インターンのお誘い


ビッグ3によるインターンの説明が行われた翌日、爆豪もようやく謹慎が解けた。登校中も嬉しそうにくるくる周りを飛び回るものだから「邪魔だどけ!」と怒られたが気にしちゃいなかった。寮生活になって憧れの同級生との登下校である。イブにとって寮生活というものは楽園のようなものだった。

だがそれはそれとして、インターンだが……校長を始め多くの先生方がやめたほうがいいという意見だった。寮制度になった経緯を鑑みればまぁ当然である。
けれどこのままでは育たないというのももっともな話で、インターンの受け入れ実績が多い事務所のみ可能とのことだった。ちゃんとしたコネクションさえあれば活動できるのだという。


「かっちゃん……イブどーしたらいいと思う?」
「あ゛!? それくらい自分で考えろや!」
「だってお勉強も大変だし、でもインターンってすごい経験をつめるんでしょう? 迷っちゃうよー」
「おめーの場合はまず、インターン受け入れられる真っ当な・・・・事務所があるかどうかからだろ。職場体験いったとこ行くつもりかぁ?」
「あーホークスねぇ……職場体験あんまりだったんだよね……とこやみくんとダークシャドウと後片づけばっかだったの」
「そんなとこ行ってもしゃーねぇだろ」
「そうだよねぇ……」
「ま、今度はサイドキックとして扱われるってんなら少しはちげぇかもな」
「それがね。ホークスのとこのサイドキックも後処理ばっかりなんだよ。ホークスが一人で解決しちゃうから」
「……おめぇ、逆にそれでよくそこ行こうと思ったな!?」

爆豪的に無しだったらしい。けれど数名はインターンに意欲を見せており、さっそく宛てを当たったりしているようだった。イブは逆に質問を変えた。


「かっちゃんだったら……インターン行ってた?」
「当たりめぇだろ。プロの現場だ。確実に成長に繋がんだろ」
「そっかぁ……」
「俺はお前と違って勉強の心配もねェしな」
「むぅ……かっちゃんこそ仮免ないからインターン行きたくても行けないくせにぃ」
「ああ゛!? 上等だこら!! もう勉強教えてやんねぇぞ!!」
「ええ!? ごめんかっちゃん! 本当のこと言ってごめんねええ!!」
「一言多いんだわ!!!」

わちゃわちゃする爆豪とイブに周りは慣れたように「まぁたやってんのね」「なんだろうな、あいつら結構距離感近いのにまったく怪しく見えねぇの」「そりゃ親子だもんよ。怪しくは見えねぇわ」「だよなぁ」もう公認親子である。まだ爆豪は親じゃねぇと足掻いているのであった。







「ももちゃん、ここ教えてー」
「ええ、もちろんですわ。ここはですね……これが引っ掛かりやすいのですけど、ここをこうしたら……こんな風に解きやすくなるのですわ」
「わーほんとだ! 解きやすーい! ももちゃん天才!」
「いえそんな……! さ、この感じでやってみてください」
「やるやるー!」

週末、爆豪と轟は仮免の補講に出かけ、イブは八百万の予習会に参加していた。相澤がいなくても覚えられるようにこうして教えてもらったことを全部わかりやすくノートにまとめ、忘れても見たらわかるようにしておくのだ。おかげでノートの消費がすごい。でもこのノートも最高品質八百万ブランドのものである。イブが頑張れば頑張るほどノートが消費され、その頑張りを直に感じる創造元である八百万はいたく感動していた。勉強熱心でえらいのだ。


「ありがとーももちゃん! もう大丈夫! 明日当たっても怖くないや!」
「お役に立てたのなら何よりですわ!」
「すまない。予習会は終わったか? 終わったならイブ、話がある」
「あら常闇さん。予習会はたった今終わりましたが……」
「どうしたの?」
「ホークスよりインターンへの招待を受けた。イブ、ホークスが所望だ」
「ホークスが……?」
「お前が羽を落としたことを知っていた。心配していてな、俺がもう再生したことを話したら見てみたいと……」
「あーうん、そうだね。イブの羽ホークスとおそろいだし! 見せに行こうかな!」
「まぁ、イブさん……お勉強は大丈夫ですか? インターンをするということはそれだけお勉強の時間が取れず、授業に遅れるということですわ」
「う……」

頭の痛い話であった。イブの成績がよければこんな風に迷うこともないのだが、イブは個性柄どうしてもクリーム脳である。けれど常闇がさらに背中を押してくれた。


「だがイブの場合現場で己を磨くというのは大事だろう。すでに攫われ、狙われ続ける運命さだめにあるというのなら、なおさら己を鍛えなければ」
「それはそうですが……先生方がおっしゃったように何も1年生のうちからやらずとも……2年生からでも十分なはずですわ」
「八百万。プロの指名とはいつも一方的なものだ。ホークスというNO.3の興味が来年もあるものとは限らない。大事なのはイブがどうしたいかだ」
「え、ええ……そうですわね……イブさんはどうしたいですか……?」
「イブは……どっちもやりたい。お勉強も、インターンも。みんなと一緒に進級したいし、みんなを守れるようにもっと強くなりたい」
「イブさん……! ではこうしましょう! イブさんはホークスの下でインターン活動をしつつ、私とお勉強をしましょう。授業に出れなかった分も私が責任を持ってお教えしますわ!」
「わー! ももちゃんありがとー!」
「では俺はそのようにホークスに返事をしてくる」
「とこやみくんもありがとー!」

こうしてイブのインターンが決まった。今から八百万は張り切っているようで、プリプリとプランを練っていた。去り際に「オレたち今度もイッショ! ガンバローな!」と黒影が出てきて手を振ってくれたので「がんばろー!」と手を振り返した。けれどまぁ多分今回も職場体験と似たような感じかなと思っていた。

けれど、イブの思ってたのと違うインターンが始まろうとしていた……。


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