あなたという光
「……何が起きたんだ? いつの間にか0Pになって終わったぞ……」
「あの小人の方のP、穢らわしいい取り方をしてしまった罰でしょうか……」
「ううん……最後に声かけてきた人……あの人の個性だと思う」
どんよりと沈む雰囲気の中、氷華は最後に声をかけてきた人物――普通科の心操人使――を見た。
当初氷華が警戒していた伏兵。彼がその伏兵だったのだ。
奇しくも全力を出した結果、出し抜かれる形となり、氷華は悔しくてならなかった。けれど、一方で考える。果たして自分は本当に全力を出していたといえるだろうか、と。
迷っていた。緑谷と轟の間に割って入ることを。出来ると思っていたはずだった。それなのにやめてしまった。引き下がってしまった。鮮烈な熱に導かれるように、惹かれていたのに。
「白雪、ちょっといいか」
「……骨抜くん?」
食堂に行こうとして骨抜に呼び止められた。
氷華は不思議そうな顔をして振り返る。
「白雪、本当は緑谷たちのところ行きたかったんだよな?」
「あ……うん」
「悪かった。おまえのことだから無策で突っ込むわけないもんな、何か考えがあったんだろ?」
「いやそんな……! 考えっていうか……ただ漠然といけるかなって思っただけだよ。具体的な策はなくて。でも……なんだか――私も挑戦してみたくなったの」
それは正しく挑戦だった。あの熱に焦がれるように、自分も更に向こうへ挑戦してみたくなっていた。
耳に残っている、完膚なきまでの1位を取ると叫んだあの声が、氷華の胸に熱を灯した。
「だから謝らないで。迷ったのは私も同じなの」
「白雪……なんか変わったな。いいと思う。そういう白雪も」
「そうかな? そうだと嬉しいな」
食堂に行こう、そろそろ混むだろうからと二人そろって食堂に向かう。
途中で物間たちと合流し、いつものごとく物間の世話焼きが始まる。それに骨抜は柔軟な対応をみせつつ、みんなでわいわいと食事を楽しんだ。
最終種目前にA組女子の謎のチアリーディングなどが起こったが、概ね予定通りに進行は進んだ。
最終種目はトーナメント形式。B組からは心操チームにいた庄田と泡瀬が最終種目に進出することになった。が――
「ほんとにいいの……?」
「いいんだ。俺の分まで頑張ってきてくれよ、白雪!!」
心操チームにいたA組の尾白とB組の二人は棄権を申し入れた。
何もしていない者が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反する、という自分たちのプライドと信念のために棄権したのだ。
本来繰り上がるのは5位だった拳藤チームだったが、最後まで上位にいた氷華たちが上がるのが正しいと主張し、氷華たちのチームが繰り上がることになった。
「でも骨抜くんだって頑張ってたのに」
「白雪、俺のエゴだよ。白雪の方が第一種目上だったのもだけど、俺は今変わろうとしてる白雪がいいと思ってる。今進出するのに正しいのは白雪だと俺は思うよ。だから行ってくれ、そして変わったおまえを見せてほしいんだ、ちゃんと見てるから」
骨抜柔造は柔軟だ。柔軟な思考で相手に合わせていける。相手の最大を引き出すことができる。
氷華はうるっときた涙腺を流すまいと口結びながら、静かに頷いた。
――白雪氷華、最終トーナメント進出。
その後は思い思いに過ごした。試合に向けて集中力を高めるもの、レクリエーションに参加して楽しむもの。
「白雪! 白雪はどこだ!? 僕と一緒に来てくれ!!」
「はーい、今行くねー!」
「ハハハ!! 白雪が来たなら僕が1位で間違いなしだ!!」
「う、うん? お役に立てたならよかった……?」
「すごい美少女」と書かれた紙を前にゴールした氷華はきょろきょろと周りを見渡した。
けれど目当ての熱のその人の姿はなく、どうやら一人で過ごしているらしかった。
氷華と爆豪は順当に当たれば3回戦で当たる。負けられない、彼に届くまではと気合を入れた。
top