冬休みも一緒
「すごいすごいー! 爆豪くん仮免とってすぐ事件解決しちゃうなんてすごいよー!」
「ハッ、こんくらい楽勝だわ!」
「白雪、俺もいた。俺もすごい」
「轟くんもすごいねー! 二人ともすごいすごいー!」
ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる氷華をそのままにしていた爆豪は、突然会話に入ってきた轟に目を剝いた。自分も褒めてくれと言わんばかりの主張は意外なんてものじゃなかった。前々から感じていたが、轟の氷華に対する言動はちょっとおかしい。氷華といい、グレイズもそうだが氷系の個性持ちはどこかずれているんだろうか。独特の距離感である。
「でも、どうして爆豪くんだけインタビューカットされちゃったの?」
「知るかァ!! 使えやクソがァ!!」
「爆豪くんかっこいいのにねぇ、残念だねぇ……」
慰めるように頬をすりすりと擦り寄せる氷華にも爆豪は動じた風もなく、時間を割いてやったにも関わらず使われなかった怒りを思い出したのかギリギリと歯ぎしりをしていた。爆豪をかっこいいなんて言うのはヒーロー科では氷華くらいのものである。もはや誰も突っ込まない。
――時は流れて待ちに待った聖夜である。
氷華はクラスでクリスマスパーティーをすることになり、ケーキだ御馳走だと大忙ししていた。女子力の高さがまたもや発揮される。物間はまだ失恋の傷が癒えていないながら、爆豪は白雪の作ったご馳走もケーキも食べられない、でも僕は今食べている。白雪の手料理を食べれるのは爆豪だけじゃないんだよと謎のマウントをとることで精神を保っていた。正気の沙汰ではない。
プレゼント交換が終わって、だらだら片付けだすかといったところで氷華は自由時間をもらうことになった。作る担当で働き通しだったのと、爆豪と話したいだろうという気遣いだった。もうとっくに公認なのである。
もう遅いのとA組でもクリスマスパーティーが行われているだろうからと寮には行かず、アプリで連絡をとることにした。躊躇なく電話をかけると意外にもすぐ繋がった。
「爆豪くん? そっちもクリスマスパーティー終わったの?」
『まだやってるやつらはいんな。俺はもう部屋、いつまでも付き合ってらんねェ』
「じゃあよかった、しばらく爆豪くん独り占めできちゃう」
『おい、長電話はしねェ』
電話越しでもわかるるんるんした様子の氷華にこいつ聞いてねぇなと爆豪はいらっとした。完全にクリスマスに浮足立っている。もう少し早い時間だったら寮まできて呼び出していただろう。それを考えるとまぁ電話ぐらいなら少し付き合ってやるかと思えた。
話題はやはり課題として出たインターンの話になる。
「爆豪くんインターンどこいくの? お父様のところ?」
『グレイズんとこは断られた』
「え!? どうして!? お父様爆豪くんのことあんなに気に入ってらしたのに……!」
『さァな、他に適任者がいるの一点張りだ』
この時にはすでに轟に誘われてエンデヴァーのところに行くことが決定していたが、そうなると氷華が大興奮してうるさくなるため言わなかった。氷華も引き続きエンデヴァーのところでお世話になることが確定していたのだ。以前は事務所と学校側の取り決めで自粛となり、途中で終わっていたため受け入れは当然ともいえた。
それにグレイズの言っていた適任者とやらも後日オールマイトと話して爆豪は理解することになる。グレイズの言っていた適任者とはエンデヴァーのことで間違いないだろう。確かに今自分に必要なのはグレイズよりエンデヴァーだと自分でも思う。グレイズもちゃんと爆豪のことを考えているらしかった。
めんどくさくなった爆豪は『寝る』と一言言って切ろうとした。
「あ、まってまって!」
『ンだよ』
「メリークリスマス、来年は少しでいいから一緒に過ごしたいな……」
あー、またこの声である。甘えた全開で強請ってくる声。画面越しの向こうではさぞ甘ったるい顔をしていることだろう。爆豪はこの声を聞くとこの頃妙に条件反射でおー……と生返事しそうになってしまう。最近ちょっとずつ氷華を可愛いと思うことがちらほらあるのだ。断じて認めないが。でも正直この女から逃げ切ることは難しいだろうなとは思っている。自分への執着レベルが段違いだ。
『……気が向いたらな』
それだけ言って通話を切る、氷華がご機嫌だったのは伝わった。爆豪はここでエンデヴァーのところに行くというのを話しておけばよかったと後でちょっと後悔することになろうとはまだ知らない。
余談だが年末の帰省でグレイズは氷華に適任者って誰々? と質問攻めされることになったとさ。
「わぁああ! 爆豪くんと一緒ーー!! 冬休みずっと一緒ーー!!」
「だぁああ!! もううっせェ!!」
もう大変だった。二学期が終わりインターンに時間を取られるため冬休みはほぼ会えない、電話もたぶんあまりむりだろうと思っていた氷華に突然舞い降りたご褒美である。
エンデヴァーの下でのインターンがわりと地獄だというのはわかりきっていたが、大好きな人が一緒なら頑張れるというもの。轟なんかは「よかったな」などと微笑ましそうにみているし、緑谷は白雪さん相変わらずすごいなぁと感心していた。
エンデヴァーのところに着くまでの間、文字通り爆豪を掴んで離さずずっとこの調子である。爆豪はもう疲れた。こんなことなら通話したとき言っておけばよかったと後悔するも後の祭りであった。
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