なのに揚羽さんも蝶々っぽいのは何で? 不思議!」「羽は出せる? 出せない? ねぇねぇ、やっぱり花の蜜が好きなの?」「何の花が好き? 今度採ってこようか? ねぇ、聞いてる?」この質問攻めの前に愛想など剥がれ落ちてしまった。答える前に次々と質問をされたのが更に苛立ちをよんだ。
なぁにこの先輩、幼稚園児かしら。静かに青筋を立てる瑠璃に顔を青くした天喰が半ば無理やり話を切り上げさせ、部屋に連れて行った。普段の天喰なら自ら部屋に招くだなんて真似はできなかっただろう。賢明な判断だった。
その後機嫌の悪い瑠璃の機嫌をひたすら取り、何とか夕方には瑠璃の機嫌を取り戻して寮に送ることに成功した。根本的におそらく波動と瑠璃は相性が悪いのだ。
「えー! でも上手く焼けたんだよ? 揚羽さん来るかなって思ってこれも――」
「お・か・ま・い・な・く!」
「むぅ……残念」
瑠璃の強めの主張に頬をむぅっと膨らませ、残念そうにする波動にあざとい人だと思った。
波動は天然でそういうことをやってのける。色香を武器にする瑠璃はいつだって確信犯だが、波動のような天然ちゃんは瑠璃にとって厄介な相手でもあるのだった。主に男性人気的な点で。
そしてこの手のタイプは庇護欲を大変そそるタイプだ。その証拠に甲矢が何か言いたげな顔で瑠璃を見ている。敵意こそ感じないが、ちょっとは波動と仲良くしてやってほしいという思いが透けて見えた。瑠璃は全力で拒否するけれど。
正直波動とはあまり関わりたくない。傍から見て自分の方が悪く映るだろうという自覚があった。浮いた話ばかりの自分と、純粋無垢な波動。波動にそんな意志がなくたって人々が味方をしたいと思うのは波動の方だろうから。瑠璃はそれが嫌だった。男の人は自分の味方でいてほしいという思いがある。そう思った時点で、波動に驚異的な何かを感じ取っている自分に瑠璃は気づいていたのだった。
「環くん、行きましょ」
「あ、うん……ごめん波動さん、また今度」
「はぁーい」
申し訳なさそうに波動に断りを入れる天喰に瑠璃はむっとする。
天喰の性格と、女子の居住スペースに頻繁に他所の男子を連れ込むのもクラスの女子には良くないだろうと考えて瑠璃が天喰の部屋の方に来ているけれど、ほぼ毎回これだ。
嫌われるよりいいかもしれないけれど、波動はその可憐な見た目にそぐわずビッグ3の一人に名を連ねる実力者でもあった。1年からずっと一緒のクラスであるのもあってか、天喰と波動は何だか……仲がよさそうに見えた。
(……面白くないわ)
ツンと機嫌を損ねている瑠璃の様子に天喰が困った顔をした。
今回はどうやって機嫌を取ろうと頭の中であれこれ考える。寮生活になって結果的に一緒にいる時間は増えたけれど、瑠璃が不機嫌になることも多かった。その理由が理由なだけに、天喰は若干胃が痛くなる思いだった。
部屋に瑠璃を入れる時は未だに緊張する天喰とは対照的に、瑠璃は我が物顔で寛いでいた。今日は特に機嫌が悪いようでベッドで横になってそっぽを向いている。
天喰はよりのよってそこですかと頭を抱えた。だがこの状態の瑠璃に意見などできようはずもなかった。こんな時は黙って慰めるものだから。
「瑠璃ちゃん……」
どうしたのを飲み込んで恐る恐るその頭を撫でた。特に跳ねのけられなかったので今回もこれが正解だったらしいことにほっと胸を撫で降ろす。
しばらくそうやって撫でていると、瑠璃が天喰の方に顔を向けてくれた。
「あの人……」
「ん?」
「……仲、いいの」
急に聞かれたことに天喰は一瞬きょとんとした。あの人というのは波動さんだろうか。多分波動さんなんだろうと天喰は思った。
瑠璃が何だかいつもと様子が違った。いつもは波動に対してあの人いや、としか言わないのに。天喰がそんな風に思っていたからか、返答が遅れて瑠璃の顔がむくれる。それにはっとして慌てて返事をした。
「仲……は、いい、というか……話すことはあるよ。1年から持ち上がりのクラスだし、波動さんはあの通りクラスの中心にいる人だから……」
「いいのね……」
「いや、えっとそう、なのかな……?」
「そうなのね」
「そ……う、かも……?」
天喰は若干混乱していた。仲が良いとはどの程度を言うのだろう。確かに悪くはないしよく話す方ではあるけれど、それは波動の性格が大きい。入学したての時は波動の雰囲気も今とは違っていて、心配でミリオが自分にしてくれたように波動を気に掛けたことはあった。そこから今に至るけれど、波動は誰にだってあんな感じであるから天喰は「俺は波動さんと仲が良いよ!」とは言えなかった。
けれど瑠璃の目にはそう見えたらしい。瑠璃が言うのならそうかもしれない、と曖昧な返事をしたのがよくなかった。
瑠璃が嫌そうな顔をしている。まずいと思って慌てて何か弁解しようとしたのだけれど、それより早く瑠璃が天喰の唇に噛みついた。口付けるのは初めてではなかったけれど、今回のそれは深くてまるで全てを吸い尽くそうとするかのような口付けだった。天喰の見開いた瞳に瑠璃の怒りを宿した瞳が映る。天喰はふと蝶々って捕食者だっただろうかと思った。現実逃避だ。
「……はぁ」
「っ……瑠璃、ちゃ……」
瑠璃が怒っている。それだけは確かに伝わった。瑠璃の望む返答をできなかった。天喰は今度こそ弁解するために口を開く。
「あの……波動さんのことなら――」
「切って」
「え……?」
天喰が弁解しようとしても瑠璃はもう聞く耳を持っていなかった。一瞬何を言われたのかわからなかった。切って、ってどういうことだろうと瞳を瞬いていた。
瑠璃は冷たい目で一瞥すると、今度は興味なさそうに指先に舞う蝶を見ながら、何でもないことのように言った。
「あの人と縁切って。出来るでしょ? 私のお願いだもの」
「え……ちょ、ちょっと待って、波動さんと縁切るってそんな……」
「名前出さないで!」
「ごっごめんっ、でもさすがにそれは……!」
瑠璃は渋る天喰に冷たい目を向けた。瑠璃のことが好きだというのに天喰は瑠璃のお願いを叶えてくれないらしい。あの人はいやだって何度も瑠璃は言ってるのに、天喰が波動に瑠璃と関わるのをやめるように言うこともなかった。瑠璃は本当に自分を愛しているというのなら、それくらいできたはずだと密かに怒っていた。
「もういい。もうおしまい」
「おしまいって……」
「わかんない? 環くんと別れるって言ってるの」
「え……」
さっと天喰の顔から血の気が引いた。それに瑠璃は当たり前のことだと呆れた。瑠璃のいやを聞いてくれない、助けてくれない彼氏なんて瑠璃はいらないのだ。
「いやならあの人と縁切って。私を選ぶのか、あの人を選ぶのか……はっきりすることね」
「瑠璃ちゃっ、待っ――」
引き留める天喰を無視して瑠璃は部屋を出た。選ぶまで連絡なんて取ってあげないし、もし向こうを選ぶのであれば自分も好きなだけ遊ぼうと思った。今まで我慢してた分、遊ぶのだと。
寮に戻るために一階の共有スペースを通ると波動が「あっ! 揚羽さんもう帰るの? 天喰くんは? 喧嘩したの?」と無邪気に声をかけてきたのでいらっとした。誰のせいだと、と言おうとしてきゅっと唇を引き結んだ。何だか負け犬みたいなんだもの。
こんな屈辱も早々ない。せめて追いかけてくるくらいしなさいよとまた一つ天喰に失望するのだった。
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