AB対抗試合


すっかり冷え込んできた。多くの者が冬用にコスチュームを新調する中、イブは変わらず背中の露出がなかなかであった。おしゃれは我慢である。結構なおしゃれさんであるイブも例にもれず我慢をしていた。


「イブちゃん寒ない?」
「寒いからこうして羽をたたむの。羽は温かいから……」
「羽毛……!!」

座り込んで羽に包まれるイブに麗日は衝撃を受けた。その手があったかというのもあるし、最高級羽毛布団すら凌駕するイブの羽毛に包まれるというのはA組女子ではロマンのようなものなのである。
物間がいつものように高らかにA組を煽り、僕調べの文化祭アンケートなるものまで持ち出したが、イブが座り込んで羽に包まっているのを発見し、変な声が出た。


「君! どうしたんだ、どっか具合でも悪いのか!?」
「ふぁ……?」
「ああもう、こんな寒いってのにそんな格好してるから! ちょっと八百万! 毛布かなんか出して――」
「は、はいっ」
「え、大丈夫だよ! イブ平気! ちょっと寒いけど平気なの!」
「やっぱり寒いんじゃないか! 羽があるから開いてないとなのはわかるけど、なにもこんなに開かなくたっていいだろ。治癒ができるっていっても風邪ひかないわけじゃないんだから」
「……う、うん」

物間は「ありがとう」と八百万が創造した毛布を受け取るとイブを包んでやった。周りも物間の予想外の動きに呆気に取られていた。最後に「あったかくしてるんだよ」とイブの頭まで撫でてくるのだから葉隠は物間くんすごいと密かに興奮していたし、拳藤やずっと物間の恋模様を生暖かく見守ってきた常識人四天王も目を瞠った。あの物間が行動を起こした。なんかちゃんとできてる。


「物間、おまえ素直になったんだな……」
「は……!?」
「いや無意識かよ。風邪ひくかもって心配が上回ったのか」
「やっぱ物間は物間か……」
「散々な言いようじゃないか……!」

まぁ、完全に吹っ切れたわけでもないようだ。
そして相澤とブラドキングが今回特別参加者ゲストがいると紹介したのは普通科の心操人使だった。ヒーロー科の編入を希望している、洗脳の個性を持った体育祭で本戦まで上がった人物である。


「一言挨拶を」
「何名かは既に体育祭で接したけれど、拳を交えたら友達とか……そんなスポーツマンシップ掲げられるような気持のいい人間じゃありません。俺はもう何十歩も遅れてる。悪いけど必死です。立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい。この場の皆が超えるべき壁です。馴れ合うつもりはありません」
「ギラついてる」
「引き締まる」
「初期ロキ君を見ているようだぜ」
「そうか?」
「うん」
「いいね彼」

イブは隣にいた爆豪に「ねぇねぇ、しんそーくん、イブたちとは仲良くしないっていってる?」と聞き爆豪が答える前に葉隠が「ううん、みんなライバルだから負けないぞー! って言ってるんだよ」と回答した。爆豪は「だとよ」と短く返すつもりだったのでナイスであった。イブがしゅんとするのは必至である。

そしてA組とB組でチーム分けがあり、イブは常闇と八百万、葉隠に青山と一緒の第二セットだった。


「イブと一緒とはいい風向きだな。俺たちの合わせ技を今こそみせてやろう」
「みせてやろう!」
「まぁ、そのようなものが? 詳細を伺っても?」
「ああ、もちろんだ。俺たちの要は八百万、おまえだ。司令塔を頼んだ」
「よろしくねー!」
「僕のキラメキは誰にも止められないよ☆」

相変わらずの青山に葉隠と常闇の八百万への期待値が上がった。本当に頼んだ八百万って感じである。「お任せを!」と自信たっぷりに言ってくれたのできっと大丈夫である。







「しんそーくんすごいねぇ! 全然遅れてなんかないよ!」
「そうだな……思ったより出来る奴だ。相澤先生に師事を受けただけあって、あの捕縛布は厄介だな」
「イブたちにとってのホークスがしんそーくんにとってのあいざわせんせー?」
「如何にも。その通りだ」
「じゃあイブたちもがんばんなくちゃだ!」

インターン以降も二人はホークスと良好な関係を築いており、連合の影響でインターンが中止になったということもあり、また再開するときにおいでと連絡先も交換しているのだ。
ホークスがNO.2に繰り上がり、九州でエンデヴァーとのチームアップで頑張っていた姿をテレビで見たこともあり、二人はとても気合が入っていたのだった。

続く第二セット、イブたちの試合が始まろうとしていた。


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