職場体験の後


「アッハッハッハッマジか!! マジか爆豪!!」
「かっちゃんなんか変だね!」
「うっせぇ! 笑うな! クセついちまって洗っても直んねえんだ。おい笑うなブッ殺すぞ」
「やってみろよ8:2ハチニイ坊や!! アッハハハハハハ」
「殺すっ!!」
「わーっ! 爆発したら髪も戻ったよ! かっちゃんすごいねぇ!」

ベストジーニストのところで髪のクセをつけられて不機嫌マックスだった爆豪だったが、瀬呂と切島に笑われてキレると元に戻った。どういう原理かはわからないが、一瞬のビフォーアフターにイブは大興奮だった。


「へえーヴィラン退治までやったんだ! うらやましいなぁ!」
「避難誘導とか後方支援で実際交戦はしなかったけどね」
「それでもすごいよー!」
「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」
「それすごくない!!?」
「イブのとこはどうだったの? ホークスのとこ行ったんでしょ?」
「イブはねー、ホークスと追いかけっこばっかりしてたよ。とこやみくんとだーくしゃどうがいなかったらイブがんばれなかったや」
「追いかけっこかぁ……ホークス速いすぎるっていうし大変だったろうね」
「すっかり常闇とも職場体験終わってから仲良しだもんね! いいきっかけじゃない? それもさ!」

職場体験が終わってすぐ見られるようになった黒影とイブがじゃれ合うのを見守る常闇という仲良しな様子にほっこりしつつ、続いてお茶子ちゃんはどうだったのと麗日に尋ねる。とても有意義だったと答える麗日は何かに目覚めていた。驚きの変化である。拳のキレといい顔つきといいいい職場体験ができたようで何よりである。
麗日の変化に驚いた上鳴が峰田に話しかけるが、峰田もまた女ってのはもともと悪魔のような本性を隠し持っているのだとこちらも変化があった。職場体験先のMt.レディのところで何かがあったようである。


「俺は割とチヤホヤされて楽しかったけどなー。ま、一番変化というか大変だったのは……お前ら三人だな!」
「そうそうヒーロー殺し!!」
「……心配しましたわ」
「命あってなによりだぜマジでさ」
「もうみんな怪我はだいじょうぶ? イブ治す?」
「もう大丈夫だよ。ありがとうイブちゃん」

ひょこっと近くに顔を出したイブに三人そろって大丈夫と伝える。
ヒーロー殺しステインの件はニュースで大きく取り上げられ、なんと彼は連合とも繋がりがあったらしい。もしかしたらUSJに一緒に襲撃に来たのかもしれないと思うと恐ろしかったが、上鳴が動画を見てかっこいいと思ったと話すと緑谷が焦ったように名前を呼んで咎めた。上鳴も飯田の兄の件に気付き謝るも、飯田もしっかりと前を向いていた。


「確かに信念の男ではあった……クールだと思う人がいるのもわかる。ただ奴は信念の果てに粛清≠ニいう手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ。俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!! 改めてヒーローの道を俺は歩む!!!」
「飯田くん……!」
「なんかすごーい! かっこいいー!」

ぱちぱちと小さく拍手すると飯田がイブに向き直った。ずっと自分を心配してくれていた友である。路地裏の事件を経て飯田は緑谷と轟と話をして、イブの力を頼ることは悪いことではないと諭された。友達を頼るのは悪いことではないのだ。


「イブくん。ずっと心配をかけてすまない。図々しい頼みではあるが、どうか君の力を貸してくれないか」
「イブにできることならなんでも! ふふっ、うれしーなー! イブずっといーだくんに助けてもらうばっかだったからイブがなにかできるのうれしー!」
「イブくん……! ありがとう!!」

そうしてイブが頼まれたお願いは飯田の兄の足が少しでも回復するようにと願うことだった。効果範囲とか未知数であるが、イブは雄英内から原則出ることが出来ない。なので雄英ここから願うことにした。
けれど飯田の大事な大事なお兄さんである。それだけでイブが心から治ってほしいと願うには十分すぎる理由だった。

奇跡は起きる。まったく足の感覚がなかったそれが次第に少しずつ感覚を掴み始め、少しの歩行ができるようになるのはもう少し先の事であった。医者は言う。紛れもなくこれは奇跡だと。それは正しく女神の祝福だった。







職場体験直後と言うことでヒーロー基礎学は遊びも含めた救助訓練レースだった。
初めの組は緑谷、尾白、飯田、芦戸、瀬呂と機動力が高い面々が選ばれた。緑谷が若干不利かと思われたが、予想に反しぴょんぴょんとした動き、そうまるで爆豪のような動きで序盤はトップを独走したものの、足場を踏み外し落下して最下位になるのだった。結果一位は瀬呂だった。

イブも速すぎるホークスをずっと追いかけていたためかスピードが上がっていたことにこのレースで初めて気づいた。それに前より疲れにくくなっている。常闇と黒影の励ましによるプルスウルトラが効いていたようだった。
ぶっちぎちでゴールしたイブにみんなが速くなってる、すごいと驚く中、常闇が当然と言わんばかりの顔をしていた。絆が深い。







「おい緑谷!! やべェことが発覚した!! こっちゃ来い!!」
「ん?」
「見ろよこの穴ショーシャンク!! 恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!! 隣はそうさ! わかるだろう!? 女子更衣室!!」
「峰田くんやめたまえ!! ノゾキは立派なハンザイ行為だ!」
「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ!! 八百万のヤオヨロッパイ!! 芦戸の腰つき!! 葉隠の浮かぶ下着!! イブの……いやあいつにそういうのはだめだ」
「(峰田くんが止まった! いいぞそのまま……)峰田くんもうやめ――」
「だがしかし! オイラは止まらねぇええ! 麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア――あああ!!!!」
「耳郎さんのイヤホンジャック……正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!!」
「ありがと響香ちゃん」
「何て卑劣……! すぐに塞いでしまいましょう!!」
「? なんかたいへんだったねぇ?」
「(ウチだけ何も言われてなかったな)」

一瞬体育祭で改心させられたイブを思い出し浄化されかけた峰田だったが、さすが性欲の権化。結局止まらなかったが為に耳郎のイヤホンジャックの餌食となったのだった。


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