氷華と爆豪が感動の再会を果たしてからというものの、些か特殊な婚約者と言うこともあり、爆豪の両親は氷華たちが望むならと白雪の家で爆豪を見ることを許してくれた。
けれど、氷華と爆豪の選択は週に二度のお泊りを白雪家でするというものであった。氷華と爆豪は爆豪の前の生から約束した仲ではあるが、彼らにとっても爆豪が息子であるように、爆豪にとっても親であることに変わりはないのだ。
結婚をしたらずっとこちらで暮らすのである。ただでさえ爆豪は一般的な吸血鬼よりも早く結婚することになるだろう。親子として密に接することが出来るのは今くらいのものであるから、こういった選択に落ち着いたのであった。

種族も身分も爆豪が解決してくれたので、これといった障害がないように思われたが……やはり、何もなしなんて都合のいい事があるわけがない。ある問題において、爆豪は非常に不服であった。







「勝己くんかわいい……もうずっとぎゅってしてたいくらい」
「……」
「子どもだからかな? 前は甘いのほんと嫌いだったのに、今はプリンとか食べてるもんね?」
「むぐ……おめぇが食べさせるからだろ」
「ふふ、一生懸命食べてるのかわいくてつい。はい、あーん」
「あー……(クソがっ)」

再会してからというものの、爆豪は氷華に過度な甘やかしならぬ、子ども扱いを受けていた。抱っこしたり頭を撫でたり、食べ物を食べさせたりとそれはもうかわいいかわいいと可愛がられた。どこからどう見ても子ども扱いである。
けれど、氷華が自分のことを好きだということまで疑いはしない。疑いはしないが……男として見られていないと感じるには十分だった。
確かに子どものなりである。前世の記憶がばっちしあるだけの吸血鬼の子どもである。人間だった頃の数倍早くも生きているが、吸血鬼としてはまだまだ子どもであるからして、氷華が子ども扱いするのもある程度は仕方ないとは思っている。

それになにより――。


「子どもって本当に可愛いのね。ものすごく幸せな気持ちになるわ……」
「……そーかよ」
「ええ、とっても」

氷華の美貌が一層華やぐ。
ずっと氷華は子どもを望んでいた。結局人間の爆豪とは作らないという選択を貫き通したけれど、子どもというものに強い憧れがあったのはよく理解していた。
爆豪は生まれなおしてからも前世と同じ容姿であるし、子どもの爆豪の姿というのは自分が望んだ愛する人との子どもという錯覚を覚えているのかもしれない。
爆豪も吸血鬼の年月の感じ方というものを身をもって経験している今、自分と一緒に過ごした時間と、いなくなってからの時間を思うと責めきれないのであった。正直吸血鬼舐めてたわ。

であるからして、ある程度は氷華のままごとに付き合ってやろうとは思う。そう、ある程度は。
もちろん、自分が婚約者であるというのも本当の意味できっちり認識してもらう算段であった。


「氷華」
「なぁに? 勝己くん」
「腹減った」
「あら、ごめんなさい。私ったらつい……はい、好きなだけ飲んでいいからね」
「ん」

氷華に胸元をはだけさせ、肩にかかった髪をどかす。晒された首筋に牙を立てた。
反射的に短く零れた氷華の声に、そうだそれでいい、おまえはそうやって鳴いてろと思う。吸血鬼が血を与えるというには大きな意味がある。身分が高ければ高いほど、それを許すというには親密な仲であるという意味があった。

血の何が美味いンだかと人間の頃は思っていたが、吸血鬼になって氷華の血を飲むようになると、ああ、これは特別だわと嫌でも実感した。
それと同時に思い出す。初めて氷華に出会ったとき、衰弱した氷華は父であるグレイズの他に轟焦凍にも血を与えられていたと。従姉弟思いが過ぎる。
氷華は与えられたことはあっても、与えたことはない箱入りだったため、幸い今のところ爆豪しかその味を知らないわけだが、独占欲の強い爆豪は当然氷華に「俺以外に血なんかやンなよ」と約束させたのであった。


「ぷはっ……」
「もういいの……?」
「もうって……俺結構飲んだぞ」
「そう? でももっと飲んだ方がいいんじゃないかな? 私が子どもの時はお父様とお母様の血を結構もらってたの。吸血鬼って血が何よりの栄養なんだよ?」
「……母乳みてぇなもんか」
「たぶん? 母乳というか、ミルクも結構大事だけど……ひゃんっ」

そんな話をしたからか、ただでさえ気になってしょうがなかったはだけた胸元が余計気になってしまって、思わず触ってしまった。結構がっつりいったが問題ないだろう、婚約者なのだから。

むにゅむにゅと揉んでは胸元に唇を寄せた。人間だった時に散々堪能させてもらったが、なんかまたデカくなってやがる。子どもの手には大きすぎるのがまたイラっとした。どうせ今の俺は子どもだっつーの。


「か、勝己くんどうしたの……?」
「揉んでる」
「もっ……うん、それはわかるけどぉ」
「いいだろ別に。たまには触りてぇ」
「勝己くん……」

好きな女の身体に触りたい、という爆豪の気持ちは、氷華には些か違った意味で受け取られてしまった。
氷華が更に服をはだけさせていくのを、えらくサービスいいじゃねェか、ちったぁ伝わったか? と思っていたら……なんてことはなかった。


「私、母乳は出ないけど……それっぽい気分は味あわせてあげられるかも!」
「……は?」
「ごめんね、勝己くん。勝己くんも今は子どもだもんね。お母さんに甘えたくなったりするよね……」
「まてまてまて」
「でも今世のお母様とはいえ、私に気を遣って甘えてないんでしょう……? 私っ、お義母様の分も勝己くんを甘やかせるようにがんばるねっ」
「いやいらん努力だわ!!!」

心からの叫びだったが、氷華にはそれも素直に甘えられない爆豪らしいと受け取られてしまい、抵抗するも所詮子どもである。氷華にあっさり捕まり、それはもう存分に甘やかされるのであった。もう爆豪は遠い目をしていた。

その後もこんなやりとりが長く続き、爆豪は触りたいが、触るとそれはそれでめんどくさい。天国と地獄の狭間でしばし振り回されるのであった。

まぁ、そんなもの……あの頃と比べたら受難とも呼べないけれど。

 


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