紆余曲折の末、見事結ばれた爆豪と氷華であったが、気になるお付き合いは順調過ぎるほどに順調であった。彼女面事変のきっかけとなった「会いたい」ラインにも爆豪は「俺も」と返すほどの彼氏ぶりを発揮し、どんなに日が高かろうが必ず送り迎えをするなど、その溺愛ぶりときたら今まで相当我慢してたんだなぁ、と周囲は生暖かい視線を向けざるを得なかった。
何より氷華を見る目が甘いこと甘いこと。触れる手は壊れ物を扱うように繊細であったし、一生懸命ふわふわと話す氷華に「ん」と顔を近づけ聞くなどお前本当にあの爆豪かといった具合であった。本人である。

あんなに彼女溺愛するタイプだったとは意外だーと声を上げる女性陣や一部の男子たちに対し、切島をはじめとするよく爆豪と一緒にいる面子は訳知り顔だった。近くでずっと見てきた分、爆豪の心の変化に敏感だったのだ。今にして思えば彼女面事変が起きた時にはもう氷華に惹かれていたのだろうと思う。だからこそプロヒーローになるには邪魔なものだと危険を感じ、あのように遠ざけたのだと今ならわかる。ベクトルは違うが緑谷に抱いた畏怖をいじめることで必死に虚勢を張っていたように、氷華に惹かれていく自分を認めたくなかったのだろう。それが長い年月をかけ、徐々に認めていくことで今に至ったのだと思うと感慨深いものである。


「いやぁ〜! ほんとによかったよ、爆豪が幸せそうで」
「あ?」

思わず声に出した切島に、ちょうど氷華へラインを返していた爆豪が返事をした。ちなみにラインの内容は今度のお昼何食べたい? である。付き合ってからというものの、昼食を一緒にとる機会が増え、こうして氷華の手料理を食べたり、逆に爆豪が作ったりしている。仲がいいったりゃありゃしない。ちなみに爆豪の返事はロールキャベツ、トマトのである。前作ってもらったときに美味しかったのと、氷華の好物であるというチョイスである。彼氏力が高い。


「……そう見えんなら、それはおまえのおかげかもな」

爆豪はそれだけ返すと、返事の意図を理解した氷華の好き好きビームの相手に戻る。言われた切島はぽかん、とすると思わず声を上げた。


「え!? 俺なんかした!?」

あまりに心当たりがなく「なぁなぁ爆豪ー! 俺なんかしたかー!?」と爆豪の肩を揺する。邪魔だと言わんばかりに揺すってくる手を振り払うが、何かを考えるようにラインの返信の手を止めて、静かに口にした。


「おまえが言ったんだろうが……氷華と前の距離感のがいいって」
「え!? あれか!?」
「他になんがあんだよ」

間違いなくあれと言えば彼女面事変以降、疎遠にこそなっていないが、お互い何かを我慢している二人に対して切島が親切心で口に出したあれである。
あー、あれかぁと再びラインの返事を返す爆豪を後目に、あの時のことを思い出した。

切島から見ても氷華が爆豪のことが好きなのは明白で、爆豪だって口ではなんやかんや言いつつもいつも氷華の姿を探していたように思う。それはB組の廊下を通る度だとか、休み時間にいつも来ていたラインを確認するそぶりだったり、何よりB組は仲がいい。その中でも氷華は割と中心にいるタイプだったので誰かしらと絡んでいる姿をよく見かけた。その姿を見かけるたびに機嫌が悪くなる爆豪に、もしかして爆豪も白雪のことが気になっているのかもしれないとあたりをつけたのだ。
そうして公認彼女面後の爆豪はそれはもう生き生きとしていた。無くしていたピースがぴったりはまったかのように好き好きしてくる氷華をまんざらでもない調子で受け入れ、それから徐々に自分の中で折り合いをつけていったのだろう、現在はこうして晴れて彼カノというわけだ。

自分の一言がまさかここまで爆豪に影響を与えていたなど思わず、切島は驚いたのと同時に胸がいっぱいになった。大切なダチの恋に携われたとなればあまりの感動に思わず漢泣きしてしまった。それに爆豪は「うぜぇ!」と声を上げる。照れ隠しも含まれているのはもうわかりきっていた。


「そうだ! 二人が付き合ったって知った鉄哲経由でもらったんだけどよ、爆豪いるだろ?」
「あ……? それ――」

ほらよ、と切島が見せたスマホの画面には、文化祭でミスコンにでたときの氷華の姿があった。正確には本番前に泡瀬が撮っていた写真である。B組のグループにも掲載されていたそれを鉄哲がシェアしてくれたのだ。


「いる」
「だよな!」

そういって送ってもらった画像を爆豪は迷わずホーム画面に指定した。
かつては何着ても一緒だと言った男であったが、ちゃんと自分の気持ちに向き合った今爆豪は違う感じ方をしていた。
いつでも氷華はキラキラしていた、自分を見る目は今だってキラキラ煌めいている。けれどミスコンのときの氷華はガチガチに緊張していてキラキラというより真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。それでも爆豪の目にはいつもと変わらずキラキラしてるように映っていたのだから、それはもう爆豪自身が氷華を魅力的な異性として見ていたに他ならなかった。
こうして恋心を認め受け入れた今、改めてみると可愛いと思う。同時にこんな可愛い姿を他の男どもも見たんかと思うと軽く苛立ってくるくらいだった。変わりすぎである。

見事に氷華にハマってしまった自分に、爆豪は脳内でグレイズがほら見たことかと笑っているのを感じる。けれど以前のように爆破はせずにそーだよ、もう一生離してやんねェと答えた。
雪女に見初められたら最後、結ばれる他ない。だってしょうがねぇだろ、なぁ。こんなに熱烈に好き好きしてくるんだから抗えるわけがないのだ。氷華に自分以外の選択肢が初めからないように、自分だって長いこと氷華以外目に入らない。運命の恋。運命と定めたのはなにも氷華だけじゃなかったのだ。

 


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