突然だが氷華の身体はとても冷たい。氷雪の個性持ちというのもあるが第一の理由はおそらく雪女の個性を強く引き継いでいるからだと思われる。その証拠に母は体温がそれはもう低かったが、父であるグレイズは低体温ではあるものの、激的に普通の人間と変わるわけではなかった。よって、これが雪女の特徴として表れているのは明白だった。
そんな氷華だが冬も変わらず爆豪にそれはもうひっついていた。夏は彼女面事変などあってさほど交流できていなかったが、林間合宿以降の公認彼女面を経て元の距離感に戻っていたため、爆豪も冷たいその身体をひっつけてきても、冷たいことに関して苦言を呈すことはなかった。が、冬である。冬なのである。


「おめェ冷てェんだよ! ちったぁ離れろ!!」

そう、氷華にとって最高のパフォーマンスが発揮できる季節でもあるが、疎まれる季節でもあるのだ。
B組は仲がいい。夏はあからさまに重宝され、心配されたが……冬になると「氷華ちょっと抑えて!」「ヒーターが機能しねぇええ」「がんばれヒーターぁあああ」などと阿鼻叫喚なのだ。ついに想い人にも煙たがられるという悲しい事態が起きてしまった。しまったが……氷華はめげなかった。


「やぁ! 爆豪くんなら大丈夫だよ! これくらいなんともないもんっ」
「冷てェって言ったの聞こえなかったかァ!?」
「……爆豪くん、そんなに寒いのに弱かったの……?」
「別に弱くねェわ!!」
「ならいいでしょう? ぜーったい離れないもんっ」
「それとこれとはちげェンだよこのクソがああああ!!」

氷華は意地でも爆豪から離れなかった。寒さを理由に離れてしまえばこれからずっと冬はくっつけないのだ。氷華は非常に強かだった。意地でも離れない様子に爆豪がムキになり暴れまわるが、氷華も負けじと抱き着いて離れなかった。それを近くで見ていた緑谷は終始はらはらしていたし、轟なんかは「おお……」と静かに驚いていた。
これは大規模掃討作戦より少し前の春休みの出来事である。







「あのクソがっ! ちったァ自分の体温考えろやァアア」
「あはは……白雪さんかっちゃんのこと大好きだからなぁ……」
「大好きなら俺の身体のことも考えるべきだろ、ああ゛!?」
「あーうん、そう、なんだけど……たぶん白雪さん冬の自分もかっちゃんに受け入れてほしいんじゃないかな。ほら冬の白雪さんすごいし……」
「んで俺が受け入れてやんなきゃならねェ……! 冬の度にこれとか御免だっての!!」
「そういってやるなよ。爆豪にしかこういうことしねぇんだ。それにおまえだって満更でもねぇだろ。本当に嫌なら爆破の一つでもしてるはずだしな」

痛いところをついた轟に爆豪がブチギレ、緑谷が轟くん……! と頭を抱えた。
爆豪とてこの頃には自分の中の氷華を好ましく思う気持ちを自覚していたし、何度か告白しようかと思ったほどである。別に抱き着いてこられること自体は満更でもない、けれど冷たいのも事実なのであった。

そうして午後のインターンも終えて、帰る途中頭が痛いと爆豪が言い出す。途端に心配げな顔をして顔を覗き込んできた氷華が、何かに気付いたようにそっと身体を離した。それにイラっとした爆豪だったが、ここで寄れと言うのもプライドが邪魔をして言えなかったのだった。







次の日、インターンも休みということで春休みを利用し、学校の雪山訓練所を借りることになった。上鳴が春休みなのに遊べないと騒いだ結果、相澤が提案してくれたのだ。本格的な雪山でのサバイバル訓練である。
山に慣れている爆豪が指揮をとることになったが、途中で発熱し昨日頭が痛いと言っていたのもあって風邪をひいていたのが分かった。
その後何者かに襲われ次々仲間が脱落していく中、同じく発熱していて、そのことに自覚がなかった緑谷と同時にイエティを倒すことに爆豪は成功する。だがそれは怪物でもなんでもなく、パワーローダーが作ったロボットであり、春休みの息抜きに施設開放なんてするはずもなく、春休みの特別授業であったことが判明した。
爆豪と緑谷は保健室へ行くように言われ、体調管理も仕事のうちだと言われるのだった。







「おいおまえ!」
「ひゃっ! ば、爆豪くん……!」

そっこうで風邪を治したあと、爆豪はいつもなら飛んでくるはずの氷華が飛んでこないことに色々察してしまった。頭が痛いと言った時には何かを察した様子であったからこんなことだろうと思っていたのだ。


「散々言っても聞かねェでくっついてきといて、今更距離とるたぁどういう了見だ、ああ゛!?」
「ひゃいっ、ご、ごめんなさい……! まさかほんとに風邪ひいちゃうなんて思ってなくてっ」
「そうじゃねェわ! てめーがくっついてきた程度でこの俺が風邪なんかひくわけねェだろ! 何急に遠慮しとんだって言ってんだ!!」
「だ、だってぇ〜!」
「ばっ泣くなクソ!!」

完全に自分が抱き着きまくったせいで、爆豪が風邪をひいてしまったと思い込んで泣いてしまった氷華に爆豪は「あ゛〜! クソッ!!」と声を荒げ自身の髪を搔きむしる。物凄く嫌だが、これはもうこれしかないと氷華を抱きしめてやった。付き合ってからすると決めていたがもうしょうがない。付き合ってないのに抱きしめるのが本当に嫌だったが背に腹は代えられなかった。


「別に……おめーの身体がどんだけ冷たくたっていいわ。そんくらい屁でもねェ」
「ば、ばくごうくん……」
「むしろ耐性つけれていいンじゃねェか。こうなったら思う存分冷やしまくれや、冬克服したる」
「うっううっ」
「だからもう変な気つかうんじゃねェぞ」
「うっ、うんっ! 爆豪くんだいすき〜っ!」
「わーってる」

こうして変わらずどんなに冷え込む日だって、氷華は気にせず爆豪にくっついて回った。途中やはり風邪をひくこともあったが、そのときは氷華が付きっきりで看病した。そうして徐々に耐性をつけていった爆豪は氷華の身体の冷たさに慣れていったという。それは実に雪女に見初められた男の努力の賜物であった。

 


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