イブの役割


「停まりますようにーー!!」

当て逃げ犯を追いながらイブは停まるようにお願いする。ピカッと輪っかが光りはしたがすぐにエンデヴァーが炎を使って確保した。


「当て逃げ犯確保。エンジェリング、よくやった。だが願い事の内容はもう少し具体的にした方がいい」
「具体的……」
「お前たちも一足遅かったな」

エンデヴァーはこの冬一度でも自分より先に敵を退治するという課題を4人に与えた。イブはホークスに速さを鍛えられてきたのでエンデヴァーに追いつくことが出来たのだが、ちゃんと敵を退治できているかというと疑問が残った。
爆豪たち3人は追いつくことができずに歯噛みをしていた。爆豪は個性柄冬はギアを上げるのに時間がかかるし、轟も緑谷も火力を上げきれていないのだ。


「先の九州ではホークスに役割分担してもらったが……本来ヒーローとは一人で何でも出来る存在でなければならないのだ。ちなみにさっきのガラス敵の手下も俺は気付いていたからな?」
「小っせェな」
「バクゴー。何が出来ないかを知りたいと言ったな。確かに良い移動速度、申し分ない。ルーキーとしてはな。しかし今まさに俺を追い越す事が出来ないと知ったワケだ」
「冬は準備が」
「間に合わなくても同じ言い訳をするのか? ここは授業の場ではない。間に合わなければ落ちるのは成績じゃない」
「あっ! 待って……! 停まって=c…!!」
「人の命だ」

エンデヴァーが通行人に突撃しようとしたトラックを寸でで止めた。イブのお願いじゃない。だって輪っかは光らなかった。お願いがイブが望む形にならないから、間に合わなかったからだ。


「エンジェリング、言っただろう。願い事を具体的にしろと。何故ならこういうこと・・・・・・が起きるからだ。もっと具体的に、助けるにはどう願えばいいか、状況把握をして最適解を導き出せ」
「じょうきょうはあくと、さいてきかい……」
「結果停まれば問題ないんだ、おまえ自身ではできなくても、周りの人間にバフをかけるイメージで願えばいい」
「! かっちゃんたちが間に合いますように?」
「そういうことだ。本来ヒーローとは一人で何でもできるものだとは言ったが、お前の場合は個性も特殊だ。周りの人間と上手く連携するのが理想的だな」
「かっちゃんたち助ける?」
「そうだ。お前の目指すヒーローもリカバリーガールに近いだろう。敵退治をお前の手で必ずしもしなくはならないわけではない」
「イブサポートは得意! がんばる!」

いちごと生クリームのサンドイッチを頬張りながらにこにこした。それはそうと「生クリーム、ついているぞ」「ふぁ」「ったく、オメェは綺麗に食えっていつも言ってんだろーが!」ごしごしと乱暴に爆豪にほっぺを拭かれた。


「……いつもこんな感じなのか?」
「あ、はい。イブちゃんがかっちゃんに懐いてる感じで……かっちゃんも頼られるとまんざらでもないところがあるのであんな感じに」
「そうか」
「誰がまんざらでもないって!? クソデクが勝手なこと言ってんじゃねーぞ!!」
「? でもいつもこんな感じだろ? イブに口出しばっかしてるじゃねぇか」
「それはこいつがちゃんとしてねェからだわ……!!」
「むぅ……かっちゃんが細かいんだよ」

ぼそっと呟いたイブの言葉にも敏感に反応し「オメェはサンドイッチ一つ綺麗に食えねェくせに言うじゃねェか」とキレられた。みみっちい。でも大体爆豪が正しいのだ。みみっちいけど。

イブのこれからの目標と課題は明確になったところで、エンデヴァーが続いて爆豪、轟に同じ課題を与えた。溜めて放つ。力の凝縮。最大出力を瞬時に引き出すことと力を点で放出することであった。
そして緑谷も瞬時の引き上げが出来てはいるが、エアフォースはまだである。だから次はエアフォースを瞬時に引き出せるようにというのが課題であった。


「うー?」
「どうした、エンジェリング」
「イブのお願い、みんなが今すぐクリアしますようにってお願いしたら叶う?」
「叶うかもしれないが、こいつらは本当の意味で成長はしない。出来はするが、応用して使うことはできないだろうな」
「言ったろ、チートはズルだってよ」
「ズルよくない〜!」
「でもお願いしようとしてくれてありがとうね! 気持ちだけもらうよ!」
「ああ、ちゃんとサポートしようとしてえらいぞ」
「ふふ、イブえらい〜」
「こら甘やかしてンじゃねェ!!」

エンデヴァーはこの光景を見ていて、なんとなく爆豪がイブの面倒を見るに至ったわけに思い至った。クラス全体がこんな感じであれば爆豪のような人間は無視できないだろう。意外とペットの面倒とかちゃんと見るタイプだなと察したのだった。


「お前は……いい父親になるだろうな」
「あ゛!? 誰がパパだって!?」

思わず零れた言葉に爆豪が爆発的に反応した。パパパパ、親子親子言われ過ぎて敏感になっているのだ。轟も何か言いたそうだったが、エンデヴァーの何とも言えない表情に口を噤むのだった。


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