氷華とそういう行為をすることに対して抵抗を感じなくなってきた頃、順調だった氷華の個性制御が行き詰った。3つ目がとれて安定していたのだが、肝心の最後のサポートアイテムを外すのに難航した。それもそのはず、つい最近二人は離婚をしたのだ。3つ外して安定した。4つ目が外れずとももう命の危険まではないだろうと判断が下されたからである。
爆豪と氷華の仲はよかったが、それでも離婚というのは堪えたのか氷華の精神が安定しない日々が続いていた。


「氷華……機嫌直せって」
「……怒ってないよ……」
「怒ってなくても拗ねてんだろ。嫌だったもんな」

腕枕をしてやり、氷華の滑らかな髪を撫でてやっていた。落ち込んだ様子の氷華とは逆に爆豪は穏やかな表情をしていた。意に沿わぬ結婚なんてごめんだったのだ。するならちゃんと自分で決めてやりたかった。その再スタートを切れたことは爆豪の中で大きな意味があった。


「勝己くん……結婚してた時より優しい……なんで?」
「そりゃ……周りの奴らにいいように決められてる状況に腹立ててたからな。今はもうちげェだろ。俺が俺の意志でおまえといて、おまえを抱いてんだ。優しくもなンだろ」
「……結婚してたの嫌だった……?」
「……いやっつーか……まぁ嫌なんだけどよ。あ、おい泣くなよ……あー……泣くなってバカ」

ぽろっと涙をこぼした氷華の涙を唇で慰める。大層落ち込んでいる様子に爆豪はまぁこうなるよなぁとため息が出た。氷華は爆豪に対してそれはもうわがままだが、素直で優しい娘である。爆豪にずっと嫌な思いを強いていたと勘違いした氷華が、更に落ち込んでいるのをしょうがないなと弁明した。


「別におまえと結婚してたこと自体は後悔してねェよ。最初こそなんで俺なんだって思ったけどよ、おまえ俺じゃねぇとダメだろ。そういうのは意外と悪くなかったンだよ」
「……ほんと?」
「ん。じゃねェと付き合ってすらないだろ」
「……そっか……そうだね」

嬉しそうにふわふわ笑う氷華に爆豪もほっとした。そうだおまえはそうやってふわふわ笑ってろって感じである。
冬が迫っていた。氷華の身体の冷たさにもすっかり慣れてきた。氷華を抱き寄せ、口付ける。かわいいとか好きだとか、そういうのは気恥ずかしくてなかなか言えない。それこそ理性もなにもかも焼き切れて、目の前の氷華に夢中になっている時くらいしか言えたもんじゃなかった。その代わりとでもいうように爆豪は実に行動に現すタイプであった。


「氷華。まだシてェ……いいか?」
「うん……」

華奢な氷華の身体に覆いかぶさり、キスをする。吐息が絡まって溶けていく。愛しさが少しずつ積もっていくのを爆豪は感じていた。昨日より今日の方が好きで、きっと明日の方が今日より好きだ。
卒業したら伝えようと思ってることがある。まだ人生丸ごと引き受けるには自分は子供だという自覚がある、けれどいつか……いつかはちゃんと形にしてやろうと爆豪は心に決めていたのだった。








「……離婚するというから心配していたんだが……驚いた。氷華が落ち着いている……」
「おう。俺もこれは意外だったわ。もっと泣きわめいてえらいことなると思ったんだけどよ。あいつ、思ってたよりずっと俺のこと好きだったわ」
「……勝己がそんなことを言うとはな……本当に上手く行っているんだな」
「……まぁ」

落ち込んで拗ねはしたが浮気疑惑のときのようにはならなかった。爆豪はそれを、自分のことが好きだからこそ自分の意見を尊重してくれたのだとちゃんと理解していた。心底嫌で堪らなかったろうに、それでも自分のこだわりを尊重してくれたことについて何も思わない訳がなかった。


「息子扱いするなとは言わないのか」
「……いや息子扱いはまだ早ェ・・・・わ。でも将来的にはそのつもりだ」
「! もう腹を決めたのか。すごいな、私は結婚こそ早くしたが……雪華さんと向き合うまで時間がかかった」
「あんた朴念仁もいいとこだもんな。おおかた嫁さんの悋気に押され気味だったンだろ」
「ああ、雪華さんが怒らない日はなかった……雪女の性だけはどうにもならない。勝己はすごいな。どうか氷華をよろしく頼む」
「……別に……あいつがいいってのは俺も同じだわ」

爆豪はそれだけ言うと、言い逃げするようにキッチンで料理を作っている氷華のところに手伝いに行く。
あの浮気疑惑の折衷案として、爆豪も一緒に料理を作ることにしたのだ。爆豪も元から料理が出来る上に才能マンというだけあって飲み込みも早く、氷華の手伝いから始まり、今はもうこれ作ってほしいな、あれ作っとくからなと分担できていた。
氷華が大根を擦り下ろそうとしたのを爆豪が取り上げ擦っていく。仲睦まじい娘と元義理の息子……現娘の彼氏の並んだ姿に、グレイズは薄い笑みを深めるのだった。

冬が迫っている、そして温かくなったらもう爆豪は卒業する。そしたら伝えようと決めていることがある。きっと氷華のサポートアイテムが全部とれる日も近いだろう。

 


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