謹慎だって!


「ケンカして」
「謹慎〜〜〜〜!?」
「馬鹿じゃん!!」
「ナンセンス!」
「馬鹿かよ」
「骨頂――」
「ぐぬぬ……」

仮免試験のあった夜が明けると爆豪と緑谷が身体中傷だらけで謹慎を言い渡されていた。イブは心配したように駆け寄って「痛い? 治す?」とおろおろすると「相澤先生からイブちゃんとリカバリーガールには頼っちゃダメって言われてるんだ。ごめんね」と返ってきた。緑谷を治すなというのはまだ撤回されていないためどちらにしろ治してはダメなのだが、思わず聞いてしまった。


「えええ、それ仲直りしたの?」
「仲直り……っていうものでも……うーん言語化が難い……」
「よく謹慎で済んだものだ……!! ではこれからの始業式は君ら欠席だな!」
「爆豪、仮免の補習どうすんだ」
「うるせぇ……てめーには関係ねぇだろ」
「じゃー掃除よろしくなー」
「ぐぬぬ!!」
「かっちゃん……」

イブが心配したように飛びながら爆豪の周りをうろちょろすると「邪魔だ」と短く返される。懲りずに「かっちゃん……」と声をかけるイブに爆豪は「……もう終わったわ」と口にした。終わった、終わった……もう痛くない。脳内変換を正しく終えたイブは「かっちゃーんっ」と今度は嬉しそうに抱き着いた。「邪魔だって言ってんだろ!! あと気軽に抱き着いてんじゃねぇ!!」と今度こそ爆発的に怒られた。やっぱりかっちゃんはこうでなくっちゃとイブは安心する。


「ほら! お前もはよ行け! 遅刻すんだろ!」
「はーいっ! かっちゃんデクくんまたね〜!」
「行ってらっしゃい!」
「室内で飛ぶな!! 埃すんだろ!!」

びゅーんっと飛んでいくイブに爆豪が吠えたが聞いちゃいなかった。またしても「ぐぬぬ」となる爆豪に緑谷が苦笑する。なんかみんなが親子だ親子だと言ってるのが理解できてしまった。その後喧嘩中のシュートスタイルがどうだったか聞いたりなど、緑谷たちも以前よりいい関係を築いているようだった。







「聞いたよ――A組ィィ! 二名!! そちら仮免落ちが二名もでたんだってええ!!?」
「B組物間! 相変わらず気が触れてやがる!」
「さてはまたオメーだけ落ちたな」
「ハッハッハッハッハッ」
「いやどっちだよ」
「こちとら全員合格。水があいたねA組」
「……悪ィ……みんな……」
「向こうが一方的に競ってるだけだから気に病むなよ」

始業式に向かう途中後ろが騒がしくなったためイブがひょこっと後ろを振り返り、物間たちがいたため「あ、ものまくんだ」と思わず声を出すと、物間も反応した。


「君……羽生えたの」
「そーなの! 前よりずっと丈夫で大きいんだよ! 触る?」
「相変わらずだね。そんなに簡単に他人に触らせたらダメじゃないか。それ一応君の身体の一部だろ」
「うん? そうだけどなんで? みんな気持ちいいっていうのに?」
「……ちょっとA組!! この子の情操教育もっときっちりしてくれないかなああ!?」
「あーわりぃ。でもうちにイブに邪な感情抱いてるやついないからよ。峰田ですらイブをそういう風には見ねぇし……なんかついな」
「!? 別に僕がそういう邪な感情を抱いているわけじゃないけど!!? 断じて違うけど!!?」
「強めに否定するのがちょっと怪しくない?」
「別に怪しくないけど!!?」
「まぁでも、爆豪がそういうのには今力入れてっから……もうちょい待っててくれ」
「んんんっ!! なんだか色々誤解されてる気がするなあああ!?」

いつものごとく情緒がぶっ壊れた物間を「だいじょうぶ?」と心配すると「これが大丈夫に見えるのかい」と返ってきたので、イブがぴゅーっと飛んで物間の頭を撫でた。「っ君ねぇ!」「よしよーし」「……ああもう、ほんとしっかりしてくれよ、A組」と物間のライフが著しく消費された。
だがそれを見ていた拳藤はそれよりお前いい加減に好きなの認めろよと思うのであった。回原と円場も同じ気持ちであった。







「ほうほー。すいみん!」

校長の恐ろしく長くてどうでもいい話をイブはとても真剣に聞いていた。
校長は頭がいいから難しくてよくわからないところが多かったが、それでも毛質には睡眠が一番重要というのはちゃんと理解した。イブの新しい羽艶も気になるところである。睡眠を大事にしようと心がけるのであった。

そして郊外活動ヒーローインターンにも触れられた。何の事だろうと思うも、ホームルームで蛙吹が相澤に質問し、相澤が応えてくれることになる。
以前行った職場体験の本格版。体育祭で得た指名をコネクションとして使い、授業の一環ではなく生徒の任意で行う活動だった。







「かっちゃ〜ん! イブ授業わかんなかった! 教えて教えて!」
「わーったから座れ! 何がわかんねぇんだ!」
「今日のは全部わかんなかったー!」
「上等だ教え殺したる!!」

無事イブは爆豪から教え殺された。忘れてしまってもすぐわかるようにノートをとったおかげで怖いものなしである。
だがそれはそれとして、いつも口煩く爆豪にあれやこれやとダメだしされている身としては、爆豪のいない学校というのは大分寂しかったらしく、謹慎中は寮でべったりするイブの姿が多くみられ、カルガモの親子を彷彿させる者たちが少なくなかったという。


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