よくわかんないけど怒られた
「単純なんだよA組」
「んだてめェコラ返せ殺すぞ!!」
「ミッドナイトが第一種目≠ニ言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない? だからおおよその目安を仮定しその順位以下にならないよう予選を走ってさ。だいたい40位以内。後方からライバルになる者たちの個性≠竦ォ格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」
「組ぐるみか……!」
「まあ全員の総意ってわけじゃないけど良い案だろ? 人参ぶら下げた馬みたいに仮初の頂点を狙うよりさ」
「? どういうこと? イブよくわかんない」
爆豪の頭に巻いたハチマキをさらっと獲られた。金髪碧眼の爽やかな容姿をした人だった。その人が何だか賢そうなことを言っている。イブのクリーム脳では理解できず、助けを求めるように爆豪たちを見渡したが当然爆豪は答えてくれなかったし、いつもは優しい切島もそれどころではなさそうだった。冷静な瀬呂も焦っている。イブだけがハチマキを奪われた意味を認識していなかった。
そんなイブを金髪碧眼の男の子はじっと見ていた。
「……君は知性が感じられない……まるで子供だ。一体どうしたらそんな風に育つのか、親の顔が見てみたいな……」
「おいお前! その言い草はねぇだろ!!」
「事実だろ。せっかくの希少個性も何もかもが台無しだ」
「あの人なんだか怒ってるみたい……イブなにかしちゃったのかな……?」
「いやぁ……あれは――」
「おい物間、変に絡んでないでさっさと行くぞ。虐めてるみてぇじゃん」
吐き捨てるように顔を歪めた男の子は物間というらしい。なんだかよくわからないけど怒られたような気分になったイブが声を震わせた。もしかして障害物競争のとき怪我してたのにイブが気づかずに放置してしまったのかなとか考えていたが、瀬呂の勘は別のものを感じていたのだった。
明らかにしゅん、となったイブを可哀そうに思ったのか物間の騎馬である黒髪の男の子が先を促した。
「あとついでに君、有名人だよね? 「ヘドロ事件」の被害者! 今度参考に聞かせてよ。年に一度敵に襲われる気持ちってのをさ」
「切島……予定変更だ。デクの前にこいつら全員殺そう……!!」
「あんま煽んなよ物間! 同じ土俵だぞ、それ」
「ああそうだね。ヒーローらしくないし……よく聞くもんね。恨みを買ってしまったヒーローが敵に仕返しされるって話」
「おっおっおおォォ……」
「か、かっちゃん……? どっか悪い? イブ治すよ……!」
「爆豪落ち着け冷静になんねえとP取り返せねえぞ!!」
「おォオオ……っし進め切島……!! 俺は今……すこぶる冷静だ……!!!」
「頼むぞマジで」
イブが心配して爆豪の治癒をしていた。意外とこれが効く。第一種目で酷使した汗腺が治っていったのだ。それにイブのサービス精神が効いたのかなんなのか、疲労も回復していく。これだけでもう十分役に立っていた。
その光景をまたしてもじっと見ていた物間に瀬呂はやっぱこれあれじゃね? と首をひねりながら思考を巡らせるのだった。
「ははぁ……へえ! すごい! 良い個性≠セね!」
「俺の……!!」
「かっちゃああああんっ! 爆発した! 爆発したよ痛かったよねぇええ!」
「爆豪おめーもダダ被りか!!」
「くそが!!! !?」
「僕の方が良いけどさ」
「んなああー! 俺の!? また被っ……」
「違ぇこいつ……コピーしやがった」
「正解! まぁバカでもわかるよね」
イブはバカをも超えるクリーム脳なのでわからなかった。わからなかったけどすごく爆破が見てて痛そうだったので全力で治していた。何振りかまわず全力で治しすぎて完治してるにも関わらず個性を使っていたからか、そこから横入りしてきた個性、ボンドに固まったはずの切島の足が固まってなかった。どういう原理かわからなかったが柔らかいままだったのだ。
「! これ……おまえの光が作用したんか……!」
「え、なに? イブなんかした? よくわかんない……」
「お手柄だぞイブ! おまえほんとなんつーか豪運だよな!?」
「う? ? まってなんか羽がきもちわるい……」
「あ? うお!! イブの羽にボンドついてる!! これじゃ飛べねぇな可哀そうに……!」
「えええ!!? イブの……おねーちゃんが褒めてくれた羽があああ! うわーーんっ」
「泣くなうっせぇ!! そんなことどうでもいいだろーが!!」
「そんなことじゃないよおおおおっうわーーんっ」
「ああっイブ泣くな! あとでリカバリーガールになんとかしてもらおうな?」
クリーム脳だが身だしなみにはものすごく気を付けているのだ。何せイブの火伊那おねーちゃんはとってもおしゃれさんだったので。当然イブを溺愛してくれていたおねーちゃんはイブを着飾ることに余念がなかった。中でもとても褒めてくれたイブの真っ白な羽は自慢であったのだ。
わんわん泣くイブに物間がまたしても呆れた視線を向けてきた。