爆豪との試合を終えた氷華はリカバリーガールに治癒してもらい、決勝戦を観戦するために会場に戻ってきていた。
B組の面々が一塊になって何やら話し込んでいたので声をかけると、数名がびくりと反応する。


「どうかしたの?」
「いや、大したことじゃないんだよ。ほら次決勝だろ? 轟と爆豪どっちが勝つかなーってみんなで予想してたんだ」
「そうそう、氷華はどっちだと思う? やっぱ爆豪? 氷華のお気に入りだもんね」
「うちの白雪に勝ったんだ、爆豪には勝ってもらわないとなー」

そのままの流れで席に着くみんなに、氷華は何か違和感を感じつつも流されるまま着席する。
隣に座る取蔭がリカバリーガールのおかげですっかり綺麗に治った顔を満足げに撫でる。斜め上に座る物間が、何か飲み込もうとしたのを失敗したような苦い顔のまま話し出した。


「でも白雪、いくら君の個性が周りを巻き込むタイプだからってアレ・・はやりすぎだったんじゃない?」
「ごめんなさい。でも、私も爆豪くんの全力に応えたいって思ったの」
「いやそうじゃない。白雪それはいいんだ、むしろよくやったとさえ僕は思う」

てっきり最後の大技のことを言われていると思っていた氷華は、不思議そうに瞳を瞬いた。よくわかっていない氷華とは逆に、また始まったよとうんざりした顔で拳藤と取蔭は顔を見合わせる。


「僕は……その、いくら最小限の被害で勝つためだっていっても……なにも、キ……キスまでしなくていいんじゃないかと……」

色白の肌をほんのり赤く染め、不貞腐れ顔でそっぽを向く物間に氷華はさらに瞳を瞬かせた。
それと同時に氷華自身も極度に緊張していた試合が終わった今、冷静になる部分もあり自らがした行動の意味をここで初めて振り返ることになる。


「え……あ……」
「白雪……まさか今理解したのか? さすがに君、それは――ぐふっ」
「もう物間ばか……!」
「ちょっと氷華ー!? 大丈夫ー!?」

白雪のような肌を真っ赤に染めた氷華を見て、物間が面白くなさそうに追求しようとしたのを拳藤が手刀で強制終了させた。あまりにも赤くなるものだから取蔭が心配して氷華の肩を揺さぶった。
やっと目の焦点があってきた氷華は大きな瞳をうるっとさせて、やっとの思いで一言。


「わ、たし……誰にでもはしないもの……!」

氷華の小さな告白に取蔭が「それってやっぱり……!」と黄色い悲鳴を上げる。物間を手刀で落とした拳藤は物間が聞いていなくてよかったと冷や汗をかいた。
うっかり近くの席で聞こえてしまったB組常識人四天王は、我らがマドンナがよりによって問題児中の問題児である爆豪の魔の手に落ちたことを嘆いた。あと物間ほどではないがいいな、と思っていた憧れの可愛い女の子に好きな人ができてしまったことに、失恋に似た胸の痛みを感じた。やはり泣いた。

そんなこんなで、爆豪と氷華が大破させたフィールドも元通りになり、轟と爆豪の決勝戦が始まろうとしていた。





『雄英高体育祭もいよいよラストバトル! 一年の頂点がこの一戦で決まるー!! いわゆる決勝戦! ヒーロー科轟焦凍VSヒーロー科爆豪勝己!! 今スタート!!』

初っ端ぶっ放した轟の氷に氷華が癒される顔をするも、そこからセンスが光る身のこなしをみせる爆豪に夢中になっている様子に「こりゃ相当お熱だわ」と取蔭が微笑ましそうに零す。
けれど緑谷戦以外で一向に左を使わない轟に対し、爆豪の魂の叫びが会場に響くと氷華もぎゅうっと両手を握り合わせ祈るように二人を見ていた。


『白雪戦で見せた大技炸裂ーーー!! 轟は緑谷戦での超爆風を撃たなかったようだが果たして……』

結局轟は一瞬炎を見せるも、何かを考えるように消してしまい、爆豪の大技を食らったあと場外になった。こんな形の優勝を爆豪が認めるはずもなく、絶望したかのように轟に掴みかかり、ミッドナイトに眠らされた爆豪の姿を見て氷華は静かに胸を痛めた。





「それではこれより!! 表彰式に移ります! 3位には白雪さんともう一人飯田くんがいるんだけど、ちょっとお家の事情で早退になっちゃったのでご了承くださいな」

3位の表彰台に乗りながら氷華は隣の1位の表彰台を見た。
そこにはものすごく厳重に拘束され、必死にもがいて唸っている爆豪の姿があった。氷華はそれを痛ましそうに見ていた。
オールマイトが派手に登場し、ミッドナイトと被りつつなんともしまらない授与式が始まった。


「白雪少女、おめでとう! どれも素晴らしい試合だった。父君の技だけでなく自分の技をもう生み出しものにしている。君は努力家だな。それに常に観客の体調を気にしていた、本当に優しい子だ」
「もったいないお言葉です……! これからも精進して参ります」
「君はいいヒーローになれる。期待しているよ」

オールマイトからメダルをかけてもらい、最後にハグをした。大きい背中だ。NO.1ヒーローはこんなにも大きい。
轟への授与も終わり、最後にオールマイトが爆豪のマスクを外すと、爆豪がものすごい顔で唸りを上げた。


「オールマイトォこんな1番何の価値もねぇんだよ。世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!」

また熱を感じる。氷華はそれはもうキラキラした顔で爆豪を見ていた。優柔不断の気があった氷華にとって爆豪の価値観はいつもはっとさせられる。オールマイトが言ったように、不変の絶対評価を持っている爆豪は氷華にはあまりにも眩しかったのだ。


「皆さんご唱和ください!! せーの!!」
「プルス……」
「プルスウル……」
「プル……」
「おつかれさまでした!!!」
「そこはプスルウルトラでしょオールマイト!!」

なんとも締まらないまま雄英体育祭は終わった。





「おい白雪!! 連絡先教えろ!! またやんぞ! 今度も俺が勝つけどなぁ!!!」
「――うん!!」

焦がした熱の残り火をそえて。

 


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