冬休み、インターンである事件について警察から協力要請をうけた。それはとある落書き犯を逮捕してほしいというもの。被害数は五十件に上るそうだが、NO.1ヒーロー事務所に依頼するにはなんともしょぼい内容だった。
けれどその落書き犯ミスター・スマイリーと名乗るその男は強力な個性をもっているらしい。なんでも強制的に笑わせるらしい、抱腹絶倒不回避でなんとその状態が二時間も続く。そうして取り逃し続けているとのことでエンデヴァーに協力要請を求めていた。
エンデヴァーは落書き犯などという軽犯罪に駆り出されることに不服であり、とりあえずパトロールの際に落書き犯に注意するように伝えた。

だがその次の日、エンデヴァーは人が変わったように落書き犯を捕まえるために燃え上がっていた。


「ミスター・スマイリーとかいう生意気な落書き犯を総員で確保する! いいな!!」
「「「了解!」」」
「エンデヴァーなにかあったの?」
「家の壁に落書きされたらしい」
「わぁ……それはやだねぇ」
「ちっ、私怨かよ」
「黙れ!」

それはもうエンデヴァーは怒っていた。自慢の家に落書きされたのだ、しょうがない立派な日本家屋にファンシーな落書きは似合わないにもほどがある。それにしてもNO.1ヒーローの家に落書きとは……度胸のある落書き犯である。
タイミング良くミスター・スマイリー発見の報が届く。それはもう気合十分にエンデヴァーが「いくぞー!」と声をかけ、「了解」と落書き犯を探しに回った。

最初にミスター・スマイリーを緑谷が見つけたものの、個性にかかり壁にものすごい勢いで激突してしまった。爆笑しながらエンデヴァーにミスター・スマイリーが向かった先を示すも、そのエンデヴァーもあえなく撃沈。目をつぶったまま徹甲弾A・Pショットを撃つも当たらずまたもや個性の餌食に。轟と氷華が氷で遠隔攻撃を試みるも、ボールのようなものから映像が飛び出てきて個性にかかってしまい、続く炎のサイドキッカーズも失敗し……エンデヴァー事務所の面子は丸つぶれだった。ようやく個性の効果が切れた二時間後――。


「許せん……ミスター・スマイリー」
「ぜってぇぶっ殺す」
「笑いすぎてお腹いたいわ……」
「世間に恥を晒してしまった……」
「顔が隠れててよかった」

氷華は笑いすぎて痛くなったお腹をさすった。まったく酷い目にあった。爆豪もあまりに不機嫌でさすがの氷華も甘えるに甘えれない。擦り寄ったところで拒絶はされないだろうが撫でてもくれないのがわかりきっている。
轟と緑谷が冷静に分析しており、エンデヴァーの炎と轟と氷華の氷結で距離をとりながら対処するしかないかと思われたが、緑谷が機械なら大丈夫ではないかと妙案を思いつき、さっそくサポート科に連絡を取った。

思いのほかすぐ来てくれ、発目とパワーローダーの合作自立型の捕獲ロボが届く。だがミスター・スマイリーに屈辱を味あわされた爆豪はロボを信用できず、「こんなんが役に立つのかァ?」とロボを蹴ってしまう。すると一気にどこにしまってあったのか網がでてきて爆豪が捕獲された。


「ンだこれ!」
「性能実験ダ愚カナ人間ヨ。フフフフフ」

もがく爆豪に氷華が網から出れるよう手伝う。皮肉なことに身をもって捕獲精度を実証することになるとは。爆豪の機嫌は大変悪かった。
これなら大丈夫だと緑谷たちが期待するものの……結果としてうまくいかなかった。ミスター・スマイリーのスマイルを画像認識していまい、回路に影響がでて故障してしまったのだ。それでも果敢に立ち向かった爆豪も撃沈し、氷華たちもそろってやられてしまった。

氷華の美貌を近くでみたミスター・スマイリーが「これぞ美の粋!! 天使よ妖精よ! 君に出会えたことが私の幸運だ!!」といたく感動し、創作意欲が湧いたとかでますます落書きが増え、辺りはしばらく氷華の落書きでいっぱいだった。「なに創作意欲掻き立ててんだ!! キラキラすんのも大概にしろ!!」氷華は爆豪に理不尽に怒られた。「爆豪くんじゃない人にキラキラなんてしないもん!」「おめェは存在がキラキラしてんだよ自覚しろや!!」「そうだな、白雪はいつも綺麗だ、キラキラしてる」「てめーには聞いてねぇんだよ! 話に入ってくんな黙ってろ!」「わりぃ」もういろいろみんな疲れている。緑谷だけが冷静にかっちゃんがキラキラしてるって認めるなんて……! と一人感動していた。

またも惨敗した爆豪たちであったが、エンデヴァーが新しい策を講じる。


「バクゴー」
「ンだよ」
「俺の指示通りに目を閉じて動けるか」
「できるわ!」
「こい」

移動する二人に氷華が「私もー!」と言ってついていく。氷華の爆豪へのべったり具合はエンデヴァー事務所でも公認だった。エンデヴァー自身が雪女の習性に理解があったのと、そもそも大前提爆豪と一緒にいさせたほうが氷華の力が発揮されやすいのだ。あと単純にエンデヴァーと氷華の相性が意外なことに驚くほどよかった。結構可愛がっているのだ。


「A3、B2、G7! A2、B3、Y7! C2、B1、B4……爆破!」

目隠ししたまま爆豪がエンデヴァーの指示で的確に動く。正直氷華は目隠ししたままえーすりーだびーつだ言われてもよくわからない。驚異的な方向感覚である。きっちり標的のど真ん中を爆破した爆豪に氷華は黄色い悲鳴を上げて抱き着いた。目隠しをまだ外してなかったのにしっかり後ろから迫った氷華を真正面で受け止めているあたり本当にすごいぞ爆豪。


「思った以上に物覚えが早いな」
「言ったろ、訓練なんざいらねェって」

エンデヴァーもかなり満足気である。爆豪も機嫌が直りきっていないからかツンとしていたが、それでも氷華を抱きとめる手は優しかった。抱きとめはしても抱きしめない、それが付き合ってないことの証明であることを氷華もちゃんと理解している。けれど跳ねのけられたり、罵倒が飛んできていた日々を思えばとんでもない成長であった。二人の仲が進展するのは、意外とそう遠くないかもしれない。






「バクゴー、用意はいいな」
「任せろや、三度も同じ手は食わねェ」
「よし行け、デリートだ!」
「ふぁいとぉ〜!」

ミスター・スマイリー目掛けて降り立った爆豪に氷華が声援を送る。大型ショッピングモールに現れたミスター・スマイリーはまたも壁に絵を描いていた。今度は氷華の落書きじゃないことに密かに胸を撫でおろす。エンデヴァーの指示と目隠しをしているためミスター・スマイリーの個性が効かない爆豪は最高に輝いていた。
落書きを後ろに庇ったまま、爆破を受けようとしたその瞬間――。


「待ってかっちゃん!」
「命令すんな! クソデ――しまっ」

急に止めに入った緑谷に反応してしまった爆豪がミスター・スマイリーに目隠しをとられ、個性にかかってしまう。もう魂が抜けた。あれほど意気込んでいたのと度重なる屈辱に魂が抜けたのである。
なぜ自分を助けたのだというミスター・スマイリーに緑谷が説く。何やらよくわからなかったが緑谷の自身の経験と通じるものがあったのだろう。その言葉はミスター・スマイリーに届いたようだった。
爆豪は犠牲となったがいい話で終わりそうなところ、なんと強盗が入る。銃を乱射し、宝石を個性で吸い出していく強盗犯に応戦しようとするも中に店員がいて人質にとられていた。

けれど作品を傷つけられたミスター・スマイリーの怒りはすさまじく、なんとその強力な個性で敵をあっさり制圧してしまった。強盗犯は指名手配中の強盗だったらしく、生中継でミスター・スマイリーのインタビューが流れる。


「私はしがない芸術家、名前はそう……ミスター・スマイリー!!」

テレビを通じてミスター・スマイリーの個性スマイルが炸裂し、辺りとテレビ越しの人々が笑いに包まれる。この報道をきっかけに、緑谷が上鳴に教えてもらいながら立ち上げたミスター・スマイリーのホームページを通して彼の作品はたくさんの人たちに認められたというのはまた別の話。
なお、ホームページに掲載された美しい白髪の少女の絵は特に注目を集め、多くの人々に愛されたという。

 


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