『え、なにこれ……。え!? 白雪まさか爆豪のこと!!?』
『っなわけあるか! これはおそらくえーー白雪にも考えがあってだな!!?』
「爆豪の野郎うらやましすぎんぞおおおお!! オイラとかわってくれええええ!!」
「氷華、さすがに大胆すぎぃ……!!」
「ああ俺らのアイドルがああああ!! 氷華ちゃーーーんっ」
「爆豪まじふざけんな!! このヘドロ野郎おおおお!!」

まさに阿鼻叫喚。男たちの爆豪への嫉妬と羨望と憎悪、女たちの好奇の視線。それらすべてが爆豪に怒りの感情を腹の底から湧き出させた。爆豪は怒っていたそれはもうメロスばりに怒っていた。
その怒りのまま、この事態を招いた氷華の背にありったけ爆破という形でぶつける。相澤が静かに「相手が悪かったな」とコメントした。


「〜〜〜〜っ!!!」
「なんっっっだ今の!!? あ゛!? くそっっっ!!」

爆豪の身体が震えている。さっきのは怒りの会心の一撃だった。氷華は華奢な身体をさらに小さくして蹲り、痛みに瞳を潤ませている。
一般的な感性を持っていれば可憐で可哀そうな様子も、爆豪から見れば、この好機に爆破が思うように出せないことにただただ苛ついた。
それと同時に先ほどの理解不能に見えたあの狂った行いもなるほど理解した。だからといって納得はしないが。


「なんで……爆破、できるの……?」
「鍛え方が違うんだよ鍛え方が!! 俺ぁ氷点下の中だって動けんだ!! おめぇの個性なんてなんともねぇ!!」
「めちゃくちゃだわ……雪山登山でも趣味にしてるの……?」

氷華もまさか当たっているとは思わなかったがその通りだった。先ほどの口づけで身体の芯から冷え込ませたそれは雪山に似ている。登山を趣味にし、雪山も好む爆豪には耐性――といっても一番は怒りが原動力である――があったのだ。


「こんなんじゃ俺は倒せねぇぞ!! 全力でこいや!!!」

熱が――伝導する。





「ふん……母親から継いだ個性はまだ使いこなせていないのか」

炎天が見ていた。氷華越しに何かを見るように。少しの落胆をのせてそれは静かに見守っていた。





真っすぐに氷華を射抜く赤の三白眼。燃える闘志に氷華は手を伸ばした。
氷華の雪の結晶が瞬く瞳は死んでいない。むしろ一層煌めいて、その奥には闘志が揺らめいていた。


「ハッ、やっと覚悟決めたか!! おまえの全力をもって俺にぶつかってこい!! 俺ぁそれをねじ伏せる!! 完膚なきまでの1位を俺がとるんだよ!!!」
「私は……そんなあなたに挑戦するっ!!」

今までと格段に威力が違う氷雪と爆炎が繰り出される。大爆発が起き、爆煙の中を氷龍霰華グランディーネが二頭泳いでいく。
爆豪は縦横無尽に動き回り、氷華が冷やした身体もなんのその、その分をとっくに取り戻し、さらにいい動きで爆破していく。後ろから奇襲した氷華にも見てからすぐ対応し、その顔はとても楽しそうだった。爆豪はこの戦いを、心から楽しんでいた。


「(やっとだ、やっと……! こいつの全力を見られる!!)ああ……楽しいなぁ!! 白雪!!!」
「!! ええ、とっても!!!」

更に冷え込んでいく。雪が降り注ぐ。晴れ渡る日差しの中、そこだけが妙に幻想的で彼らはもうお互いしか見えていなかった。
膨れ上がる空気を感じる。お互い次に何を口にするのかわかっていた気がする。


「いくぞ白雪!! 死ぬんじゃねェぞ!!!」
「私も……爆豪くんに勝つ……!!!」

にやりと不敵に笑う、ちっとも油断してくれないあなたが好き、と氷華は思った。
どうかこの一瞬が、永遠でありますようにと願うほどに。今の自分の全てを、氷華は最も威力の高い磨き上げた自分だけの技をもってぶつけた。


氷冠白雪華アイシクル・グレイシャー!!!!」
榴弾砲着弾ハウザーインパクト!!!!」

お互いの全力をぶつけたそれは今までと非にならない大爆発を起こし、長い間黒煙が場を支配した。まったく何も見えない状況に観客たちは冷える空気の中安否を気にした。
ようやく黒煙が収まったころ、会場内には意識はありつつも、倒れこんだ爆豪がおり、離れたところに氷華が座り込んでいた。――場外だった。


「白雪さん場外! よって勝者爆豪くん!! 決勝進出!!」

ぽかんと口を開けて、全身傷だらけでボロボロの氷華はそれを聞くと、瞳をみるみる潤ませ泣き出してしまった。
おろっと会場が狼狽える中、響いたグレイズ――父親――の拍手に導かれるように拍手の音が大きくなっていく。


『白雪よくやった……! おまえはっぐすっ、本当にぃっよく、やったぞ……! 俺はおまえをぉっ、誇りにっ思う……!!』
「よっ! B組の誇りーーーー!!」
「白雪ーー! すごかったぞーー!」
「氷華がんばったー! ナイスファイト―!!」
「氷華ちゃん最高だーーーー! キンキンに冷えたいい試合だったーー!」
「オイラのことも凍らしてくれーーー!」

男泣きをするブラドキングを始めにB組はもちろん観客たちから次々に称賛が届く。勝ったはずの爆豪は、開始のときと同じく、どこかうんざりした様子で静かに立ち上がると、氷華のもとへ足を向けた。


「うっ、ひっく……ぐすっ」
「おい……」
「やだっ終わりたくないよっ……まだ、まだあなたとっ、戦ってっひっく、たいっ」

えーーんっとまた泣き出す氷華を爆豪は静かに見下ろすと、息を吸い、静かに吐き出した。


観客ザコのいねぇとこでやんぞ」
「ひっく、え……?」
「別に、これで終わりじゃねぇだろ。個人的に付き合えや」

決して愛想などなかったけれど、その一言で氷華は天にも昇る心地だった。
まだ次がある、その熱に触れられる。私に火をつけた熱がそばにある。


「付き合う〜〜〜!!!」
「ばっか!! 抱き着くな!! 声がでけぇ!! 誤解される言い方すンじゃねぇ!!」

氷華が感極まって爆豪に抱き着いたのと、だいぶ端折った返答をしたせいで会場がまたどよめき、また阿鼻叫喚がやってくる。爆豪にブーイングが飛び、「誤解だわ!! おめぇもなんか言え白雪こら!! つかいつまで抱き着いとんだ離れろ!!」と叫ぶも、夢見心地の氷華は使い物にならず、にこにこふわふわしているだけであったことを記述しておく。

――白雪氷華は爆豪勝己の熱に焦がれている。

 


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