文化祭の出し物が決まり、氷華は物間の推薦で拳藤と二人そろってミスコンにでることになった。
それと同時にクラスの出し物である劇「ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人〜王の帰還〜」のBGMも氷華の希望で担当することになった。母親が教養として一通り習わせていたのだ。それは雄英に入学するまで続けていた。その道に進むことも勧められたほどの腕前である。楽器だが、西洋が舞台らしくバイオリンを奏でることになった。かなりハードスケジュールだがミスコンと劇の時間は被らないため、何とかなると踏んだのだ。


「え! それじゃあ爆豪くんも楽器するの? ドラムなんてすごい! ちょっとだけでいいから聴かせて?」
「本番で聴きゃいいだろ」
「うちの劇と被っちゃう。私バイオリンするから聴けないよぉ」
「はっ、ざまぁ」

準備している傍ら、たまたま会った爆豪と氷華はそんなことを話していた。
お願い、と腕を軽く引っ張って強請ってくる氷華に、ヤなこったと軽くデコピンをする爆豪。この頃になるとA組はまぁたいちゃついてるよ、としか思わなくなっていた。


「あ、そうだ! さっき物間くんたちから聞いたんだけど、白雪さんミスコン出るんだって!?」
「クソデクが勝手に話に入ってくんじゃねぇ!」
「ごめんかっちゃん! でも気になっちゃって!」

思わず話しかけてしまった緑谷に爆豪が怒鳴った。だが肝心の氷華の返答がなく、視線を向けるとそこには俯いて顔を真っ赤にして両頬に手を当てた氷華の姿があった。は、恥ずかしがってる。


「うん……そう、なんだけど……なんだか恥ずかしくて……」
「(は、恥ずかしいんだー!!?)」

日頃爆豪へ好き好きしている姿しか見ていなかったから意外だった。
けれど氷華は大人しいタイプであるし、目立つような何かを率先してやるタイプではない。容姿と個性が飛びぬけて優れているので自然と目を引くのが氷華だった。


「爆豪くん……」
「(どうせ見に来いっていうんだろうな)おう」
「見に来ちゃやだからね……恥ずかくて溶けちゃいそう……」
「……は?」

予想の斜め上だった。爆豪は氷華からミスコンの観戦を本人から禁じられた。いやなんでだよ。お前もっと恥ずかしいことばっかしてんだろ。
釈然としないまま、文化祭の準備で慌ただしい日々が続いていくのだった。







「それにしても白雪はわかってたけど……あっははは何だい拳藤その衣装は!! 暴力に魂を売った人間とは思えないなァ!!」
「褒めてんのか貶してんのかどっち」
「ほめてんのさ!! 何てったてエントリーしたのはこの僕だぜ!? CM出演で人気のある拳藤と、入学当初から親衛隊を持ち、インターンでさらに人気上昇してる白雪の二人なら……!! 優勝間違いなし! 優勝することによってB組は更にプルスウルトラ! 何よりその間君の手刀から僕が解放されるのさ!!」

テンションマックスの物間に昨年の準グランプリの波動やグランプリの絢爛崎が絡んでいる。物間が大体悪い。
氷華は持ち前の可憐さを生かした純白のドレスを着ていた。そこにいるだけでまさに雪の妖精のような美しさである。泡瀬が写真に撮りたがったのを快く承諾し、照れながらもにこっと笑ってハイチーズ。こちらの写真はB組のグループにも掲載された。







何度かトラブルがあったものの、劇の方は結果的に上手くいった。
氷華が奏でるバイオリンもいい仕事をした。本当にいい仕事をした。時間稼ぎや台詞ミスによる急展開をそれらしく盛り上げたりなどどれだけ貢献したかわからない。終わったその足でミスコンの待機室まで移動し、氷華は拳藤と一緒に付添人をしてくれている柳に緊張しすぎと心配された。
しょうがない、ミスコンなんて初めてなのだ。美しさを競い合う戦いに出たことなどなかった。かわいいとか、きれいとか、そういうものを観客は求めている、恥ずかしい。でもやらなくちゃ、せっかく推薦してくれた物間やB組のみんなの期待に応えるためにも。氷華の番が来たとき、もう氷華は緊張していなかった。狙うは優勝、熱く燃える闘志が彼女を優勝へと導くはず、だった――。


「(なんっで……爆豪くんがいるの〜!)ふぁひゃいっ」
「「「さっみいいいいいい!!!」」」

どんなに人がいようとも、氷華が爆豪を見つけられないわけがない。見つけてしまった氷華は開幕会場を雪まみれにしてしまい盛大にやらかした。
だが峰田のような一部の猛者は「これもご褒美だ」とサムズアップをしていた。強い。


「あのバカ……」
「うおぉ……良かれと思って連れてきたけど白雪マジでアガっちまったか、悪いことしたなぁ」
「でもでも、白雪可愛かったよなぁ……! 爆豪もやっぱ見といてよかったろー?」
「別に……何着てても一緒だろ。用は済んだんだからさっさと行くぞ、俺はオールマイトの記録を超えんだよ」
「まだやるんだ……」

アスレチックに挑戦していた爆豪は気を利かせた切島たちによってミスコン会場に連れてこられていた。来るなと言われたのを少しだけ気にしていたのだ。実際来たことによってアガってしまった氷華に爆豪はなんとも言えない気持ちだった。おまえの羞恥心どうなってんだ。
ミスコンらしく氷華は可憐に着飾っていたが、爆豪にとっては何着てたって一緒である。何着てたっていつもキラキラした顔で見てくるから、キラキラしてんのはいつだって同じことなのだ。

結果ミスコンは波動が優勝し、氷華は準々グランプリだった。可憐さが持ち味の氷華が波動と票を奪い合うのは当然として、やはり満足にアピールできなかったのが効いた。準々グランプリまでいけたのは親衛隊の票が大きかったからだろう、あと一部の何かに目覚めた猛者たちである。体育祭といい準々優勝に縁があるなと氷華は遠い目をするのだった。

 


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