卵からセミプロへ


「おおお!? イブ羽生えてるううう!? はぐれた間になにがあったんだよ!?」
「もふもふイブちゃん久しぶりや〜!!」
「よかった! 生えてきたんだ!」
「ふふん、プルスウルトラしたの!」
「イブかっこよかったんだぜ! 切島と爆豪のピンチに立ち上がってよぉ! 二人を助けて俺も守るんだー! ってそしたらブワァアッてすごい光が出てさ! 気づけはこの羽よ!」
「なに切島と爆豪ピンチだったの!? てかお前も守られポジかいっ!」
「ああ、そうなんだ。俺と爆豪肉に――いって!」
「うっせだーってろ!」
「俺もちゃんと戦ったよ!」

途中で瀬呂、麗日と緑谷と出くわし真っ先にイブの変化に気が付いた。劇的ビフォーアフターである。てっきり少しずつ生えてくるものと思っていただけに、とんでもない驚きだった。もちろん嬉しい驚きである。


「皆さんよくご無事で! 心配していましたわ。って……イブさん!? 羽が生えたのですね……!!」
「えへへ、そーなの! これでもう完全復活! どんな傷もどんな壁もイブにお任せ!」
「頼もしいわ、イブちゃん」

みんなに教えてもらいながらターゲットを外し、ボールバッグに戻す。
軽い軽食も用意されており、イブももらうことにした。もぐもぐとサンドイッチを食べていると轟が隣にやってくる。


「羽生えたんだな。よかった」
「えへへ、前のよりかっこいいでしょう? もっと丈夫で大きいの!」
「そうだな。ちょっと触ってもいいか?」
「いいよいいよー!」
「ありがとな」

そう言って轟がイブの羽に触ると感動したように「おぉ……」と声を出した。もふもふのふわふわである。八百万のベッドにある最高級羽毛布団にだって負けない仕上がりであった。
轟が「なぁ、USJのときやってくれたやつ……やってくれるか?」と言い出すのでイブも思い出し快く引き受けた。羽をふわっと広げ、轟にかけてやったのである。前は面積が足りなかったがこの羽なら十分だった。


「……言ってなかったが、すげぇふわっとして気持ちよかったんだ。イブに羽が生えたらあの時言えなかった分言おうと思ってた。ありがとな。お前の羽、俺は好きだ」
「えへへ、うれしい。ありがとう」

実に平和な世界だった。近くにいた耳郎と八百万、上鳴が「意外とイブと轟もお似合いってやつなのかもな。イケメンと美少女」「イブのこと完全末っ子とかマスコット感覚だったけど、顔が良すぎるんだよねぇ」「無邪気なイブさんに落ち着きのある轟さん……いいと思いますわ」なんて言われていたとは知らなかった。
それに切島が「いやでも……んーまぁいいか」と言い淀む。切島の脳裏には事あるごとにイブに絡む物間が思い起こされていた。でもあれで結構真剣に好きなんだとは思う。じゃないと一緒に神野に行くことはなかっただろうから。でもまぁ、イブにツンツンしている間は俺は認めねぇと一人兄貴風を吹かせるのであった。

その後先着100人も二桁を切ったところ残っていたA組が続々とクリアしてきた。結果A組全員で一次試験を突破した。
委員長として最後までみんなをサポートして回っていた飯田がイブの羽に気付き、ものすごい勢いで涙を流し「よかった! 本当に良かった!」と喜んでくれたのであった。







「うう……この試験だとサポートアイテム反応しなぃぃ」
「実際本当に怪我してるわけじゃねーからなぁ」
「でしたら、イブさんは他の学校の先輩方が急ごしらえで建てていらっしゃる救護室の方へ! そちらで怪我人をみていてください!」
「あ、そっか。救護室なら絶対怪我してる設定の人いるもんね! ありがとうももちゃん! イブこっちいくー!」
「この試験、本当に怪我してたらイブの独壇場だったろうな」

まさにその通りであった。新しい羽をもってからのイブはものすごくパワーアップしていた。会場全体に治癒を駆けることも造作もないほどである。まさに覚醒、ライジングである。
八百万の指示通り救護室にいる他校の先輩方に個性を説明し、役立ててもらう。トリアージを先輩がしてくれるので怪我の程度が酷い順に治癒していくのである。実際に怪我をしているわけではないので明確に効果はでないが、ここは要救助者のプロHUCの皆さんが適切に判断をしてくれた。


「もう大丈夫だよおばあちゃん!」
「(子供っぽいが治癒個性は本物。おかげで連日の疲労がふっとんだ)ありがとねぇ、ありがとねぇ……!」
「治癒の子! 次こっちお願い!」
「はーいっ!」

その後は大規模破壊テロが発生したり、対敵があったりと前線は大変であったが、後方にいるイブは戦いの気配を察知し、即座にきっと戦っているA組のみんなの治癒を願った。それは確かに形となり、A組は傷や疲労が全快した。
本当は会場全体他校の先輩たちにもかけたかったが、イブは敵との区別がつかないためこれが精一杯であった。
そして順調に治癒を終え、最後の要救助者たちが救出されたところでタイムアップになった。







「あ! イブの名前あるー!! わーいっ!!」

イブは見事仮免に受かったが、対敵中になにかあったらしい轟と言動が悪かった爆豪は不合格だった。


「かっちゃんそーいえばお口悪かったねぇ。もうイブ慣れちゃってそういうのだと思ってた」
「うっせぇ黙ってろ……」
「あ、みてみてかっちゃん! イブ80点! 高いよねこれ高いよね!?」
「だあああ点数それよこせや!!」
「いいよー!」
「ちげぇそういう意味じゃねぇ!!」

用紙をもらうとき妙にじろじろ見られた気がしたが、くるくると飛びながら爆豪とじゃれているともうどうでもよかった。
でも轟も爆豪も補講を受けて試験で結果を出せば仮免を発行してくれるのだという。A組みんなで同時に仮免を取る事は出来なかったが、それでも轟と爆豪ならすぐに結果を出せるだろう。イブは何の心配もしていなかったのだった。


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