爆豪は吸血鬼協会に所属する腕利きの狩人ハンターだった。まだ14歳という若すぎる年齢でありながら並みいる大人たちを押しのけてエリート街道を突き進んでいた。
狩人たちの多くは吸血鬼に恨みを持っていたり、恨みとなりえる事情を抱えている者たちである。家族や恋人、友人を吸血鬼に弄ばれただとか、殺されただとか。そんな中爆豪は単純に人外である吸血鬼のそのぶっ殺し甲斐のみを理由に在籍したいたのだった。

爆豪は別に吸血鬼にこれといった恨みはない。まぁ、依頼を受ける以上は相手にそれなり以上の理由があるし、爆豪的にも論外だ、アウトだ、死ねクソといったものではあるけれど。別に全部が全部そうではないことも理解している。人間だってそうだ。良い奴もいれば悪い奴もいる。良い奴代表のような友人を持っているからなおさらそう思う。狩人の中にいる奴等も悪い奴結構いんなって。


「おーおー……こりゃまた派手に盗ってんなァ。バレねぇわけねぇだろクソがっ!」
「ああ、よりによって対純血用だ。吸血鬼もバカではないが……これが未覚醒の子供に使われたなら大変なことになる。お姫様が危ない」
「てかもうちょい管理態勢見直せや! いくらなんでも簡単に持ち出されすぎだろ!!」
「……今回の件、幹部が関わっている。でなければここまで派手に持ち出せまい」
「そりゃそうだろうな。そうと決まればはよ行くぞ」

師であるベストジーニストこと袴田維と持ち出されすっからかんになった対純血用の武器を確認し、爆豪は駆け出した。
少し前に純血王家白雪の当主、通称グレイズが玄関を吹き飛ばしながらそのままの勢いで会長の胸倉を掴み、娘の所在を問いただしたのだった。グレイズのあんな顔は初めて見た。いつも氷のように無表情で澄ましているのに、瞳孔はかっぴらき、鋭い牙をむき出しにして吐かなければ今すぐ食い殺すぞといった感じであった。

会長である根津は落ち着くよう呼びかけ、現状把握に努めた。
グレイズの話では留守中に屋敷内に狩人多数が侵入した形跡があり、娘が消えたとのこと。その娘に武具を使われた可能性が高く、それらを持ち出せるのは協会の者だけだと飛んできたようだった。
すぐに武具の在庫の確認がされ、グレイズの言っていることは本当だと理解すると緊張が走った。

これは依頼だった。純血王家白雪の当主、グレイズからの何としてでも娘を奪還せよとの依頼である。それだけを依頼するとグレイズはまたしても文字通り飛んで行ったが、実に奪還できなければお前らの命はないと言わんばかりのものであった。

そうして狩人総動員で白雪のお姫様の捜索が始まった。そしてまぁ、ビンゴをあてたのが爆豪だったわけである。







「えらく楽しそうなことしてンなぁ。多勢に無勢で寄ってたかって虐めるのは楽しかったかよ? 雑魚が!」

予想より早すぎると狼狽える誘拐犯たちを爆破で黙らせていく。爆豪の武器は薄手のグローブである。そこから爆破を繰り出し、爆豪自身のセンスによる圧倒的爆発を生み出し蹴散らしていく。
氷華は霞む視界の中で眩しく輝くその熱に何かを感じていた。

子供と言えど腕利きの狩人である。吸血鬼として狩人を恐れる心と、一気に戦況を変えたそれを危ぶんだグロリアがこのままでは終わらせないという執念が氷華に牙をむいた。


「せめて、こいつだけでもっ! 殺して――」
「誰が動いていいっつったよオバサン!!」
「誰がオバサンです――がはっ!!」
「どっからどうみてもババアだろ。ったく、おいおまえ生きてるか」

爆豪の母親は何がどうしてかとても若々しかったので爆豪からしてグロリアはオバサンだった。事実を言っただけである。それに吸血鬼は大体不老不死かそれに近い生き物なので実年齢聞いたらびっくりすることばかりである。
辺りを蹴散らしてもう動いている奴がいないとわかると爆豪は氷華に話しかけた。外傷こそないが明らかに衰弱している。けれどかすかに上下する胸に生存を確認した。


「アンタ、グレイズの娘だな」
「……おとう……さま……いる、の……?」
「呼んでっからすぐ来る。これ外すぞ、痛くても我慢しろよ」

氷華を拘束している武具に手をかけた。対純血製のそれは人間の爆豪にはなんてことないものだが純血の氷華には辛いものであった。悲鳴を上げる氷華に「我慢しろ」とだけ言って外した。
大分衰弱している様子にこれ血飲ませないとやばいかもなと考えるが、人間の直接的な血の味を覚えてしまったらタブレットが受け付けなくなり、結果血を求め人間を襲ってしまうケースも少なくはない。そうなってしまえば今度こそ粛清対象……まぁ、王家のお姫様であるからある程度は目を潰られるだろうが、行き過ぎてしまったら粛清しなければならなくなるため、爆豪はそのままにした。

氷華は霞む意識の中、じっと自分を救けてくれたその人を見た。ツンツンとした頭に、赤い瞳。爆発を繰り出すその熱と生き生きとした表情。脳裏に張り付いて離れない。氷華を焦がした熱。なんだか自分はずっと探していた気がする。何かを、誰かを、それはきっと、たぶん――


「わたし……あなたに……あいたかった……」
「は? あ、おいっ」

それだけを口に出すと氷華の意識は落ちてしまうのだった。

 


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