妖精のようだと思った
4つ目のサポートアイテムを着けたり外したりを繰り返しながら氷華は過ごしていた。冬になって冷え込んできたのでその分個性の制御が難しくなっているのだ。
爆豪はそれをそばで時に励まし、叱咤し、寄り添い氷華が制御できるように努めていた。
これはそんなある日の出来事。雪がちらつく銀世界の中爆豪は氷華の手を引いて出かけていた。
「寒いか?」
「ううん、最近は寒いって感じなくなってるの。個性になれたからかなぁ?」
「そうだろうな……寒くねェなら別にこのままでもいいか」
「! やだ。繋いで? お願い」
「しょーがねェな」
爆豪が氷華の右手を取って繋ぐと自分のコートのポケットの中に入れた。氷華の体温は低いどころか冷たい域なので意味がないように思えるそれも、爆豪なりの甘やかしたいサインだと氷華も理解していた。
「今日はどこに行くの?」
「色々見て回る。気に入ったやつ選べよ。妥協はすんな」
「? はぁい」
そうして爆豪がまず向かったのは雑貨店だった。可愛いマグカップや小物が並んでいる。爆豪はそこでまず氷華の目に留まった食器類を数点買い、カーテンも気に入ったようだから購入する。
他に目ぼしいものはないか確認して、なかったら次の店へ行き、そこでも氷華が気に入ったものを買い、また次の店へと続けていくのだった。
「勝己くん、こんなに買ってどうするの? 寮で使うの?」
「……これはまだ使わねェ」
不思議そうにする氷華に答えることもなく、爆豪はほら次行くぞと足を運ぶ。次は昼時であったこともありカフェでのランチだった。
レトロな雰囲気の落ち着いた店内で、氷華は小さいグラタンやら焼きたてのパンにサラダがのったワンプレートと紅茶を頼み、爆豪は辛口のカツカレーを頼んでいた。
「美味しい……!」
「……おまえ、何出されても美味そうに食うよなァ」
「だって美味しいんだもの」
「おまえが作った方がうまいだろ」
何気なく当たり前のように口にした爆豪に氷華が嬉しそうに微笑んだ。「好きな人と食べると、なんでも美味しいの」「……そーかよ」酷く照れ臭かった。
氷華の一番好きなものは、爆豪が作ってやったバニラアイスだった。グレイズが贈ってきた高級バニラアイスよりも爆豪のものを選んだあたり、運命補正は効いているだろうがそれでも気分がいいものである。氷華のなんでも美味しいはあながち間違いではないのかもしれない。
「勝己くん……なんで?」
「何でも何も……俺ら付き合ってんだろ。なんもおかしくねェ」
そうして本日の大本命、恋人たちのアクセサリーショップに二人は来ていた。
爆豪が氷華を促して、妥協はすんなと念押しして選ばせようとする。目の前にはペアリングが所狭しと置いてあった。
「でも指輪だよ……? いいの?」
「よくねェンなら連れてきてねェよ。いいから好きなの選べ、買ってやる」
「か、かつきくん……」
「!? こんなことでも泣くンかよおまえは……! ったくしょうがねーなァ」
「こんなことじゃないよっ……だって、指輪だもの……特別なものでしょう……っ?」
「…………悪かったな。もっと早く連れてきてやればよかったわ。俺だっておまえのことはそれなりに真剣に考えとる。伝わったろ……?」
「うん……うんっ!」
抱き着いてきた氷華を抱きしめてやり、頭を撫でて慰める。考えている、ちゃんと。これからのことを現実的に考え、向き合い、そして形にしようとしていた。
ぐすぐす涙声を上げる氷華が落ち着くのを待ち、それからどれにするか気が済むまで悩むのを待ってやり、爆豪は時に意見を聞かれ答えながら氷華が決めるのを待った。
「……これがいいな」
「……誕生石入れる感じのやつか。いいンじゃねェの」
「私の方に勝己くんのやつ入れたいな。勝己くんのは私の入れてくれる?」
「じゃおまえダイヤモンドな」
「勝己くんはガーネットね。ふふ、勝己くん目が赤いから似合うと思う」
「おめーも……妖精みてーだからダイヤ似合うんじゃね」
思わぬものを聞いたと驚いた氷華に、爆豪が「俺だって褒めるわ」と照れくさそうにそっぽを向いて口にした。氷華が頬を染めて微笑むから、爆豪だって素直になるしかないのだ。
可愛いと思ってる、いつだって。こんな日くらいは素直になってもいいだろうと思えるくらいには。
「勝己くんありがとう、一生大事にするね」
「……おう」
氷華があまりに幸せそうにふわふわするものだから、つい指輪なんざまだ贈る予定あるわと喉元まででかかったのを必死で飲み込んだ。それはまだ言わなくたっていいだろう。
今はただ、自分の身の丈にあった自分なりの愛を氷華に少しずつ届けていこうと思う。いつか最高の形でちゃんと幸せにしてやるために。
雪が舞っていた。それが氷華にとても似合っていて……やっぱり妖精のようだとそう思ったのだった。
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