爆豪と氷華が付き合ってから随分経つが、氷華の人気は衰えることなく、むしろ新入生など体育祭で見た氷華を目当てに入学してきた猛者もいたりと、氷華は相変わらずモテていた。
今日も呼び出しを食らっている氷華を待っている爆豪に「ねぇねぇ」と芦戸が好奇心たっぷりに話しかけた。


「爆豪さー、白雪呼び出し多いじゃん? ズバリ嫉妬とかしないの?」
「あ? くだらねェこと聞いてんじゃねェ」
「そういわずにさー! 彼氏なら彼女に言い寄られんのやっぱあれじゃない? 爆豪もそうなのかなーって気になるじゃん?」
「私もそれ気になるー! 氷華ちゃんモテモテなんだもん! この間なんか一年のすっごいイケメンくんに告白されてたの見ちゃった!」
「あー! 例の白雪目当てに入学してきた猛者ね! 爆豪もさすがになんか思うとこあるでしょーねぇー!」
「うっせェ……!」

葉隠まで加わり恋バナに飢えた二人に詰め寄られて爆豪はイラっとした。
近くにいた切島と瀬呂、上鳴がうーんと考えるようなそぶりをして、顔を見合わせる。同じ結論だよなぁと表情で確認をし、口を開いた。


「爆豪のさ、嫉妬しようがなくね?」
「えーなんでー? 白雪あんなモテモテじゃん? 可愛いじゃん? 彼氏的にやっぱ心配じゃないの?」
「いやそれさ。白雪が可愛いのなんてわかりきってるし、モテんのも当たり前だし? 今更っていうか、なぁ?」
「そうそう。てか大前提が違うんだよなぁ……嫉妬ってようはとられるかもしれないみたいな不安からくるもんじゃん?」
「爆豪そんな不安と無縁だもんなぁ、自分にちゃんと自信あるし、なにより白雪自身が爆豪以外に興味がなさすぎる! これじゃ嫉妬しようがなくね?」
「じゃあじゃあ! 二人はラブラブってことだ……!」
「きゃー! 素敵ーー!」

三人の見解に芦戸と葉隠は特大の惚気を聞いたようにきゃーっとはしゃいだ。
一方勝手にあれこれネタにされた爆豪の機嫌はよろしくなかった。何勝手に人の話で盛り上がっとんだ、と一言物申したかった。


「おめェら好き勝手言いやがって……」
「いやでも爆豪今のあってたろ? おまえ白雪絡みで嫉妬したことねェじゃん」
「そうそう、だいぶ前から好きだったくせになー」
「白雪の彼女面ばっか言ってたけど、かっちゃんもなかなか彼氏面だったよなぁ」
「もうおまえら黙れや……」

だが正直三人の見解はあっていた。嫉妬する必要がないのだ。それほどまでに氷華は爆豪しかみていなかったし、今だって爆豪しかみていない。好きを隠せない氷華である。彼女面公認以降は隠そうとするのをやめさせてオープンであったし、日々好きが溢れて仕方ないのだからそれをダイレクトに受ける爆豪が嫉妬するなんて事態に陥ることがなかったのだ。
どれだけモブが氷華に好意を向けようが意味がないとわかっているからだ。白雪氷華は爆豪勝己にしか興味がない。疑いようもなく氷華には自分だけだった。嫉妬しないというか嫉妬できないというのが現実であった。

おまけに今までの自分の行いまで持ち出され爆豪は更にイラっとするもそれが事実なだけに言い返せなかった。付き合う前ならいくらでも言い返したが、もう付き合っているのだ。それは今までの認めたくなかった感情も認めてちゃんと氷華に告白をした手前、それを否定することになるため言い返せないのだ。こういうところは本当に誠実であった。


「なるほど爆豪はそうなんだ。逆に白雪はすごい嫉妬するけどねぇ……この前なんて食堂でどっかの女子が爆豪のことちょっとカッコイイって言ってたの聞いただけで拗ねてたもん」
「爆豪くん愛情表現だよ愛情表現! 氷華ちゃんが不安にならないようにしなくちゃ!」
「別に不安になんざさせてねェわ! あいつのあれは雪女の性だっての!」

これだけは聞き捨てならず反論した。実際付き合ってからの爆豪はいい彼氏であったため周りも「そうだなぁ」と納得する。氷華自身も爆豪がとられるなんざ心配は微塵もない。ただやはり自分の男、運命だと認識した人に虫が寄るのが許せないのだ。嫉妬深い雪女の性である。
そうやって騒いでいると氷華が帰ってきて「勝己くんお待たせ。帰ろう?」とぎゅっと抱き着いてきた。爆豪が氷華の鞄を持ってやり、いつものように腕を組んで寮へと帰っていく。
周囲も相変わらずの様子に仲がいいなぁ、ラブラブだなぁと温かい視線を向けていた。







「呼び出されたんだろ、変なことされてねェか」
「何もされてないよ」
「手とか握られてねェの」
「大丈夫、ちゃんと避けたよ」
「やっぱ触られかけてんじゃねェか。でも避けたんはよくやった。学習したなァ氷華チャン」
「勝己くんすごく嫌がってたもん」
「ったりめーだろ。俺の彼女オンナだぞ」

嫉妬はしないが、独占欲は強いのだ。以前咄嗟のことで反応できず手を握りこまれてしまい、爆豪にそれはそれはもう怒られた。「おめェ俺の彼女オンナの自覚足りねェだろォ……簡単に触られてんじゃねェ……!!」とそれはもう機嫌を損ねてしまったのだ。
付き合う前のA組B組対抗戦で飯田の頬に口づけて精気を吸収したときだってものすごい勢いで口元を拭われたのだ。まったくそういう感じじゃない飯田相手、しかも試合に勝つための手段であったそれにさえそうなのだから、氷華に気がある連中から触られるだなんて爆豪的に論外であった。


「えへへ、ちゃんとわかってるよ。勝己くんの彼女だもの」
「わかってんならいい。おめェがモテんのも目立つのも今更だからそこはいいけどよ……ぜってェ俺以外には触られンなよ」
「授業とかヒーロー活動でも?」
「あ? そりゃ別だろ。そればっかりに捕らわれて大怪我なんかしたらそれこそ許さねェ殺す」
「ふふ、はーい」

仲良く寮までの道を二人で歩いていく。周りに人がいないのを確認して爆豪が氷華にキスをした。


「……おまえに触っていいのは俺だけだかンな」
「……うん」

爆豪勝己は嫉妬しない。けれど独占欲は人一倍なのだ。
今日も今日とて氷華の髪を彩る髪飾りに満足して帰路を辿るのだった。

 


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