先延ばし
「でね、ねじれ先輩ったら本当に喜んでたのよ。私にかかればざっとこんなものよね!」
「すぐ調子に乗る……」
「行く前の瑠璃どこ行ったんだよ」
帰ってからと言うものの、話を聞くと言った友だち一号はともかく、心操も当然のように掴まった。
そうして長々とお茶会のことをご機嫌で話す瑠璃に、適当に相槌を打つのだった。
「だからまた一緒にクッキー焼いてね。一人じゃ作れないわ」
「いや、もう作れるでしょ。一回作ったんだから」
「一回じゃまだまだよ! 忘れちゃうわ!」
「おまえ無駄に記憶力よかったじゃん。いけんじゃないの?」
「いけないったらいけないわ!」
ツーンと拗ねる瑠璃にこれは甘えたスイッチだなと心操と友だち一号は顔を見合わせた。
作れるけど、一緒にやってほしいというあれだ。そしてこうして言い出したら聞かないのも心操たちはよく理解していた。
心操と友だち一号はやれやれという顔をすると、しょうがないなとばかりに頷いた。
「同じのでいいの?」
「ええ! でももっと可愛くてもいいわ!」
「もっと可愛いってどんなの……」
「ケーキっぽくしてみようかと思ってるの。こんな風に……」
スマホを操作して見せてきた画面には、一見ケーキにしか見えないクッキーが映っていた。
それに友だち一号は思わずツッコむ。
「いやもうそれはケーキ作れよ」
「ケーキは難しいわ」
「ホールケーキ想像したでしょ。そうじゃなくて、カップケーキとかなら作れんじゃないの?」
「カップケーキ……可愛いかしら?」
「それこそ、あんたの腕の見せ所でしょ」
何か言いたげに口をもごつかせる瑠璃に、友だち一号がスマホを操作して可愛いカップケーキを見せてくれた。
色付きホイップとカラフルチョコで飾られたそれに瑠璃も意外そうな顔をした。
「意外と……可愛いわね」
「でしょ?」
「……薔薇とかできるかしら? クリームで絞ってたの……」
「え? ちょっと待って、調べる」
友だち一号は生クリームで薔薇というのに首を傾げたが、検索するとすぐにヒットした。
そこで作り方を見てみると、出来ないことはないかもなと結論付ける。想像よりは難しくなかった。それでも難しそうだけれど。
「練習、結構した方がいいかもよ」
「練習するわ」
「……だって心操! しばらく甘いもの地獄だけど我慢しな〜!」
「やっぱ俺も手伝うのか……」
「なに当たり前のこと言ってんの」
女王様がやると決めたなら、相談役と友だち一号はそれに付き合う運命なのだ。
友だち一号が「私らミラクル運命共同体ってやつっしょ?」と笑うので、心操は「どちらかというと死なば諸共でしょ……」と反論したが、本気で嫌がったりはしなかった。そういうものだと心操も分かっていたから。
「そうと決まればさっそく練習しよ! 当日になってバタバタしたくないし!」
「わかったわ。出来るまで一緒にやってね。絶対よ」
「わかってるって!」
「なるべく早く上達してくれ……甘いものばっかりは食べれないから……」
「努力はするわ!」
急いで材料を取り出す瑠璃と友だち一号に、心操はため息を一つ吐いた。
(なんか、言い出せる雰囲気じゃなくなったな……)
このカップケーキが完成したら言おうと心操は思い直したのだが、いざ薔薇を造形する工程で瑠璃が絞りの重さに耐え切れず、泣き言を零しながらの作成になったため、それどころではなくなった。
結局その日は言い出せず、それは連日そのカップケーキを食すはめになっても、タイミングは掴めないままだった。
心操も……難しいと泣きながら頑張っている瑠璃に、とどめをさすような真似ができなかったのだ。
「へぇ、瑠璃ちゃんのところはお化け屋敷なんだ? 結構本格的なの?」
「ええ。私ね、言ったのよ。あんまり怖いのは良くないと思うわって! でも友だち一号ったらちっとも聞いてくれなかったの!」
「瑠璃ちゃんは何やりたかったの?」
「ネイル屋さん。ママが前してくれたの思い出して、やってみたかったんだけど……出来る人あんまりいないし、女性客に偏るし、回転率も悪いとかなんとかで……却下されちゃったわ」
「ああ……うん、そう、だろうね……」
拗ねる瑠璃に天喰は何とも言えない顔をした。それは確かに却下されるだろうねと友だち一号を頭に思い浮かべて、よく一刀両断したなと思うくらいだった。
友だち一号と関わりだしてから、瑠璃は何だかんだクラスに馴染めているようだった。友だち一号自体がクラスの中心人物的存在だったのも大きいだろう。意外とそれなりに楽しそうに過ごせているようで天喰はほっとしていた。
「ねじれ先輩のミスコンの方はどんな感じ?」
「ついこの間宣伝写真撮り終わったところだよ。甲矢さんが衣装吟味してるとこ」
「ふーん。私、先輩に似合うのって水色のひらひらしたドレスだと思うわ。妖精さんみたいなの」
「そっか、伝えとくね」
「ええ」
不器用なアドバイスを素直に受け取った天喰に、瑠璃はにっこり笑った。
校舎のあちこちで文化祭に向けて忙しなく準備する生徒の姿が見られた。体育祭とはまた違い、準備から進めるのはまた違った楽しみがある。
瑠璃のクラスのお化け屋敷も瑠璃の特殊メイク技術がいかんなく発揮されていた。
「ふふっ、お化け屋敷きっと環くん泣いて驚くわよ」
「ええ……」
「絶対来てね。私、お化けになっても綺麗だから!」
「それはそうだろうね……」
瑠璃ちゃんはお化けになっても可愛いよと言う天喰に瑠璃は一つ頷いた。
文化祭当日が楽しみだった。波動のミスコンも、自分たちのお化け屋敷も。学生らしいこのイベントに期待に胸を膨らませているのは、何も瑠璃だけじゃなかった。
「すぐ調子に乗る……」
「行く前の瑠璃どこ行ったんだよ」
帰ってからと言うものの、話を聞くと言った友だち一号はともかく、心操も当然のように掴まった。
そうして長々とお茶会のことをご機嫌で話す瑠璃に、適当に相槌を打つのだった。
「だからまた一緒にクッキー焼いてね。一人じゃ作れないわ」
「いや、もう作れるでしょ。一回作ったんだから」
「一回じゃまだまだよ! 忘れちゃうわ!」
「おまえ無駄に記憶力よかったじゃん。いけんじゃないの?」
「いけないったらいけないわ!」
ツーンと拗ねる瑠璃にこれは甘えたスイッチだなと心操と友だち一号は顔を見合わせた。
作れるけど、一緒にやってほしいというあれだ。そしてこうして言い出したら聞かないのも心操たちはよく理解していた。
心操と友だち一号はやれやれという顔をすると、しょうがないなとばかりに頷いた。
「同じのでいいの?」
「ええ! でももっと可愛くてもいいわ!」
「もっと可愛いってどんなの……」
「ケーキっぽくしてみようかと思ってるの。こんな風に……」
スマホを操作して見せてきた画面には、一見ケーキにしか見えないクッキーが映っていた。
それに友だち一号は思わずツッコむ。
「いやもうそれはケーキ作れよ」
「ケーキは難しいわ」
「ホールケーキ想像したでしょ。そうじゃなくて、カップケーキとかなら作れんじゃないの?」
「カップケーキ……可愛いかしら?」
「それこそ、あんたの腕の見せ所でしょ」
何か言いたげに口をもごつかせる瑠璃に、友だち一号がスマホを操作して可愛いカップケーキを見せてくれた。
色付きホイップとカラフルチョコで飾られたそれに瑠璃も意外そうな顔をした。
「意外と……可愛いわね」
「でしょ?」
「……薔薇とかできるかしら? クリームで絞ってたの……」
「え? ちょっと待って、調べる」
友だち一号は生クリームで薔薇というのに首を傾げたが、検索するとすぐにヒットした。
そこで作り方を見てみると、出来ないことはないかもなと結論付ける。想像よりは難しくなかった。それでも難しそうだけれど。
「練習、結構した方がいいかもよ」
「練習するわ」
「……だって心操! しばらく甘いもの地獄だけど我慢しな〜!」
「やっぱ俺も手伝うのか……」
「なに当たり前のこと言ってんの」
女王様がやると決めたなら、相談役と友だち一号はそれに付き合う運命なのだ。
友だち一号が「私らミラクル運命共同体ってやつっしょ?」と笑うので、心操は「どちらかというと死なば諸共でしょ……」と反論したが、本気で嫌がったりはしなかった。そういうものだと心操も分かっていたから。
「そうと決まればさっそく練習しよ! 当日になってバタバタしたくないし!」
「わかったわ。出来るまで一緒にやってね。絶対よ」
「わかってるって!」
「なるべく早く上達してくれ……甘いものばっかりは食べれないから……」
「努力はするわ!」
急いで材料を取り出す瑠璃と友だち一号に、心操はため息を一つ吐いた。
(なんか、言い出せる雰囲気じゃなくなったな……)
このカップケーキが完成したら言おうと心操は思い直したのだが、いざ薔薇を造形する工程で瑠璃が絞りの重さに耐え切れず、泣き言を零しながらの作成になったため、それどころではなくなった。
結局その日は言い出せず、それは連日そのカップケーキを食すはめになっても、タイミングは掴めないままだった。
心操も……難しいと泣きながら頑張っている瑠璃に、とどめをさすような真似ができなかったのだ。
「へぇ、瑠璃ちゃんのところはお化け屋敷なんだ? 結構本格的なの?」
「ええ。私ね、言ったのよ。あんまり怖いのは良くないと思うわって! でも友だち一号ったらちっとも聞いてくれなかったの!」
「瑠璃ちゃんは何やりたかったの?」
「ネイル屋さん。ママが前してくれたの思い出して、やってみたかったんだけど……出来る人あんまりいないし、女性客に偏るし、回転率も悪いとかなんとかで……却下されちゃったわ」
「ああ……うん、そう、だろうね……」
拗ねる瑠璃に天喰は何とも言えない顔をした。それは確かに却下されるだろうねと友だち一号を頭に思い浮かべて、よく一刀両断したなと思うくらいだった。
友だち一号と関わりだしてから、瑠璃は何だかんだクラスに馴染めているようだった。友だち一号自体がクラスの中心人物的存在だったのも大きいだろう。意外とそれなりに楽しそうに過ごせているようで天喰はほっとしていた。
「ねじれ先輩のミスコンの方はどんな感じ?」
「ついこの間宣伝写真撮り終わったところだよ。甲矢さんが衣装吟味してるとこ」
「ふーん。私、先輩に似合うのって水色のひらひらしたドレスだと思うわ。妖精さんみたいなの」
「そっか、伝えとくね」
「ええ」
不器用なアドバイスを素直に受け取った天喰に、瑠璃はにっこり笑った。
校舎のあちこちで文化祭に向けて忙しなく準備する生徒の姿が見られた。体育祭とはまた違い、準備から進めるのはまた違った楽しみがある。
瑠璃のクラスのお化け屋敷も瑠璃の特殊メイク技術がいかんなく発揮されていた。
「ふふっ、お化け屋敷きっと環くん泣いて驚くわよ」
「ええ……」
「絶対来てね。私、お化けになっても綺麗だから!」
「それはそうだろうね……」
瑠璃ちゃんはお化けになっても可愛いよと言う天喰に瑠璃は一つ頷いた。
文化祭当日が楽しみだった。波動のミスコンも、自分たちのお化け屋敷も。学生らしいこのイベントに期待に胸を膨らませているのは、何も瑠璃だけじゃなかった。
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