ある日の休日、爆豪とデートの約束をしていた氷華は何かを思いついたような顔をした。
いつものように可愛い服を選んで、可愛いメイクをして、ヘアアレンジに取り掛かろうとしたときのことである。付き合ってからというものの、爆豪は非常に出来た彼氏であった。
ちょっと遠出をしようものなら欠かさず土産を買ってくるし、何でもない日でも氷華に似合いそうなものがあればプレゼントしてくるし、普段のラインのやり取りも返事ができる暇があればちゃんと返してくれる。何ならデートのお誘いだって時間さえ合えば提案してくれるし、お料理も一緒にして食べている。本当に出来た彼氏であった。そんなできた彼氏から最も多く贈り物としてもらうのは髪留めである。

非常に多種多様で飾り付きコームだったりバレッタ、お洒落な形をしたバンスクリップに大きなサテンのリボンがついたヘアゴム、金属でできた細かい花の飾りがついたカチューシャなど、髪飾り用に収納ケースを新調したほどだった。驚くことにこの中のほとんどが爆豪からの贈り物である。
喜んで普段から使ってはいるが、何せ量が量である。あと繊細な飾りのものはヒーロー基礎学もあるため壊れることを危惧し、使っていないものも出てきてしまいこれがとても寂しい。せっかく愛しの彼氏が贈ってくれたものである。氷華は全部大事に使いたかった。そこで閃いたのだ。閃いてしまった。氷華の彼氏はほとんどのことが出来てしまう才能マンである。加えて恋人はとことん甘やかしたいタイプらしい。氷華はもう甘える気満々であった。







「――で、俺にこれをやれってか」
「うんっ、勝己くんならできるでしょう? やってほしいな。ね? お願い」

爆豪を部屋に招いて髪飾りを差し出し、お願いとおねだりをする。出したのは繊細な花の飾りがついたコームだった。ものすごく気に入っているけれど、気に入りすぎて普段使いできないのと、あと位置的に後ろに使うため一人でアレンジするにはちょっと向きが心配で使えなかったお気に入りである。巻くためのコテなども準備して爆豪の腕を引っ張ってお願いしてくる氷華に爆豪は軽く息をつき、氷華をドレッサーの前に座らせた。


「どれやればいんだ」
「えっとね、これがいいな。お姫様みたいなの」
「お姫様ねぇ……このままでも十分お姫様だけどな」

爆豪がふわふわした氷華の髪を優しく撫でる。揶揄った様子もなく、本心で言うそれは尤もであった。くるりと緩やかにウェーブした癖っ毛はただ巻いただけではこうならない。最初から完成されているそれに、おまえ生まれながらのお姫様だろとなんでもない風に爆豪はいう。
喜ぶご機嫌な氷華の髪を撫で、このままでもいいと思うが氷華はこれがいいというので要望に応えてやることにする。本当に出来た彼氏であった。


「髪梳かすぞ。痛かったら言え」
「はーい」

痛かったら言えというわりに爆豪の櫛捌きは酷く優しいものだった。氷華の滑らかな髪が優しく梳かされていく。白い髪が日に当たってキラキラしているのを爆豪は優しく見つめていた。なにを隠そう爆豪は氷華の髪が好きなのだ。雪のように真っ白なのも、柔らかでふわふわした感触も、くるりとしたそれもものすごく好きだった。自然とそれが贈り物にも表れ、氷華の髪飾りが増えていってしまったのだ。

才能マンらしくテキパキとヘアアレンジを施していく。両サイドの髪を編み込んでやり、ハーフアップにする。そこをコームで留め、ついでとばかりに小さな花や真珠を模したビーズのピンを編み込んだ場所に所々挿してやる。最後にコテで毛先だけミックスで軽く巻いてやることにした。


「ん。ほら出来たぞ」
「ふぁ〜〜! 勝己くんすごーい! 雑誌のやつよりかわいいっ」
「ったりめーだろ。俺がやったんだから」
「うんうん! 勝己くん天才〜!」

ぎゅうっと抱き着いてくる氷華を抱きしめてやる。髪飾りがよく似合っている。そのことに酷く独占欲が満たされるのを感じた。氷華が普段から使っているのを見るのが嬉しいのだ。氷華は自分のだと主張している気分になる。キューティクルが眩しいその頭に軽くキスをした。


「勝己くん……」
「こら甘えてくんな。今日出掛けんだろ」
「あぅ……でも……」

甘えたい、と訴えてくる氷華に爆豪はやっちまったなと思う。これくらいならいいだろうとキスをしてしまったのが間違いであった。あれで完全に氷華の甘えたスイッチが入ってしまったのだ。こうなってしまってはもう仕方ないと爆豪は腹をくくった。自分の理性との戦いの幕開けである。可愛い彼女を甘やかしてやるのも男の甲斐性なので。本当によくできた彼氏であった。


「ったく、しょうがねーなぁ……氷華」
「! えへへ、勝己くん大好き!」
「おー……」

無邪気に甘えてくっついてくる氷華に生返事をしつつ、髪を崩さないように軽く撫でてやる。失敗した、撫でるのも気を遣わないといけない状態にいつもより理性の難易度が上がったことを察する。おまえほんと覚えてろよと静かに心の中でブチギレていた。
まぁそれはそれとして、氷華彼女に甘えられるのも爆豪彼氏の特権なのだ。この特権を思う存分満喫しようと頭を切り替えるのだった。

 


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