インタビュー!


『仲はいいです。……はい、恐怖はなく訓練通りに対処できました』
「かっちゃん映ってない……」
「一時間もインタビュー受けて!!」
「爆豪丸々カット!!」
「ある意味守ってくれたんやね」
「使えやぁああ……!!!」

爆豪と轟の仮免事件から取材が来てもう三本目だったが、今回も爆豪は丸々カットされた。受け答えが大変よろしくないので轟のコメントのみ放送されたのだ。
イブは爆豪の見切れた画面を悲しそうに見つめていた。心なしかしゅんと羽も力がない。常闇が「爆豪」と声をかけると「……ケッ」と吐き捨てつつイブの頭を乱暴に掻き撫でるのだった。

続いて泥花市の悲劇のニュースが続く。事件から9日。たった20人の暴動、約50分で泥花市は壊滅に追い込まれた。被害規模はあの神野以上である。けれど地方だったため死傷者の数は抑えられたらしい。
街の人たちの声も以前はヒーローへの非難一色であったのに、見ろや君から風向きが変わりつつある。非難が叱咤激励へと変わっている。それはいい変化であった。


「エンデヴァーが頑張ったからかな!」
「ホークスもね! がんばったー!」
「……」
「楽観しないで!! 良い風向きに思えるけれど裏を返せばそこにあるのは危機≠ノ対する切迫感! 勝利を約束された者への声援は果たして勝利を願う祈りだったのでしょうか!? ショービズ色濃くなっていたヒーローに今、真の意味が求められている!」
「Mt.レディ!?」
「わあああ!!」

教室に入ってきたのは若手注目株のヒーローMt.レディとミッドナイトだった。職場体験でMt.レディのところに行ったはいいがそこで何かあったようで峰田はMt.レディの登場に恐怖の混じった悲鳴をあげていた。


「特別講師として招いたんだ。おまえら露出も増えてきたしな。ミッドナイトは付き添い」
「増えてねンだよ」
「次から頑張ろーぜ!!」
「かっちゃんろしゅつ増やす!」
「オイラが言うのもアレだけど、一番ショービズに染まってんだろ」
「お黙り!! 今日行うは「メディア演習」現役美麗注目株わたしがヒーローの立ち振る舞いを教授します!!」
「何するかわかんねェが……みんなぁ!! プルスウルトラで乗り越えるぜ!!」

そしてヒーローインタビューの演習が始まった。それはもう大変緩く。







『凄いご活躍でしたねショートさん!』
「何の話ですか?」
『なんか一仕事終えた体で! はい!!』
「はい」
『ショートさんはどのようなヒーローを目指しているのでしょう!?』
「俺が来て……皆が安心できるような……」
『素晴らしい!! あなたみたいなイケメンが助けに来てくれたら私逆に心臓バクバクよ』
「心臓……悪いんですか……」
『やだなにこの子(かわいい、ほしい)どのような必殺技をお持ちで?』

そうして轟が実演してみせてくれたのは穿天氷壁。広域制圧、足止め、幅広く使える大氷壁である。その他に膨冷熱波という技もあると伝えた。手荒な技なので実演するのは危ないのである。


「あれ? B組との対抗戦で使ってたヤツは?」
「エンデヴァーの」
「赫灼熱拳!」
「……は、親父の技だ。おれはまだあいつに及ばない」
「パーソナルなところまで否定しないけど……安心させたいなら笑顔を作れると良いかもね。あなたの微笑みなんて見たら女性はイチコロよ♡」
「俺が笑うと死ぬ……!?」
「もういいわ!」

轟は相変わらず最後まで天然だった。穿天氷壁でさらに冷え込みプルプルするイブを見た轟が「悪ぃ」と言って炎を出してくれた。とってもあったかい。「あったかい……」とふにゃんとするイブに轟も思わず笑うと、はっとして「死んで……ない、な」と確認してきた。イブは「う?」と何のことかわからなかったが、近くにいた耳郎が思わず吹いたのだった。


「技も披露するのか? インタビューでは?」
「あらら! ヤだわ雄英生。皆があなた達のこと知ってるワケじゃありません! 必殺技は己の象徴! 何が出来るのかは技で知ってもらうの。即時チームアップ連携。敵犯罪への警鐘。命を委ねてもらう為の信頼。ヒーローが技名を叫ぶのには大きな意味がある」
「……ちょっと前までカメラ映りしか考えてなかったハズだぜ、あの女……」
「Mt.レディだけじゃないよ。今ヒーローたち皆引っ張られてるんだ、NO.1ヒーローに」

時代は変わっていく。オールマイトの絶対的平和の象徴時代から、エンデヴァーの努力の時代へと。前よりずっとヒーローとしての責任と自覚に目覚めているのだった。


「ヒーロー名をインゲニウムとしたのは、兄の意志を受け継ぎ駆けるためであります!」
『誠実さが伝わるね!』
「博覧強記、一切合切お任せください!」
『自身は人を頼もしくするの!』
「私の前では全てが無重力なのですっ」
『和らげるのも一つの才よ!』
「闇を知らぬ者に栄光は訪れぬ」
『良い〜〜雰囲気良いよ〜〜』
「俺の後ろに血は流れねェ!」
『ああーー兄貴ーー!!』

何気にみんなちゃんとできていた。Mt.レディも感心したようによくできていると褒めてくれた。そして問題と思われた爆豪だが――。


「俺ァテキトーな事ァ言わねェ! 黙ってついて来い」
『一人だとまだマシね……わかった。ソリが合わないのね人類と』
「ワリィ、俺がいたから丸々カットに……」
「思い上がんな! てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねェだろが!!」
「そうか」

一人だと爆豪もだいぶよかった。イブも「かっちゃんかっこいー!」ときゃっきゃっはしゃいでいた。そしてMt.レディから「次はあなたよ!」と声を掛けられ、イブは少し緊張しながら前にでたのだった。


『すごい個性ですねエンジェリングさん! エンジェリングという名前の由来はなんでしょうか?』
「えっと……お友だちがつけてくれたの。ぷりきゅあみたいにみんなを助けられるようにがんばる……!」
『素晴らしい志ですね! エンジェリングさんの必殺技はなんでしょうか?』
聖なる光槍ホーリーレイ、光を槍みたいにたくさん降らせられるよ。あとは天使の揺り籠エンジェルクレイドル。たくさんの人の怪我を治したり、安心させたり……眠らせたり! あとあと、黒夜こくやの天使! ぷりきゅあみたいに変身できるんだ!」
『色々できてすごい!! 最後に今後の意気込みをお願いします!』
「いきごみ……?」
『これからどうしていこうっていう積極的な気持ちのことよ』
「おお……えっと、どんな怪我も、どんな傷も治せるヒーローになるよ。今までも、今もたくさんの人にイブは助けてもらってるから……今度はイブが助けられるようにがんばる!」
『健気っ!! いいわよあなた!! 良いヒーローになれるわ!』
「ありがとー! Mt.レディもあのとき・・・・助けてくれてありがとう! タイタンクリフ! とってもかっこよかった!」
『(じーーーんっ)お安い御用よおおお!!』

必殺技は己の象徴。何が出来るかは技で覚えてもらう。イブたちを身体を張って助けてくれたMt.レディはイブにとってとってもかっこいいヒーローだった。

自分もいつか、誰かにかっこいいと思ってもらえるようなヒーローになれたらいいと思う。このインタビューはイブにとっても未来のヒーローとしての自覚を促すものであった。


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