唯一無二の女王様
瑠璃は気になるといったものを少しずつ食べて、残りを予定通り天喰に食べてもらっていた。クレープの屋台でも気になったものが色々あったため、そこでも複数注文してとかなりの量であったが、天喰はそれら全てを平らげてみせた。
「ありがとう、環くん。美味しかったわ」
「俺も色々食べれてよかったよ。でも、そろそろ時間だし……会場に行こうか」
「ええ」
波動が出場するミスコンを見るため、いい席を取るためにも早めに瑠璃たちは移動することにした。
波動のドレスは以前瑠璃がアドバイスをした通り、水色の可愛いドレスになったらしい。瑠璃は可憐な波動によく似合っているだろうと実際に着ているところを見るのが楽しみだった。
そうして会場に着くと、ある程度の人がすでに集まっていた。
ミスコンというだけあって多くの注目を集めているらしい。幸い、前の方はまだ空いていたため、いい席をとることが出来たのだった。
「すごい活気ね。まだ時間前なのにこんなに人がいるわ」
「毎年ミスコンはこんな感じだよ。でも今回は特にすごいかな……1年生からも、すでに一定数のファンを獲得してる拳藤さんが出てるからかもしれない」
「拳藤?」
「ほら、ウワバミさんのヘアスプレーのCMに出てた、オレンジの髪の子だよ」
「ああ……あの人ね」
宣伝写真を見てはいたのだが、瑠璃は波動が一番綺麗だと結論付けるだけで、他出場者の名前やどんな人なのかをまったく記憶していなかった。瑠璃にとってそれは然程重要ではなかったのだ。
けれど、ウワバミのCMというので瑠璃も合点がいった。あのスプレーはよかったと瑠璃も記憶していたのだ。
シュシュッと一吹きで髪がうねるようにくるんと巻かれるヘアスプレー。まさかあのCMに出ていた人がうちのヒーロー科の一年だとは思わなかったと瑠璃は若干驚いていた。
「じゃあ、もう一人の方も出てたかしら?」
「八百万さんはエントリーしてないよ。クラスのバンドでキーボードやってた」
「へぇ、楽器も弾けるのね」
「彼女も出てたら、もっと混んでたかもね。箱推しみたいだから」
「箱推し」
「二人まとめて好きってことだよ」
箱推しと言う聞きなれない言葉に首を傾げると、天喰が説明してくれた。
二人まとめて好きと言うのに瑠璃は微妙な顔をする。
「私、箱推しより一推しがいいわ」
「一推し……えっと、自分だけ好きになってほしいってことであってる?」
「ええ」
「……それなら、俺はとっくにその……瑠璃ちゃんに一推し……デス」
「ふふっ、知ってるわ」
照れてしまった天喰の腕にこてんともたれかかる。天喰は心臓を跳ねさせて驚きながらもそれを受け入れていた。
しばらくそうしていると開催のアナウンスが鳴り響く。次々アピールしていく様子を眺めていると、先ほど話していた拳藤が登場した。
その瞬間、響き渡る拳藤コールに瑠璃は少々驚いていた。
「箱推しって……すごいのね」
「インパクトのあるCMだったしね。綺麗に撮れてたし、憧れる人が出るのもわかるかな」
「まぁ、そうねぇ」
瑠璃は拳藤の水色のドレスに目が釘付けになっていた。
波動と同じ色のドレスが彼女も似合っていた。けれど驚いたのはそこからだった。拳藤は自らドレスを裂いて演武を行った。強さと美しさの融合。それは瑠璃にとって新鮮だった。
「彼女、すごいわね……全然下品に見えなかったわ」
「パフォーマンスとして完成されてる。手強いライバルだ……次は……絢爛崎さん、か……」
「ミスコンの覇者?」
「そう……色々とすごい人だよ……」
そのすごいという意味が瑠璃はよくわからず、小首を傾げていたがそれはすぐに解明した。
ド派手な装甲車に乗って現れた絢爛崎に瑠璃は呆気にとられた。
「これ……ミスコン、なのよね……?」
「うん……」
「ミスコンって……すごいのね……」
「……うん」
天喰は頷くことしかできなかった。そして迫る波動の出番に天喰の方が緊張で胃が痛くなってきた。
顔が青い天喰を見て驚いた瑠璃は、気遣うように天喰の背を撫でた。
「大丈夫……?」
「う、うん……ごめん、波動さんの出番だと思うと、緊張しちゃって……」
「環くんもよく手伝ってたものね。大丈夫よ、宣伝写真を見たけど、ねじれ先輩が一番綺麗だったわ」
「瑠璃ちゃん……君がそう言うなら……そうなんだろうな」
「ええ。だから大丈夫よ。だってあの人、妖精みたいなんだもの」
何の心配もいらないと、波動が優勝することを疑うことなく笑う瑠璃に、天喰は瑠璃ちゃんはすごいなと思う。
あのお茶会からすっかり波動とも仲良しだ。波動に対してはまだ気恥ずかしさがあるのか、つっけんどんな言い方をするときもあるのだが、とうの波動は全く気にしていないし、むしろそんなところも可愛いと可愛がられているようだった。
天喰にとっては瑠璃も蝶々の妖精のようだったが、その瑠璃が妖精だと波動を称すのならば、やっぱりそう感じるのは間違いではないのだと思った。
そうして波動の出番が来て、波動は宙を舞った。幻想的なその舞は見る人の心を吸い寄せていた。
「綺麗……」
「うん。こうして見ると……本当に波動さん……純粋無垢な妖精のようだ」
「――ええ、本当に……綺麗だわ」
うっとりと波動を見つめる瑠璃の瞳はキラキラと輝いていた。
今年最後となった波動のミスコンは、波動の優勝で幕を閉じた。可憐な妖精のミス雄英の誕生に瑠璃と天喰は拍手を送るのだった。
「本当に心操ったらもったいないことしたわ。ねじれ先輩、すっごく綺麗だったんだから!」
「はいはい、さっきからもうそれ5回目。いい加減聞き飽きた」
「それくらいもったいないってことよ! 本当、心操ってこういうの興味ないわよね」
文化祭が終わってから寮に戻ると、瑠璃はミスコンを見ていなかったという心操に苦言を呈していた。
何だかんだ大人しく心操も隣で聞くものだから、友だち一号はなんだかなぁと思いつつ紅茶を飲んでいた。
「それより、おまえが出なかった方が驚きだったな。ちやほやされるの好きだろ」
「好きだけど……私、箱推しは嫌なの」
「箱推し?」
「私じゃなくてもいいのはいやだわ。一推しじゃないと意味ないの!」
「一推し……」
また変なことを覚えてきたなと心操と友だち一号は顔を見合わせた。けれど言わんとしていることがわかるのは経験則だろう。瑠璃とよく一緒にいるから、どういう意味なのか分かってしまった。
「一推しされてよかったね」
「……うん」
素直にこくりと頷く瑠璃に、心操は本当しおらしくなったなぁと成長を感じた。恋は人を狂わせるというけれど、それと同時に成長させるのは愛なのだろうかとらしくもなくそんなことを思った。
(……さて、俺も言わなきゃな……)
多分、おそらく、編入試験が近づいていると心操は思う。
ペルソナコードを渡されたのもそうだし、相澤による指導のおかげで捕縛布の使い方もだいぶ様になってきた。もう秋で、そろそろ冬が近づいている。だからこそ、今逃したら……事後報告になってしまうような気がして、心操は深呼吸を一つすると、意を決して口を開いた。
「あのさ、揚羽」
「なぁに?」
「俺……ヒーロー科に編入するよ」
「……?」
まっすぐ瑠璃の目を見て、真剣な顔で、声で、そう言った心操に瑠璃は頭がついてきていないようだった。
何を言われたんだろうと言わんばかりに驚いている。
「ヒーロー科に編入したら、今みたいには多分、絶対……相談には乗ってやれなくなるけど……おまえにはもう俺以外に頼れるやつがいるし、クラスにも馴染めてるだろ。だから……あんま気にするなっていうか、心配になることはないっていうか……とにかく、俺がいなくても、もうおまえは大丈夫だよ。それは、忘れないで」
心操にとってこれは激励のつもりだった。もう自分がいなくても瑠璃は大丈夫なのだと。成長できた、頑張れたよという瑠璃を認める発言のつもりだった。
けれど、とうの瑠璃はみるみるうちに瞳を潤ませて、立ち上がった。
「しっ、心操のばか〜〜っ!!!」
「ばっ!?」
「あっ、瑠璃! 待って!」
幼稚な悪口に心操は面食らうが、言い逃げのように瑠璃は自室の方に向かった。友だち一号が引き留めるも聞いていない。
微妙な空気の中、心操が「やっぱこうなるか……」と項垂れるのを、友だち一号が呆れた顔で見ていた。
「いや、今のは心操が悪いね」
「またおまえは揚羽の肩持つのかよ……」
「そうじゃなくて、あれじゃ瑠璃泣くでしょ。「俺は相談役降りるけど、俺の代わりかいるからそれでいいだろ」って、あの子なら受け取るよ」
それを聞いて心操はそんな馬鹿なと思ったが、瑠璃ならそう取りそうだとも思った。
それに実際、自分の代わりはいると心操自身確かにそう思っていた。
「いや、別に完全に降りるわけじゃ……」
「それ、今の聞いてあの子が冷静に考えられると思う?」
「……無理、だな」
「でしょ〜? ま、とにかく後で誤解は解きな。科が変わっても、引き続き相談役は続けさせてくださいって頭下げればあの子もご機嫌よ」
「頭下げるのは俺なのか……」
「そりゃそうでしょ。だって女王様なんだから」
友だち一号が当たり前のように口にするそれに心操も妙に納得してしまった。
そりゃそうだ。瑠璃はずっと女王様なのだ。そしてその女王様の隣の席になったのが運の尽き。相談役なんて任命されて、心操はそれはもう世話を焼く日々だった。
そしてそれが、意外と悪くないと思っていたのも……事実だった。
「まったくしょうがないな……女王様のご機嫌を取るのも、俺らの仕事の内ってことで」
「そーいうこと」
にやりと笑った友だち一号に心操もため息にも似た笑みをこぼすのだった。
「ありがとう、環くん。美味しかったわ」
「俺も色々食べれてよかったよ。でも、そろそろ時間だし……会場に行こうか」
「ええ」
波動が出場するミスコンを見るため、いい席を取るためにも早めに瑠璃たちは移動することにした。
波動のドレスは以前瑠璃がアドバイスをした通り、水色の可愛いドレスになったらしい。瑠璃は可憐な波動によく似合っているだろうと実際に着ているところを見るのが楽しみだった。
そうして会場に着くと、ある程度の人がすでに集まっていた。
ミスコンというだけあって多くの注目を集めているらしい。幸い、前の方はまだ空いていたため、いい席をとることが出来たのだった。
「すごい活気ね。まだ時間前なのにこんなに人がいるわ」
「毎年ミスコンはこんな感じだよ。でも今回は特にすごいかな……1年生からも、すでに一定数のファンを獲得してる拳藤さんが出てるからかもしれない」
「拳藤?」
「ほら、ウワバミさんのヘアスプレーのCMに出てた、オレンジの髪の子だよ」
「ああ……あの人ね」
宣伝写真を見てはいたのだが、瑠璃は波動が一番綺麗だと結論付けるだけで、他出場者の名前やどんな人なのかをまったく記憶していなかった。瑠璃にとってそれは然程重要ではなかったのだ。
けれど、ウワバミのCMというので瑠璃も合点がいった。あのスプレーはよかったと瑠璃も記憶していたのだ。
シュシュッと一吹きで髪がうねるようにくるんと巻かれるヘアスプレー。まさかあのCMに出ていた人がうちのヒーロー科の一年だとは思わなかったと瑠璃は若干驚いていた。
「じゃあ、もう一人の方も出てたかしら?」
「八百万さんはエントリーしてないよ。クラスのバンドでキーボードやってた」
「へぇ、楽器も弾けるのね」
「彼女も出てたら、もっと混んでたかもね。箱推しみたいだから」
「箱推し」
「二人まとめて好きってことだよ」
箱推しと言う聞きなれない言葉に首を傾げると、天喰が説明してくれた。
二人まとめて好きと言うのに瑠璃は微妙な顔をする。
「私、箱推しより一推しがいいわ」
「一推し……えっと、自分だけ好きになってほしいってことであってる?」
「ええ」
「……それなら、俺はとっくにその……瑠璃ちゃんに一推し……デス」
「ふふっ、知ってるわ」
照れてしまった天喰の腕にこてんともたれかかる。天喰は心臓を跳ねさせて驚きながらもそれを受け入れていた。
しばらくそうしていると開催のアナウンスが鳴り響く。次々アピールしていく様子を眺めていると、先ほど話していた拳藤が登場した。
その瞬間、響き渡る拳藤コールに瑠璃は少々驚いていた。
「箱推しって……すごいのね」
「インパクトのあるCMだったしね。綺麗に撮れてたし、憧れる人が出るのもわかるかな」
「まぁ、そうねぇ」
瑠璃は拳藤の水色のドレスに目が釘付けになっていた。
波動と同じ色のドレスが彼女も似合っていた。けれど驚いたのはそこからだった。拳藤は自らドレスを裂いて演武を行った。強さと美しさの融合。それは瑠璃にとって新鮮だった。
「彼女、すごいわね……全然下品に見えなかったわ」
「パフォーマンスとして完成されてる。手強いライバルだ……次は……絢爛崎さん、か……」
「ミスコンの覇者?」
「そう……色々とすごい人だよ……」
そのすごいという意味が瑠璃はよくわからず、小首を傾げていたがそれはすぐに解明した。
ド派手な装甲車に乗って現れた絢爛崎に瑠璃は呆気にとられた。
「これ……ミスコン、なのよね……?」
「うん……」
「ミスコンって……すごいのね……」
「……うん」
天喰は頷くことしかできなかった。そして迫る波動の出番に天喰の方が緊張で胃が痛くなってきた。
顔が青い天喰を見て驚いた瑠璃は、気遣うように天喰の背を撫でた。
「大丈夫……?」
「う、うん……ごめん、波動さんの出番だと思うと、緊張しちゃって……」
「環くんもよく手伝ってたものね。大丈夫よ、宣伝写真を見たけど、ねじれ先輩が一番綺麗だったわ」
「瑠璃ちゃん……君がそう言うなら……そうなんだろうな」
「ええ。だから大丈夫よ。だってあの人、妖精みたいなんだもの」
何の心配もいらないと、波動が優勝することを疑うことなく笑う瑠璃に、天喰は瑠璃ちゃんはすごいなと思う。
あのお茶会からすっかり波動とも仲良しだ。波動に対してはまだ気恥ずかしさがあるのか、つっけんどんな言い方をするときもあるのだが、とうの波動は全く気にしていないし、むしろそんなところも可愛いと可愛がられているようだった。
天喰にとっては瑠璃も蝶々の妖精のようだったが、その瑠璃が妖精だと波動を称すのならば、やっぱりそう感じるのは間違いではないのだと思った。
そうして波動の出番が来て、波動は宙を舞った。幻想的なその舞は見る人の心を吸い寄せていた。
「綺麗……」
「うん。こうして見ると……本当に波動さん……純粋無垢な妖精のようだ」
「――ええ、本当に……綺麗だわ」
うっとりと波動を見つめる瑠璃の瞳はキラキラと輝いていた。
今年最後となった波動のミスコンは、波動の優勝で幕を閉じた。可憐な妖精のミス雄英の誕生に瑠璃と天喰は拍手を送るのだった。
「本当に心操ったらもったいないことしたわ。ねじれ先輩、すっごく綺麗だったんだから!」
「はいはい、さっきからもうそれ5回目。いい加減聞き飽きた」
「それくらいもったいないってことよ! 本当、心操ってこういうの興味ないわよね」
文化祭が終わってから寮に戻ると、瑠璃はミスコンを見ていなかったという心操に苦言を呈していた。
何だかんだ大人しく心操も隣で聞くものだから、友だち一号はなんだかなぁと思いつつ紅茶を飲んでいた。
「それより、おまえが出なかった方が驚きだったな。ちやほやされるの好きだろ」
「好きだけど……私、箱推しは嫌なの」
「箱推し?」
「私じゃなくてもいいのはいやだわ。一推しじゃないと意味ないの!」
「一推し……」
また変なことを覚えてきたなと心操と友だち一号は顔を見合わせた。けれど言わんとしていることがわかるのは経験則だろう。瑠璃とよく一緒にいるから、どういう意味なのか分かってしまった。
「一推しされてよかったね」
「……うん」
素直にこくりと頷く瑠璃に、心操は本当しおらしくなったなぁと成長を感じた。恋は人を狂わせるというけれど、それと同時に成長させるのは愛なのだろうかとらしくもなくそんなことを思った。
(……さて、俺も言わなきゃな……)
多分、おそらく、編入試験が近づいていると心操は思う。
ペルソナコードを渡されたのもそうだし、相澤による指導のおかげで捕縛布の使い方もだいぶ様になってきた。もう秋で、そろそろ冬が近づいている。だからこそ、今逃したら……事後報告になってしまうような気がして、心操は深呼吸を一つすると、意を決して口を開いた。
「あのさ、揚羽」
「なぁに?」
「俺……ヒーロー科に編入するよ」
「……?」
まっすぐ瑠璃の目を見て、真剣な顔で、声で、そう言った心操に瑠璃は頭がついてきていないようだった。
何を言われたんだろうと言わんばかりに驚いている。
「ヒーロー科に編入したら、今みたいには多分、絶対……相談には乗ってやれなくなるけど……おまえにはもう俺以外に頼れるやつがいるし、クラスにも馴染めてるだろ。だから……あんま気にするなっていうか、心配になることはないっていうか……とにかく、俺がいなくても、もうおまえは大丈夫だよ。それは、忘れないで」
心操にとってこれは激励のつもりだった。もう自分がいなくても瑠璃は大丈夫なのだと。成長できた、頑張れたよという瑠璃を認める発言のつもりだった。
けれど、とうの瑠璃はみるみるうちに瞳を潤ませて、立ち上がった。
「しっ、心操のばか〜〜っ!!!」
「ばっ!?」
「あっ、瑠璃! 待って!」
幼稚な悪口に心操は面食らうが、言い逃げのように瑠璃は自室の方に向かった。友だち一号が引き留めるも聞いていない。
微妙な空気の中、心操が「やっぱこうなるか……」と項垂れるのを、友だち一号が呆れた顔で見ていた。
「いや、今のは心操が悪いね」
「またおまえは揚羽の肩持つのかよ……」
「そうじゃなくて、あれじゃ瑠璃泣くでしょ。「俺は相談役降りるけど、俺の代わりかいるからそれでいいだろ」って、あの子なら受け取るよ」
それを聞いて心操はそんな馬鹿なと思ったが、瑠璃ならそう取りそうだとも思った。
それに実際、自分の代わりはいると心操自身確かにそう思っていた。
「いや、別に完全に降りるわけじゃ……」
「それ、今の聞いてあの子が冷静に考えられると思う?」
「……無理、だな」
「でしょ〜? ま、とにかく後で誤解は解きな。科が変わっても、引き続き相談役は続けさせてくださいって頭下げればあの子もご機嫌よ」
「頭下げるのは俺なのか……」
「そりゃそうでしょ。だって女王様なんだから」
友だち一号が当たり前のように口にするそれに心操も妙に納得してしまった。
そりゃそうだ。瑠璃はずっと女王様なのだ。そしてその女王様の隣の席になったのが運の尽き。相談役なんて任命されて、心操はそれはもう世話を焼く日々だった。
そしてそれが、意外と悪くないと思っていたのも……事実だった。
「まったくしょうがないな……女王様のご機嫌を取るのも、俺らの仕事の内ってことで」
「そーいうこと」
にやりと笑った友だち一号に心操もため息にも似た笑みをこぼすのだった。
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