氷雪の支配者
三月下旬、町からヒーローが消えた。
ホークスにより死柄木弔率いる
エンデヴァーとグレイズ主導のもと二班に分かれ作戦に挑むことになるが……氷華はグレイズたっての希望でエンデヴァー班からグレイズ班に移されることになる。
「……私をここに呼んだのは、父親としてですか」
「ああ。大規模な作戦だ。手元にいるほうが都合がよかった」
「……ここにいる以上は私も仮免を持ったヒーローです。そのように扱ってください」
「そのつもりだ」
エンデヴァー班が蛇腔病院での作戦を決行する一方、グレイズ班は群訝山荘で超常解放戦線の一斉掃討が命じられていた。氷華はグレイズの前衛部隊に配置された。氷華の個性は大規模制圧に特筆される。その個性を買われ、A組の常闇、上鳴とB組の小森、骨抜と共に前線で戦うことになる。とはいってもすぐに後衛に回されるらしい。インターン生が主体になって戦うのもまずいため当たり前のことだった。
そしてついに作戦が開始される――。
「
「いいぞスティーリア! 優秀だ!」
「ありがとうございます!」
ギャングオルカが小森や骨抜を褒めるように氷華を褒める。先陣を切って幹部を一人無力化した上鳴に続き、インターン生たちはみな活躍していた。
広範囲氷結攻撃。綺麗に敵だけを氷漬けにして無効化する。もう役目を終えた氷華はファットガムの脂肪に押し込まれ移動していく。まさかのファットガムがタクシーである。略してファッタクらしい。
皆と合流し、後衛に戻っていく間、常闇が負傷しているホークスに気づいた。無理やりファットガムから抜けた常闇はホークスの救援に向かう。ファットガムも常闇を放っていくわけにもいかず、氷華たちを身体から出して後衛に戻るよう指示を出し、常闇を追っていった。指示通り後衛部隊と合流するため移動していたところ、ふいに氷華が冬の匂いを感じた。
「氷……」
「どうした白雪? 戻るぞ」
「……行かなきゃ」
「氷華!? 戻るノコ!!」
「グレイズの氷じゃない! でもどんどんあふれてる!! 私が行かなきゃ! 私なら完封できる!!」
「白雪待てって!! プロに任せろ! 俺たちはインターン生だ命令に従え!!」
「そうノコ! あまりに危険ノコ!!」
「やれる力を持ってるのにやらないのは違うよ……! 限りなくゼロのリスクでやれるなら、やれる人がいかなくちゃ!!」
「あ、こら……! 白雪……!!」
「氷華……!!」
氷華は飛び出した。文字通り飛んでいく氷華に飛行手段を持たない骨抜と小森はどうしようもなかった。骨抜は思うほんとに変わってしまったと。あんな跳ねっかえりじゃなかった。体育祭からどんどん変わっていく。間違いなく爆豪の影響だ。けれど氷華の言っていたことに納得しかけてしまったのも事実だった。やれる力を持っててやらないのは違う。骨抜は遠くに行った氷華にどうか無理だけはしないでくれと祈った。
「なんだ……? 氷が――」
外典は氷が思うように動かないことに焦りだしていた。こんなこと今までなかった。物心がつく前からずっと個性の強化だけに身を注いでいたのだ。こんなことあるはずがなかった。
氷がどこかへと奪われていく。自身が氷を操る個性だけにまさか、と冷や汗をかいた。
「あなたの氷は私の支配下に。もう使えないですよ」
「おまえっ……!!」
やけに顔の整った少女だった。先ほど氷を奪ったグレイズと面差しが似ている。血縁者であろうことにあたりをつけた外典はそれはもう機嫌が悪かった。
氷を我が物顔で使うことは気分がいい、でもいざそれを自分がされる立場になるとこんなにも胸糞悪いのかと切れていた。短気な男なのだ。氷をむきになって使おうにもその傍から支配されていく。氷華の前では自分は無個性も同然だった。散々プロヒーローを苦しめた外典を見事完封した氷華にセメントスが苦虫をつぶした顔で「よくやりました! あとは任せなさい!!」と言うと外典を拘束、無力化に成功した。
氷華は自分の役目を果たしたことで大人しく後衛に戻ることにした。作戦は上手くいっているはずだった。そう、一つの誤算が起きなければ。蛇腔病院の霊安室で死柄木弔が覚醒した。そのたった一つの誤算がすべてを崩していったのだ。ギガントマキアが目覚めたのである。
「はぁっはぁっはぁっ……! くそっ!!」
グレイズはギガントマキアと対峙していた。コレだけはここにとどめておかねばならないと全細胞が告げていた。
けれどマキアの力はあまりに強大で、グレイズ一人では押しとどめておけなかった。マキアは移動する、何かに導かれるように。それこそが死柄木弔の復活を意味していた――。
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