ごーりてききょぎー!


「みんなっ、ぐすっ……おみやげ話たのしみにしてっ……ぐすっ、イブのことわすれないでね……!」
「そんな大げさな……! まっまだわかんないよ。どんでん返しがあるかもしれないよ……!」
「緑谷それ口にしたらなくなるパターンだ……」
「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄! そして俺らは実技クリアならず! これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」
「落ち着けよ長ぇ。わかんねぇのは俺もさ。峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ。とにかく採点基準が明かされてない以上は……」
「同情するならなんかもう色々くれ!!」

イブたちの他にクリアできなかったのは砂藤と切島のチームのみ。そしてミッドナイトに開始早々眠らされた瀬呂の点数が不明であった。
芦戸と上鳴とイブはミラクル運命共同体だがそれはそれとして合宿に行けないのは悲しい。物凄く悲しい。このために随分前からお勉強も頑張っていただけあってイブの悲しみは相当なものだった。ぴぃぴぃ泣くイブを芦戸が抱きしめていた。
そして予冷が鳴り相澤がやってくる。言われた通りに席に着いたが相変わらずめそめそしていた。


「おはよう。今回の期末テストだが……残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は全員行きます」
「「「「「どんでんがえしだあ!!」」」」」
「天廻、座りなさい」
「はーいっ!」

行けないと思っていた合宿に行くことが出来て思わず立ち上がってわーいと万歳をしてしまった。怒られた。


「筆記の方はゼロ。実技で天廻・切島・上鳴・芦戸・砂藤。あと瀬呂が赤点だ」
「わーいっ! イブ筆記クリアー!」
「行っていいんスか俺らぁ!!」
「確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんな……クリア出来ずの人よりハズいぞコレ……」
「今回の試験。我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」
「本気で叩き潰すと仰っていたのは……」
「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」
「ゴーリテキキョギィイー!!」

相澤お得意の合理的虚偽であった。イブはもうこの合理的虚偽を何度吐かれたかわからない。今回も見事嵌ってしまったのだった。何はともあれみんなで林間合宿に行けるとあってテンションは最高潮であった。


「ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。おまえらには別途に補習時間を設けている。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」
「――――!!」

まあそう上手くはいかないものである。イブは一気に表情を無にした。相澤のキツイは冗談ではなく本当の本当にキツイのだ。
でもまぁ、念願の合宿である。行けるだけいいというもの。







その後みんなで買い物に行こうという葉隠の提案があったが、誰が行くかと拒否った爆豪と、見舞いがあるからと断った轟に加え、イブもまた雄英からは原則出られないからと断ったのだった。
青春に重きを置くミッドナイトあたりに頼めばもしかしたら引率してくれるかもしれないが、職場体験の送迎でも大分目を光らせていたし、大型ショッピングモールなんてたくさん人がいるところに行くのも気が引けたのだった。

けれどその後その判断は賢明だったと言わざるを得ない。
緑谷が死柄木弔と接触したのだ。それを受け、ショッピングモールは一時閉鎖、近辺を捜索したが見つからず、緑谷は警察の事情聴取を受けるなど大変だったという。







「……とまあそんなことがあって、敵の動きを警戒し、例年使わせて頂いている合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」
「えーー!!」
「もう親に言っちゃってるよ」
「故にですわね……話が誰にどう伝わっているのか学校が把握できませんもの」
「合宿自体をキャンセルしねえの英断すぎんだろ!」
「てめェ。骨折してでも殺しとけよ」
「ちょっと爆豪。緑谷がどんな状況だったか聞いてなかった!? そもそも公共の場で個性は原則禁止だし」
「知るか。とりあえず骨折れろ」
「かっちゃん……」

そんなこんなで合宿先変更である。誰も知らない合宿先。イブははやくもどんなところなんだろうと楽しみだった。


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