いよいよ始まった傀薇と轟の準決勝試合。
やはり轟は開幕大氷結を行い、傀薇は全身から針を飛ばし回避した。けれどやはり轟は氷結しか使わず、傀薇との消耗戦だった。
「手繰……相変わらずだな」
「無茶上等でしてよ。諦めが悪いって言いましたでしょう?」
「……そうだったな」
大規模な轟の氷結にマリオネットを使うのは大仕事である。氷をある程度分裂させ、それを飛ばすもやはり次がくる。轟に直接マリオネットを使おうにも射程外な上に常に氷を盾にされている状態だった。それでも傀薇は足掻く。轟に許容上限があるのを緑谷戦で知った。突破口はある。
「ねぇ、轟……わたくしもあなたに伝えたいことがありますの……!」
「好敵手ってやつならもう聞き飽きた……!」
「それもそうですけどそれとは別ですわ! わたくしね、知っているんですの! あなたの個性はあなただけのものだってこと!」
個性の話になり、轟の顔が険しくなる。地雷なのだ、その話は。それでも傀薇は続ける。知ってほしいのだ轟に、教えたいのだ、どうしても。
「あなたの氷 がお母様のものでないように、あなたの炎 だって轟だけの個性 なのですわ!!」
「なにを……!!」
「轟! わたくし知ってますの!! あなたが本当はとっても情熱的 奴だってこと……!!」
手繰傀薇は知っている。氷のように心が冷え切っていた轟が本当は熱い心を秘めていることを。だって轟焦凍という人はこんなにも傷ついているのに、こんなにももがいている。諦めて流されるまま進んだ方が楽なのに、それでも轟はずっと戦っている。エンデヴァーと、自分の中の憎しみとずっと火傷を負ったあの日から一人でずっと戦っているのだ。それが並大抵の精神では為し得ないことを手繰傀薇はよく知っている。
「お前に……何がっ」
「わかりますわ!! だってだからあなたは!!ヒーローアカデミア に来たのでしょう!!」
轟の瞳が揺れる。また迷子のような瞳だった。迷っている、ずっと轟は緑谷からきっかけを与えられて迷っている。原点 を思い出してしまったから。憧れたオールマイトの姿。ただ自分もあんな風になりたかったということを。
「否定したいだけならあなたはヒーローなんて目指さなかった! でもあなたはここにいる!! ヒーローになろうとしてる! それは轟! あなたがずっと戦っている証拠ですわ!!」
「……手繰、俺は……」
「いいんですの轟! 迷ったって、立ち止まったって! だってあなたはまた立ち上がれる人だから!! 轟焦凍という人間は……! ずっと一人で戦ってもがいてる! そんな強さを秘めた人なのだから!!」
轟の迷いが大きくなる。迷っても立ち止まってもいいと言ってくれた人は今までいなかった。その上で自分が立ち上がれる人間だと全幅の信頼を寄せてくれることも。緑谷は原点 を思い出させてくれた。自分の個性なのだと言ってくれた。傀薇は――ただどこまでも信じてくれる人だった。
「お前……なんでそんなに信じてんだ……」
「そんなの!! わたくしが認めた好敵手 だからに決まってますわ!!」
すがすがしいほどの笑顔で言われたそれに轟は笑ってしまった。理由になってねぇ。いや傀薇には理由になっているのだ。なんだか少しだけ心が軽くなった気がしてくる。背負っていた重い荷を傀薇が少しずつ降ろしてくれている気がする。
「手繰傀薇は無限の可能性を秘めていますの!! そのわたくしが好敵手と認めた轟焦凍でしてよ!! あなたが乗り越えられないものなんてありませんわ!!」
「すげぇ自信だな。ほんと、お前はいつも――」
「いつだって前を向きますわ! だって進まなきゃ何も救えないんですもの! ヒーローになるんですもの!! あなただってそうでしょう! 轟!!」
「……ああ!」
俺もなりたい、ヒーローに。でもやっぱり左はまだ使えないんだ。迷ったままこれを戦闘で使えない。その轟の心の内を察したように傀薇は笑う。それでいいと、迷っていい、立ち止まっていいんだと。今すぐ立てなくたって轟は必ず立ち上がれるとどこまでも信じている。今が立ち止まって考えるときなのだと傀薇は理解していた。そして自分の言葉が轟にちゃんと届いていることも理解していた。だからそれでいいのだ。傀薇のヒーロー活動は、いや……好敵手への𠮟咤激励は成功したのだから。
轟は霜が降りて鈍ってしまった身体を左で温めた。少しだけ、傀薇の無条件の全幅の信頼に応えてみたかった。鈍った身体が戻っていく、そして炎を消した。自分の身体を温めてくれるその炎が、初めて優しいものに感じた瞬間だった。
「ありがとう、手繰……俺の心は……救われた」
「……それは……なによりですわ……」
最大出力の氷結が傀薇を襲う寸前、そんなことを轟に言われた。その言葉を聞いた傀薇の表情は満ち足りたものだった。
「手繰さん場外!! 決勝戦進出は轟くん!!」
氷結はバラバラにできたが、その押し出された威力まではどうにもできず、場外になってしまった。
傀薇は3位だった。でもとても満ち足りている。だって場外に投げ出された傀薇に歩みよって手を差し伸べてくれた轟はもう迷子の顔をしていなかったから。轟焦凍はもう立ち上がっている。手を掴んだ傀薇をちゃんと見ている。この瞬間二人は誰から見ても紛れもなく好敵手だった。
やはり轟は開幕大氷結を行い、傀薇は全身から針を飛ばし回避した。けれどやはり轟は氷結しか使わず、傀薇との消耗戦だった。
「手繰……相変わらずだな」
「無茶上等でしてよ。諦めが悪いって言いましたでしょう?」
「……そうだったな」
大規模な轟の氷結にマリオネットを使うのは大仕事である。氷をある程度分裂させ、それを飛ばすもやはり次がくる。轟に直接マリオネットを使おうにも射程外な上に常に氷を盾にされている状態だった。それでも傀薇は足掻く。轟に許容上限があるのを緑谷戦で知った。突破口はある。
「ねぇ、轟……わたくしもあなたに伝えたいことがありますの……!」
「好敵手ってやつならもう聞き飽きた……!」
「それもそうですけどそれとは別ですわ! わたくしね、知っているんですの! あなたの個性はあなただけのものだってこと!」
個性の話になり、轟の顔が険しくなる。地雷なのだ、その話は。それでも傀薇は続ける。知ってほしいのだ轟に、教えたいのだ、どうしても。
「あなたの
「なにを……!!」
「轟! わたくし知ってますの!! あなたが本当はとっても
手繰傀薇は知っている。氷のように心が冷え切っていた轟が本当は熱い心を秘めていることを。だって轟焦凍という人はこんなにも傷ついているのに、こんなにももがいている。諦めて流されるまま進んだ方が楽なのに、それでも轟はずっと戦っている。エンデヴァーと、自分の中の憎しみとずっと火傷を負ったあの日から一人でずっと戦っているのだ。それが並大抵の精神では為し得ないことを手繰傀薇はよく知っている。
「お前に……何がっ」
「わかりますわ!! だってだからあなたは!!
轟の瞳が揺れる。また迷子のような瞳だった。迷っている、ずっと轟は緑谷からきっかけを与えられて迷っている。
「否定したいだけならあなたはヒーローなんて目指さなかった! でもあなたはここにいる!! ヒーローになろうとしてる! それは轟! あなたがずっと戦っている証拠ですわ!!」
「……手繰、俺は……」
「いいんですの轟! 迷ったって、立ち止まったって! だってあなたはまた立ち上がれる人だから!! 轟焦凍という人間は……! ずっと一人で戦ってもがいてる! そんな強さを秘めた人なのだから!!」
轟の迷いが大きくなる。迷っても立ち止まってもいいと言ってくれた人は今までいなかった。その上で自分が立ち上がれる人間だと全幅の信頼を寄せてくれることも。緑谷は
「お前……なんでそんなに信じてんだ……」
「そんなの!! わたくしが認めた
すがすがしいほどの笑顔で言われたそれに轟は笑ってしまった。理由になってねぇ。いや傀薇には理由になっているのだ。なんだか少しだけ心が軽くなった気がしてくる。背負っていた重い荷を傀薇が少しずつ降ろしてくれている気がする。
「手繰傀薇は無限の可能性を秘めていますの!! そのわたくしが好敵手と認めた轟焦凍でしてよ!! あなたが乗り越えられないものなんてありませんわ!!」
「すげぇ自信だな。ほんと、お前はいつも――」
「いつだって前を向きますわ! だって進まなきゃ何も救えないんですもの! ヒーローになるんですもの!! あなただってそうでしょう! 轟!!」
「……ああ!」
俺もなりたい、ヒーローに。でもやっぱり左はまだ使えないんだ。迷ったままこれを戦闘で使えない。その轟の心の内を察したように傀薇は笑う。それでいいと、迷っていい、立ち止まっていいんだと。今すぐ立てなくたって轟は必ず立ち上がれるとどこまでも信じている。今が立ち止まって考えるときなのだと傀薇は理解していた。そして自分の言葉が轟にちゃんと届いていることも理解していた。だからそれでいいのだ。傀薇のヒーロー活動は、いや……好敵手への𠮟咤激励は成功したのだから。
轟は霜が降りて鈍ってしまった身体を左で温めた。少しだけ、傀薇の無条件の全幅の信頼に応えてみたかった。鈍った身体が戻っていく、そして炎を消した。自分の身体を温めてくれるその炎が、初めて優しいものに感じた瞬間だった。
「ありがとう、手繰……俺の心は……救われた」
「……それは……なによりですわ……」
最大出力の氷結が傀薇を襲う寸前、そんなことを轟に言われた。その言葉を聞いた傀薇の表情は満ち足りたものだった。
「手繰さん場外!! 決勝戦進出は轟くん!!」
氷結はバラバラにできたが、その押し出された威力まではどうにもできず、場外になってしまった。
傀薇は3位だった。でもとても満ち足りている。だって場外に投げ出された傀薇に歩みよって手を差し伸べてくれた轟はもう迷子の顔をしていなかったから。轟焦凍はもう立ち上がっている。手を掴んだ傀薇をちゃんと見ている。この瞬間二人は誰から見ても紛れもなく好敵手だった。
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