鍋パ会


新学期になってインターンの意見交換と始業一発気合入魂するために鍋パ会A組とB組合同で開催されていた。イブは雄英に戻ると根津の下を訪ねて両親のことを聞いたが「今は会えないし、手紙も無理だろう」と言われた。「どうして?」と尋ねると少し悩んだ後に「君のお母さんの個性の関係でコミュニケーションをとれる状態ではないんだ」と教えてくれる。「いつか話せる?」と聞くと「……わからない」と根津は素直に答えてくれた。イブはそれでとりあえず納得することにした。

そしてB組の面子が少しずつ集まりだし、物間がバーンと登場したときイブは爆豪と砂藤の合作であるキムチ鍋を食べていた。


「かっちゃんこれ辛い〜」
「辛いの食えねぇ癖に食うからだろうが」
「気になったんだもん〜」
「!? きみ、口が真っ赤じゃないか! ちょっと待ってて」
「ものまくん?」
「なんだ?」

香辛料で口が少し赤くなったイブを見るや否や、物間はB組が持ってきたジュースが入っている袋から飲むヨーグルトを持ってきてイブに差し出した。ご丁寧に蓋まで開けてくれている。


「ほらこれ飲んで」
「いいの? おいしそー」
「辛いの少しは引くはずだから」
「ありがとー!」

ごくごくと飲むヨーグルトを飲むイブに物間がほっと息をついた。それを切島が物間の奴、いつもなら小言ついてくんのに言わねぇんだなと内心感心していた。物間も少しずつ成長しているのである。

だが成長しているのはイブに関してだけだったようで、イブがもう大丈夫だと判断するとA組の鍋の品定めが始まり、いつものように爆豪の導火線に火をつけてA組とB組の鍋対決が始まってしまうのであった。







「ふぁああ! イブすき焼き好きなのー!」
「そりゃよかった。おかわりしていいからたくさん食べろよー」
「ありがとー!」

鱗から卵と具が入ったすき焼きの器を受け取り、イブは幸せそうに舌鼓を打っていた。この甘辛いタレがたまらない。はふはふしながら食べていると、次の鍋が来た。


「なんだよ、海鮮鍋か? でもそれにしちゃ白身魚しか入ってないじゃん」
「とりあえず食べてみたら?」

白身魚と野菜の鍋。イブが野菜にげっという顔をしたが、緑谷が「ブイヤベースの時みたいに美味しいかもしれないよ……!」と元気づけてくれた。恐る恐る椀を受け取り、食べてみると――


「ふぁああ……!」
「ケロ〜……!」
「口福……!」
「ウマーイ!」

もうみんな腰砕けになってしまった。なんだこの魚、となっていると八百万が説明してくれた。クエと言うらしい。鍋の王様とも呼ばれる鍋をイブたちは食したのだ。物間が超のつく高級魚で宍田の実家から送られてきたものだと説明する。宍田も八百万と並ぶセレブなのだ。
全部食したところで投票に移ろうとしたとき「あ、待って! これも見てみて!」と葉隠がスマホを差し出した。


「食べる前に撮っといたんだー! うちの鍋元々はこんな形だったんだよ!」
「なんだこれは……!! 芸術じゃないか……!!」
「すごいなこれ。高級な料亭とかで出てくるやつじゃん」
「イブちゃんが盛り付けてくれたのー!」
「君が!?」
「えー! イブすごーい! お料理もオシャレさんノコね!」
「よく出来てる、さすが俺の妹……」
「えへへ、デコレーション好きなんだぁ。フランス料理よく食べるんだけど、きれいに盛り付けてあるから、なんかやりたくなっちゃったんだよね」
「お料理って見た目も大事じゃない? これも踏まえて投票しようよ!」
「……確かに一理あるね。料理は味も見た目もどちらも備えてなくてはならない……やるじゃないかA組……!」

物間は意外な伏兵に歯噛みした。まさか自分のおすすめしたフランス料理からこんな着想を得てくるとは思わなかったのだ。フランス料理の良さを分かってもらえたらいいと思っていただけに、ちゃんと理解している分嬉しいやら手強いやら複雑であった。

そして映えた鍋に心揺らいだB組女性陣がA組の鍋に集中したりなどして、激戦の果てにやはり味で一線を画した。クエ鍋が一番をもぎ取ったのであった。イブもクエ鍋に票を入れた一人である。
けれど対決であったため罰ゲームが待っていたらしい。B組が作る闇鍋をイブたちA組は食べることになったのだった。







「ん? うーん……取れない」
「あ、じゃあ私がとってもいいか? 何にあたるかわかんないけど……」
「いつかちゃんおねがーい! イブお箸使うのへたっぴなんだよね」
「みたいだなぁ……」
「これでもマシになった方だわ」

爆豪はため息混じりであった。なるべく箸を使わせているのだが、豆類を挟むのは難しいらしく、暗闇では狙いが定まらないのか空振りばかりをしていた。まさに空振り三振、見兼ねた拳藤が代わりに取ってくれたものをイブは口に運んだ。


「ぬぅうう……」
「なんだった……?」
「イブにはわかる……これいちご。それもあまおう……でも台無しっ!」
「いちご……あまおう……」

なんだかピンポイントにあててしまった。もしかしてもしなくてもこれを入れたのは物間だろう。拳藤が呆れたように物間を見ると、口笛でも吹きそうだった。いやでもまずいってよ。台無しだってよ。
それからもこの闇鍋が生み出した混沌は続くのであった。


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