仮免試験!


「降りろ、到着だ。試験会場国立多古場競技場」
「緊張してきたァ」
「多古場でやるんだ」
「試験て何やるんだろう。ハー、仮免取れっかなァ」
「峰田、取れるかじゃない取って来い」
「おっもっモチロンだぜ!!」
「この試験に合格し仮免許を取得できれば、おまえら志望者タマゴは晴れてヒヨッ子……セミプロへと孵化できる。頑張ってこい」

相澤の言葉にみんなヒヨッ子になってやろう、いつもの一発気合入れてこうとプルスウルトラと叫ぼうとすると、大きな声で混じってきた生徒がいた。
同校の生徒に注意され、「どうも大変失礼致しましたァ!!!」と頭から血が出る程地面に突き付けたその人はまるで切島と飯田を足して割ったような人物だった。
東の雄英、西の士傑……雄英と双璧を為す名門校の一年生。雄英が大好きだというその人、夜嵐イナサは昨年度の推薦入試でトップの成績で合格したにもかかわらず入学を辞退したのだという。相澤にして強いと言わしめる人物だった。


「ねぇねぇ血がでてるよ。イブが治してあげるー」
「マジすかあざっス! 君、体育祭で知ってるっス! 天使の個性の! ……あれ!? 羽なくなってる!?」
「あーうん、今はまだ生えてないんだけどね、また生えてくるから大丈夫だよ!」
「それはよかった!」

イブが夜嵐の傷を治癒している間に、相澤の知己であるMs.ジョーク率いる傑物高校の生徒が絡んできていた。
なんだか爽やかな先輩から爆豪と並んでイブも何か言われていたがよく聞いていなかった。治すのに集中していたのである。


「なんか言った? イブちょっと聞いてなかったよ……」
「あはは、お取込み中のところ話しかけてごめんね! 天廻イブさん……君の身には不幸が降りかかったみたいだけど、それを乗り越えてここにいることを俺は尊い志だと評価するよ。頑張ろうね」
「?? とうとい……? こころざし……? うん? がんばろうね?」
「イブそいつと喋んな。思ってもね―こと言ってんじゃねぇ」
「う?」
「まぁまぁ、ねね。イブちゃんサインちょうだい! ファンなのー!」
「さいん……? 名前かけばいいの? いいよー」
「きゃああ! ありがとー!」

普通に名前を書いた。デザイン性もなにもない、ただの丸っこく小さい字だったがそれでも中瓶は満足したようではしゃいでいた。







いよいよ試験が始まろうとしていた。集まった受験者は1541人。そんな中で第一試験は先着100名という苛烈な試験であった。
身体のどこかに3つのターゲットを装着し、各3つボールが配られる。3つ目のターゲットにボールを当てた者が倒したという判定になり、これを二人倒さなければならないというもの。単純に三つ目を横取りなどする戦法が推奨されているものだった。
雄英の入試よりはるかに苛烈なルールであった。


「先着で合格なら……同校で潰し合いは無い……むしろ手の内を知った中でチームアップが勝ち筋……! 皆! あまり離れず一かたまりで動こう!」
「フザけろ遠足じゃねえんだよ」
「バッカ待て待て!!」
「かっちゃん待って〜! イブも行く〜!」

真っ先に輪から外れた爆豪を切島と一緒に追っていく。後ろから上鳴もなんとなくでついてきていた。もちろん爆豪は待って何てくれなかったが、イブは必死に爆豪の背中を追ったのだった。







「緑谷たちの方行っときゃ良かった!! 君たちが走ってちゃうからさァ!! さびしくてついてきちゃったらさァ!!」
「じゃァ行けやカス」
「行けるワケねーだろ!! だって切島が……あんなんなっちゃったんだぞ!?」
「イブ、今お願い使えないから助けられないよ〜! ぴいいっ」
「うっせェ泣くな」

士傑の先輩によって切島が肉の塊のようなものに変えられてしまった。個性も使えず、ただうごうごと蠢くことしかできないようだった。
上鳴とイブはわめいているし、爆豪は静かにキレていた。切島が先行する爆豪を咄嗟に庇ってああなってしまったのだった。


「我々士傑生は活動時、制帽の着用を義務付けられている。何故か? 我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統ある名を冠しているからだ。これは示威である。就学時より義務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄を志す諸君との水準の差」
「嫌いなタイプだ」
「じい? きょーじ? かんよー? なんのことかわかんない……」
「何つったあの人!? 頭に入ってこねー!」
「目が細すぎて相手の実力見えませんだとよ」
「私の眼は見目好く長大である!!」
「オイ、コンプレックスだったぽいじゃん。やめなよそういうの!!」

地雷をぶち抜いてしまった。雄英を尊敬している、雄英と伍することに誇りすら感じていたが、1年A組は品位を貶めてばかりいると怒りを燃やしていたのだった。また肉の塊が襲ってこようとしていた。


「責務? 矜持ィ? ペラペラペラペラと……口じゃなくって行動で示して下さいヨ、先パイ!」
「特に貴様だよ!! 爆豪!!!」

爆豪の新技が炸裂する、徹甲弾A・Pショット機関銃オートカノン。ほうほうから似たような理由で嫌われている爆豪に上鳴がまたか、といった顔をしていた。イブもこの光景に物間を思い出していた。


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