運命探し
それは爆豪が雄英に入学して二年が経ち、三年生になったばかりの頃であった。
爆豪はベストジーニストが復帰してからインターン先をエンデヴァーからベストジーニストへと移していた。が、その日は珍しくエンデヴァーとベストジーニスト、ついでにホークスとグレイズといったヒーロービルボードチャート上位ランカーたちが一堂に会していた。
それぞれインターン生たちも連れてきたようで、とんでもない人口密度だった。だがこれだけ集まっているというのにいるのはみな男であった。ヒーローに男女差はあまりない、男でも女でもどんな個性を持っているかが全ての世界であるからである。故にこの光景はとても珍しいものであった。
「おい、ジーニスト! これなんの集まりだ! 大規模作戦でもやんのか!」
「作戦といえば作戦だ。……まぁ、すぐにわかる。大・爆・殺・神ダイナマイト、これから何が起ころうとも任務には忠実にな」
「ああ゛!? んなあたりめぇのことをなにわざわざ……」
爆豪はここで嫌な予感がした。ジーニストがわざわざ釘を刺すときは決まってよくないことが起きるのだ。それはもう爆発的に拒否したいことが。爆豪は背中にいやな汗が流れてくるのを感じた。その時、エンデヴァー事務所に変わらずインターンに行っている轟と緑谷が向かってきた。
「やっぱりかっちゃんも連れてこられてたんだ!」
「向こうに常闇と飯田もいた。それに二年の奴らも」
「ちっ、やっぱそろって野郎しかいねぇ……なんなんだこの集まりはよぉ」
「10代後半〜20代前半の男性のみ連れてこられてる……男性には通用しない個性をもった敵とかなのかな」
「それにしちゃ人数が多すぎんだろ。掃討作戦のそれ並みだぞ」
その瞬間辺りが暗くなり、ステージにスポットライトを浴びたグレイズが立っていた。もう40になるというのにその姿は若々しく、圧倒的女性支持率を得るその容姿は美しいものだった。
「本日は忙しいところ集まっていただき感謝する。皆に集まってもらったのは他でもない……私の一人娘である白雪氷華の運命探しをするためだ」
「運命探しだぁ!? 要は娘の見合いかよ!! くっだらねぇ! ジーニスト! 俺ァ帰る!!」
「かっ、かっちゃん落ち着いて……!」
「大・爆・殺・神ダイナマイト。先ほども言っただろう任務には忠実にと。すでに私たちはグレイズから正式な依頼を受けている身だちゃんとしなさい」
「こんなくだらねぇ依頼受けてんじゃねぇ!!」
「それがくだらなくもないんだ。娘さんの命がかかっているからな」
命がかかっているという話に爆豪は息を詰まらせる。爆豪とてヒーロー志望だ。先ほどはグレイズが筋金入りの親ばかという有名な話を知っている上で、グレイズが娘可愛さに周りを巻き込んだのだろうと思っていたのだ。けれど命がかかわってくるというのなら話は別だ。どんなにくだらなくても一応話を聞いてやろうと思った。
そして件の白雪氷華だというグレイズの娘の写真がモニターに映し出される。それに会場がにわかに騒がしくなる。その少女があまりにも美しかったからだ。まさに天使や妖精といった容姿であった。この世の美の粋。可憐な少女に轟が「綺麗だな……なんか、初めて会う気がしねぇ」と言い出す。「え!? 轟くんそれって……!」「なに運命感じとんだ……もうお前でいいんじゃねぇの、運命」なんて投げやりに言う。
すっかり会場は熱気がこもっている。現金なものであれほど美しい少女の運命なら是非と名乗り出るものばかりだったのだ。
「私の娘が美しいのはよくわかるが、まぁ聞いてくれ。彼女は私の氷結と母親の雪女の個性を受け継いだ複合個性、氷雪の持ち主なのだが……あまり個性に興味がなくてな、
「氷雪ってくそ強ェじゃねぇか、なんでヒーロー目指さねぇんだよ、もったいねぇな」
「20歳まで生きられないって……僕たちとそんなに変わらないように見えるからえっと……」
「彼女は君たちと同じ年だ。猶予は2年程」
「そこから個性を制御するとなると……だいぶギリギリじゃないですか。ほんとにこれ最終手段って感じだな」
「ああ、グレイズも苦渋の決断だっただろう。藁にも縋る思いだろうさ。だからこそこの任務は誰かが成功させなくては」
「運命ったって、そんな簡単に見つかるもんかよ」
切り替えられた画面には氷華の個性がいかに強力か理解するためであろう、大吹雪や建物が倒壊した跡が映っていた。雪女の特性を強く受け継いでいるというだけあって、たしかにすさまじいものだった。成長すると共に個性も急成長していったのだろう。幼い頃から訓練していればこうまでならなかっただろうが、個性に無頓着であった故にこうなってしまったのだろう。グレイズというプロヒーローがいながらこうなったということに賢い爆豪はきな臭いものを感じてしまった。
「雪女はこれと決めた運命を得ればある程度その
「それって……もうグレイズの全財産なんじゃ……」
「ああ、娘より大事なものなんてあの人にはないだろうな……」
「娘さん、助けたいね」
「助けなきゃな」
「……お前ら運命じゃなかったら用なしなんわかっとんのか」
けっ、と吐き捨てた爆豪は知らない。緑谷や轟の方がまだやる気があったというのに、運命に選ばれるのは自分だということを……まだ、知らない。
top