ついに始まったトーナメント戦、第一試合の緑谷と心操の試合は心操の個性で緑谷場外かに思われたが、どういう理屈か緑谷が個性を暴発させ逆転勝ちとなった。
次の試合は轟と瀬呂で、轟は会場に向かう道すがら、父であるエンデヴァーに捕まっていた。


「お母さんの力だけで勝ち上がる。戦いでてめェの力は使わねぇ」
「今は通用したとしてもすぐ限界がくるぞ。すでにおまえのより強い氷雪の持ち主がいる」
「あ゛?」
「白雪……あの娘に今のおまえは勝てないだろう」

静かに燃える炎が轟を超えて遠くを見た。轟は苛立ったまま会場入りし、そしてそのまま瀬呂を激情のまま氷漬けにした。


「わ〜! 涼し〜!!」
「これを涼しいで済ませるあたり、やっぱすごいわあんた」

若干引いた取蔭の隣で氷華が氷にはしゃぐ。じっと座っていると氷華には暑く、かといって個性で気温を下げるとみんなが寒いとあって少し氷に飢えていたのだ。
けれどそれも轟の炎で溶かされ、涼しいのはほんの少しの間だけであった。


続く第三試合、塩崎と上鳴の対決はあっさり決まった。まさに瞬殺だった。
塩崎たちの次の次の試合が氷華のため、氷華は先に控室で身体を冷やすことにした。



『立て続けにいくぜぇ第五試合、女の闘い!! 美少女すぎる推薦入学者!! ヒーロー科白雪氷華VSあの角からなんかでんの!? ねぇでんの!? ヒーロー科芦戸三奈!!』
「氷華ちゃーーーーーんっ!!」
「白雪ーーー! 俺がついてるーーーー!!」
「氷華ちゃん頑張れーーーー!!」
『うお白雪! ちょー人気じゃねぇか!!』
「ええっ……なんか負けた気分」

響き渡る氷華コールに氷華は少し照れた様子で、はにかみながら小さく手を振った。
氷上の天使、雪の妖精。その名を恣にした類まれな美少女。入学間もなく氷華には親衛隊ができていた。人気取りも大事なヒーローの素養。氷華はその点ではとても恵まれていた。


「いやぁ……わかってたけど、近くで見るとほんと天使っていうか、妖精さんみたい!」
「ありがとう。芦戸さんも華やかでとってもかっこいいね!」
「あ、意外と自覚的なんだ。ま、そんだけ可愛くて謙遜されたら嫌味だもんね。好きだよそういうの! でも……試合じゃ容赦しないから!」
「望むところ……!」
「芦戸やれーー! 酸で白雪の服溶かしちまええええ!!」

氷華と芦戸が構えている間に、峰田が欲望丸出しで叫んでいると、通路を挟んで隣にいるB組の大半がガンを飛ばしていた。時に美しすぎるものは神聖さを感じさせる。侵しがたいその聖域として白雪氷華を扱っている者がB組には一定数いるのだ。蛙吹が舌で峰田を制裁するとB組は試合に視線を戻すのだった。


「私は酸も凍らせられる……!!」
「ええっ!? うっそそれチートすぎない!?」
「ちょっと冷たいけど我慢してね、凍てつく足枷フリーレン・フェッセルン!!」

身体能力の高い芦戸に対し、氷華はフィールド上を大規模凍結する。足元から速攻で身体全体を凍らせ、氷龍霰華グランディーネを芦戸の前に現した。


「降参、してもらえる?」
「動けないよこれ……こうさーん!」
「芦戸さん降参! 白雪さんの勝利!!」

氷漬けにした芦戸を個性で解放し、出した氷を個性で戻していく。
最後に芦戸と握手をしてB組の観客席に戻った。B組に戻ると次々に賞賛の声がかけられ、塩崎に続き氷華もA組を負かしたことで物間の機嫌がうなぎ登りだった。


常闇と八百万の試合が終わり、続く切島と鉄哲の試合は白熱し、引き分けのちに腕相撲と相成った。個性ダダ被りだが、能力も拮抗しているようで氷華は素直にすごいなと思っていた。
そして第八試合、爆豪VS麗日が始まる――。


「すごい反射神経。爆豪くん見てから動いてる」

氷華は息を吞んだ。爆豪の素晴らしすぎる反射速度もそうだが、麗日が爆破に怯まず突進を続けているから。やけでこんなことはできない、覚悟もなしに突っ込んでいける攻撃ではない。
彼女は確か騎馬戦で緑谷と組んでいて、一瞬対敵したときに空を飛んでいた。サポート科の人のアイテムを使っていたけれど、その他に個性を使っている様子がなかった。考えられる可能性としてはサポート向きの個性を持っているということ。まさか――と氷華がふいに上を見た。
ヤジが飛ぶ、爆豪に対するブーイングが酷くなって、相澤がマイクを奪いとった。


「そんなんじゃない、爆豪くんは……麗日さんは――」
「爆豪の距離ならともかく……客席にいながら気付かず・・・・ブーイングしたプロは恥ずかしいね」
「物間くん……」
「君も気づいただろう? 低姿勢の突進で爆豪の打点を下に集中させ続け……武器を蓄えてた・・・・・・・そして絶え間ない突進と爆煙で視野を狭め、悟らせなかった」

麗日の掛け声と同時に、流星群が降り注ぐ。とんでもない数だった。それだけ彼女が粘った結果だった。
痛かっただろう爆破から、彼女は一歩も引かなかった。それを氷華はすごいと感心した。
けれどそれすら爆豪は正面突破する。大爆発に、再び見えた熱に氷華は憧憬をいだいている。


「気を付けるんだよ、白雪。きっと君は彼と当たる。情けも容赦も油断もないだろう、君も今から覚悟を決めとくんだ」
「うんっ!」

情けも容赦も、油断もなく、きっと彼は自分を挑戦者としてねじ伏せようとしてくるだろう。
氷華はその熱に触れたい。完膚なきまでの1位を叫ぶその魂に触れたい。


鉄哲と切島の腕相撲は長い戦いの末、金属疲労が祟った鉄哲の負けとなった。
だが二人はお互いの健闘を称えあい、新たな友情がそこに生まれたのだった。
続く二回戦初戦、轟対緑谷。


「風だけでさっむ!!」
「わ〜! またきた〜!」
「ほんと轟の試合ご機嫌ね、氷華」
「涼しくて幸せ〜」

轟の大規模氷結で冷え込む空気を一人楽しんでいたが、氷華はしっかり試合もみていた。
何か緑谷が叫んでいる。轟が辛そうだというのがわかった。轟の身体には霜がおりていて、動きがどんどん鈍くなっていく。氷華は冷えれば冷えるほど力を増すスロースターターな自分とは違い、轟は体温調節が必要なのだと理解する。
緑谷の超パワーもすごいけれど、どんどん身を壊していっているのを見ると、デメリットの多い個性だと感じた。
結果、緑谷が何言か叫ぶと轟がを開放し、熱風と冷風とが一瞬で来て大爆発し、緑谷場外で轟が進出した。




続く飯田と塩崎の試合はさすがの塩崎も飯田のレシプロには敵わず、飯田が進出した。
そして第五試合のときと同じく、氷華コールをバッグに常闇と氷華の闘いがはじまる。
氷華は冷静に、黒影を分析していた。


「(おそらくこれは影のモンスターで間違いない。何より騎馬戦で爆豪くんの爆破に対して怯んだ様子をみせてた。それなら――闇属性の弱点は光属性と相場が決まってる!!)」
「白雪……相手にとって不足なし」
『君たちあれね、光の使者と闇の使徒っぽい! 常闇VS白雪!! ファイッ!!』

試合開始と同時に飛躍すると氷華はくるりとフィールドを周った。
黒影ダークシャドウが迎撃してくるのをいなして、常闇に向かって急降下した。


『おーっと白雪! 開幕上昇からの急降下ーー!』
「黒影!!」
「常闇くん──今日は天気がいいね!」
「……は?」

そう氷華が口にした瞬間、もう終わっていた。
大雪原。その中に佇む氷で作られた大きな鏡。その鏡には太陽が反射され、黒影を無力化していた。


『なんだこりゃ! さみぃ!! 銀世界だフォー!! これは黒影も動けない!!』
「なっ!? 黒影!!」
「雪ってね、光を反射する性質があるの。会場全体を雪原に変えたから、黒影はもう使えない」

今度は今までと違って氷龍霰華グランディーネまで白雪に変え、常闇に向けた。
氷華はすでに確信していた。常闇は常に黒影がいて数の利をとれるにも関わらず、黒影にしか戦わせていない。常闇自身はさほど脅威ではないのだと知っていた。


「……あっぱれ、降参だ」
「常闇くん降参! 勝者、白雪さん!!」
「いよっしゃー! 白雪よくやったーー!!」

鉄哲が居ても立っても居られないと真っ先に声を上げ、B組全体が沸き立った。
その後爆豪が切島に勝ち――ベスト4が出揃った。

 


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