どうしてホークス


「イブちゃん、ちょっと遠くに行くよ」
「うみゅ?」

イブがもきゅもきゅといちごを食べていると抱き上げられた。隣で林檎を齧っていた常闇が「また重傷者か?」と聞くが「いやいや、そういうんじゃないんだ」といいつつ、説明する気はないようでそのまま駅まで飛んで行ってしまった。
常闇が「何も抱き上げなくてもいいのでは……」と去っていった背中を見ながら思わず口にしたが、インターンが再開してからのホークスは少しおかしく、イブと常闇のスマホにミッドナイトと相澤からホークスとの関係だったり、困ったことをされていないかといった連絡がきたが、イブも常闇もホークスのことは師として敬愛しているし、最近はちょっと過保護かもしれないけれどそれだけだと返答した。少しでも疑問に思う事があれば報告することや、常闇に至っては目を光らせるように言われなんだか色々複雑だった。







「とーちゃく、イブちゃんはちょっとここで待ってて」
「わかった! いってらっしゃいホークス!」

新幹線を使って乗り継ぎなどをすませて到着すると、なにやら敵が暴れていた。ホークスは被害の及ばない大きな建物にイブを降ろすと収束に向かった。
じっと見守っていると、なんだかすごい炎が出た。思わず「おー!」と声を上げる程である。なんとここはエンデヴァーの管轄だったのだ。あっという間に事態を収束させたエンデヴァーに思わず拍手した。


「イブちゃーん! もういいよー! 降りておいでー!」

ホークスに言われた通りイブが飛んで降りてきた。イブもいるということにエンデヴァーのところにインターンに来ていた轟、爆豪、緑谷は驚いた。


「なんでお前こっちにいンだよ」
「ホークスが連れてきたの。イブもなにするかわかんない」

爆豪は何もわかっていないのに言われるがままついてきたイブに頭を抱えた。いくらインターン先のヒーローといえど、どういうわけか連れてきたのはイブだけのようであるし、お前希少個性持ちでもあるんだからもうちょっと警戒しろよと言いたかった。けれど随分イブはホークスを信頼しているようであったし、腐ってもNO.2である。口を出すのは諦めた。


「指破壊する子」
「緑谷と言います!」
常闇ツクヨミくんから聞いてる。いやー俺も一緒に仕事したかったんだけどね」
「常闇くんは……? ホークス事務所続行では……」
「地元でサイドキックと仕事して貰ってる。俺が立て込んじゃってて……悪いなァって……思ってるよ」
「さっきのぁ俺の方が速かった」
「それはどーかな!」

ホークスはなんだか意味深に爆豪を見た。イブが慕っているというのは本当のようで爆豪に会ってから羽が嬉しそうにパタパタしている。この分ではホークスの目的もスムーズにいくだろうと思われた。


「で!? 何用だホークス!」
「本題の前に……エンデヴァーさんこの本読みました?」
「異能解放戦線……」
「いやね! 知ってます? 最近エラい勢いで伸びてるんスよ。泥花市の市民抗戦で更に注目されてて! 昔の手記ですが今を予見してるんです「限られた者にのみ自由を与えればその皺寄せは与えられなかった者に行く」とかね。時間なければ俺マーカー引いといたんでそこだけでも! デストロが目指したのは究極あれですよ。自己責任で解決する社会! 時代に合ってる!」
「何を言ってる……」
「そうなればエンデヴァーさん、俺たちも暇になるでしょ!」

そうしてエンデヴァーに異能解放戦線という本を渡すと、興味を示した緑谷の声を聞き一緒にいた爆豪と轟、イブにも渡した。たくさん持っている同じ本に轟とイブがこの本が好きなんだねといった旨を口にすると緑谷が布教用だと教えてくれた。念押しとばかりにホークスはマーカー部分だけでも目を通した方がいいこと、二番目のオススメだと口にした。


「で、こっからが本題なんですけど……」
「あ、おいっ」
「わっ、なになにホークス」
「んー……やっぱ別れがたいなぁと思って」
「ホークス……?」

爆豪の近くにいたイブを抱き寄せぎゅうっとハグをする。爆豪がそれはアウトだろとばかりに声を上げるがホークスは気にしちゃいなかった。また、変だ。


「エンデヴァーさん、この子をインターン中預かってくれませんか」
「え……」
「何?」
「ちょっと可愛がりすぎちゃったみたいで……苦情が来ましてね。俺のところでのインターンの続行は推奨できないそうです。いやぁ、参りましたねぇ。こんな可愛かったら正直可愛がらないなんて無理でしょう」

大晦日の日に撮られた写真とそれ以降のインターンでもあんな調子だったのでSNSで出回ってしまっているのだ。一部ではイブのことをホークスの彼女だとか思われてしまっている。
余談だが物間からも噂の真偽を問うラインがきた。否定した。でもなぜか怒られたのだった。
ホークスはそれはもう名残惜しいとばかりにぎゅうぎゅうと抱きしめ、頭にキスまでしてきた。エンデヴァーが表情を険しくする。


「そんなことをしているから噂になるんだろう。この調子ではその子をお前のところに置いておくのは危険だ。俺が預かろう」
「ええ、助かります」
「え、え……」
「じゃあイブちゃん、元気でね。エンデヴァーさんの言うことをしっかり聞いて、頑張るんだよ」
「ま、まってホークス……え、ホークスイブのことす、捨てるの……? な、なんで……? イブ悪い子だった……?」
「よろしくお願いします。大事にしてやってください」
「ほ、ホークス……!!」

イブの言葉を聞いていないようにホークスは飛んで行ってしまった。ぼろぼろと涙をこぼして「まって! ホークスおいていかないで……!!」と追っていこうとするのを爆豪が止めた。なんだかとってもめんどくさいことになった。


「かっちゃ! 放してかっちゃん! ホークスが! ホークスが行っちゃう!」
「……追ったって無駄だわ。あのヘラ鳥はお前を見る気ねぇってよ」
「ううっ、なんでぇ……! イブがおやついちごしか食べないからぁ……!? 練乳いっぱいかけちゃったからぁ……!?」
「イブちゃん……」
「大丈夫だイブ、うちでもおやつにいちご用意してもらうし、練乳もたくさんかけていい」
「焦凍」
「なんだよ。それくらい別にいいだろ。ケーキの方がよかったか? なんでも好きなもの頼んでいいぞ」
「ホークスがいいよおおおお! うわーんっ」
「焼き鳥にすっか。エンデヴァー頼んだぞ」
「む、むう……」

突然のホークスとの別れはイブをパニックと悲しみの海に導くには十分すぎた。ぴぃぴぃわんわん泣くイブを必死であやす。「わああああんっどうしてホークスううう!」今回ばかりは爆豪も怒らなかった。酷く狭い世界で生きているイブにとって、自分たちが特別であるようにホークスだってとっくに特別だったと理解していたからだ。
エンデヴァーもホークスの態度はまずいと思って預かることを了承したものの、実情がどうであれイブ自身はホークスをとても慕っているようであったから、少なからず可哀想に思う心もあったのだった。

エンデヴァーは轟が言ったようにおやつにいちごと練乳をたくさん用意してくれたし、ケーキだって買ってきてくれた。焼き鳥も食べた。だけどそこにはやはりホークスはいなかった。


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