休み明け、氷華は連休を爆豪と過ごしたことでそれはもう上機嫌だった。ただでさえキラキラした美貌が二割増しに輝いている。体育祭の余波で道行く人に話しかけられ、時にしつこく連絡先を聞かれても氷華はにっこりと冷静に対応できた。爆豪効果は絶大である。


「おはよう、白雪。今朝は妙に上機嫌じゃないか」
「おはよう、物間くん。あのね、私二日間ば――」
「おっはよー氷華ー!! ねね、氷華はやっぱ体育祭すごかったからたくさん声かけられたんじゃない? どうだった!? 大変な目にあったりしてない!?」

氷華の話を遮るかのようにものすごい勢いで食い気味に話しかける取蔭に、近くにいた拳藤がぐっと親指を立てた。二人はとっくに休みの間の氷華と爆豪の話をしっていた。ファインプレーだ。物間が氷華に惚れていることはB組では周知の事実であり、氷華が関わった物間はいろんな意味で二割増しで煩いのだ。しかも相手はあの爆豪である。五割り増しで発狂するのは想像に容易かった。
割り込んだ取蔭に不快そうな顔もするも、心配が勝ったのか物間も取蔭の言葉に同意するように「ただでさえ君は人目を惹くから心配だ」と神妙な顔で氷華を案じた。


「大丈夫だよ。あったかい応援をたくさんもらったの。もっと頑張らなくちゃって思っちゃった」
「そうかそうかぁ、よかったなぁ」

癖になっている胸の前できゅっと両手で握りこぶしを作る頑張るのポーズに取蔭がかわいいわぁと癒される。身長が低く、華奢な氷華はこうぎゅっと抱きしめたくなる可愛さなのだ。
物間も微笑まし気に見ており、とりあえず一難は去った。





「命名、氷雪ヒーロースティーリア!!」
「ラテン語で氷柱って意味ね! 強さと美しさを兼ねそろえたいい名前だわ!!」

今回のヒーロー情報学は特殊で、自分のヒーロー名を考える授業だった。
小洒落た名前をつけたり、好きなものをつけるなど様々な中、氷華は自らの個性を連想させる名前にした。

それに伴い、開示された指名数はB組で一番多いのはもちろん、なんとA組のツートップの片割れを追い越して二位だったことにブラドキングと物間は上機嫌だった。なおツートップは体育祭順位と指名数が逆転している。
だが、氷華もさすがに親の名前ありきだろうと少し落胆した。


「氷華はどこ行くかきまったー? って分厚いなそれ」
「うん……お父様のところに行こうかと思ってたんだけど――」

すっ、と細い指が示したのはエンデヴァーヒーロー事務所と書かれていた。


「えっ!? エンデヴァーから来たの!? すごいじゃん氷華!!」
「うん……でもなんで私なんだろうって思って。私の個性氷雪なのに」
「息子の轟だって氷使えんじゃん? なんか考えがあるんじゃない? なんにせよすごいとっから指名来たね!」
「……そうだね、行ってみたらわかるかな」

エンデヴァーヒーロー事務所。事件解決数史上最多の万年NO.2の炎熱系ヒーロー。
氷華はここに職場体験に行くことを決めた。







「轟くんもエンデヴァーさんのところ?」
「白雪……ってことはお前もか」
「そうなの、せっかくだから一緒に行きましょう」
「ああ……」

来る職場体験。行き先が同じ轟を見つけ一緒に列車に乗る。轟はじっと氷華の髪を見ていた。


「私の髪、なにかついてたりする……?」
「あ、いや……俺のお母さんも姉さんたちも氷の個性で髪が白いんだ。おまえも白いから……氷系の個性ってみんな髪白いのかと思って。じろじろ見てわりぃ」
「なんだそんなこと……全然いいよ。そうだなぁ、お父様も髪白いんだけどね、お母様は雪女の個性だった・・・けど黒髪だったなぁ」
だった・・・……?」
「あ、お母様は私が小さいころに病死してるの」
「そう、なのか……悪いこと聞いたな」
「ううん、もうずいぶん昔のことだし……私こそ変なこといってごめんね」
「いや……」

轟の脳裏に体育祭でエンデヴァーに言われたことが過った。氷華が氷結に関して自分以上の個性を持つのは明白だったが、エンデヴァーがさも氷華の親をよく知っているように聞こえた。もちろん氷華の父親もNO .4であるし、仕事で関わる機会もあるだろうが……それにしては親し気だったなと轟は妙な気分だった。


「白雪の親って……親父と仲いいのか」
「え? 特にそんな話は聞いてないけど……」
「そうか……(親父のやつ……どういうつもりで白雪を呼んだんだ……?)」

沈黙が場を支配する。氷華は微妙な空気を感じつつも、轟もそんなに話したそうではなかったのでそのまま目的地に着くまで二人とも無言だった。

 


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