「傀薇ちゃん! 大丈夫かい!」
「ええ! わたくしの個性の見せ場ですもの!! 気合いしかありませんわーー!!」
倒壊した建物をマリオネットで支え、中に残された人々をマジェスティックが救出していた。マジェスティックのマホウは汎用性が高く、傀薇のマリオネットも人命救助に大いに貢献していた。あらかた救出をし終え、次の場所に行こうとしていたところ、傀薇のスマホが鳴る。
それは虫の知らせだった。なんだか見なくてはならない気がした。「マジェスティックごめんなさい、わたくしどうしても見なくてはなりませんの!」「傀薇ちゃんがそう言うなら大事なことなんだろう! いいよ見なさい!」「ありがとうですわ!」頑張り屋で真面目な傀薇の人となりを知っているマジェスティックが許可を出した。そうして開いたチャットには緑谷が位置情報だけ送っていた。傀薇がいる保須と同じだった。
「マジェスティック! 友達が近くで助けを求めていますの! わたくし、わたくし――」
「承知した! 行っておいで!」
「マジェスティック……!」
「その代わり決して無理はせず、対敵するようなことがあったら戦闘は避けて逃げること! それがかなわない場合は自分と友だちの命を守るために正しく個性を使うんだ! いいね!」
「約束しますわマジェスティック。ありがとう、行ってきますわ!!」
マジェスティックが民間人を救出するために駆ける傍ら、傀薇は緑谷が送ってきた位置情報を頼りに走った。間違えて送信したなら間違いだと送る人だ。そうじゃなかった、ならきっと緑谷がピンチなのだ。
「あら、轟もいましたのね!」
「!! 手繰さん……!!」
轟の血を舐めようとしたヒーロー殺しに針を投げて阻止したのは傀薇だった。暗器を使うだけあって針ははじかれてしまったがそれでも轟から距離を取らせることができた。
倒れている飯田と緑谷に、近くにいる動けないヒーローを見て合点がいく。
「ヒーロー殺しですの……! 轟! わたくしが三人を運びますわ! あなたはヒーロー殺しを牽制してくださいまし! 人命優先、逃げますわよ……!」
「いやダメだ……! 逃げる隙がねぇ……!」
確かにステインの身のこなしは素早すぎた。一気に距離を詰められる。ナイフが掠めようとしているのをギリギリで避ける。緑谷が血を見せてはだめだと叫ぶ。血を摂取することで身体の自由を奪う個性。なるほどだからみんなそんなぐったりしているのかと理解する。
「何故……三人とも……何故だ……やめてくれよ……兄さんの名を継いだんだ……僕がやらなきゃ、そいつは僕が……」
「継いだのかおかしいな……俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな」
「飯田……憎しみに捕らわれてはなりませんわ! あなたの兄は! 誇り高きインゲニウムは! 私怨で敵と戦い、救うことを後回しにするような愚か者ではなかったはずですわ!!」
「おまえん家も裏じゃ色々あるんだな」
「轟! 来ましてよ……!!」
轟の氷結を「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る……愚策だ」とステインがいい、轟が炎を出して超爆風を放とうとした瞬間ナイフが飛んでくる。傀薇の個性が間に合わないと判断し、傀薇は自分の身を盾にして轟を庇った。
「っ!」
「手繰……!!」
「おまえたち良いな……」
上からステインが攻撃を仕掛けてくるけれど対応が間に合わない、そんなとき動けなかったはずの緑谷が動いた。
「緑谷!」
「あなた動けますの!?」
「なんか普通に動けるようになった!!」
「時間制限か」
「いやあの子が一番後にやられたハズ!」
緑谷が蹴落とされる。轟の氷で距離をとった。あの時とっさに身体が動いて気づけば庇っていたけれど、轟に怪我をさせなくてよかったと思う。距離をとれる氷結は今ものすごく大事だ。
「血を摂り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたってことは考えられるのは3パターン、人数が多くなる程効果が薄くなるか摂取量か……血液型によって効果に差異が生じるか」
「血液型……俺はBだ」
「僕はA……」
「血液型……ハァ、正解だ」
でもわかったところでどうしようもなかった。傀薇は血を流しすぎているし、かといって轟たちもステインの動きに反応できるわけではない。早すぎるのだ。そして巧みだ。暗器をはじき切れていない。
傀薇のバカ力をもってすれば倒れているヒーローと飯田を個性で連れていくことはできるだろうが、ステインがそれを許さない。まさにマジェスティックが最終手段として残した自分と友だちの命を守るために個性を行使するしかないのだ。ごめんなさいマジェスティック……ルール違反ですわ。ヒーロー活動を正しく行えない、でも守るために今はルールを破らなきゃなりませんの。だってわたくし誰も死なせたくないんだもの……!
「轟! 緑谷! 三人で守りますわよ!! 誰も死なせませんの!!」
「ああ……!!」
「うん!!」
緑谷が突っこんでいく。轟が氷結をステインに放つ。傀薇は轟の当たらなかった氷に糸を付着させ再びステインに迫らせた。腕に食い込んだナイフがなかなかくるが、そんなことは関係ない。そんなことは個性を行使できない理由にはならない。守るために使う個性なのだから、守れなくては意味がないのだ。
氷を避けてステインが轟に迫る。傀薇が飛び出そうとするもナイフを足に投げられ傷を負ってしまう。轟にステインがナイフを振り上げようとしているのが目に映った。
「やめてほしけりゃ立て!!!」
「轟っ!!」
「なりてえもんちゃんと見ろ!!」
轟に迫ったナイフに絶対当ててやるという気概で針を命中させた。付着する針にやっぱりわたくしできますの!! ここぞというところでちゃんとできますの!! 可能性の塊ですもの!! と自分を心の中で鼓舞する。鼓舞しなくてはならない、強がりでもなんでも。轟を、みんなを自分が守るのだ。こんなの全く痛くありませんわと足に刺さったナイフを抜いた。立たなくちゃ、ヒーロー殺しに誰も殺させないために。
「あれを弾くか……だが次はどうだ……!」
「(っ……んで避けられんだよコレが!)」
「言われたことはないか? 個性≠ノかまけ挙動が大雑把だと」
「化けモンが……」
間に合わない、刀が轟の身を裂こうとしている。糸、針……だめだ届かない振り降ろすが早い。傀薇の口から「轟ぃっ!!」と悲鳴が零れる。間に合わない、自分じゃ間に合わない、誰かお願い轟を助けて。その瞬間飯田が動いた。ステインの個性の効果時間が切れたのだ。
「飯田くん!!!」
「解けたか意外と大したことねぇ個性≠セな」
「よくやりましたわ飯田! 今の最高にヒーローでしてよ!」
「轟くんも手繰くんも緑谷くんも関係ない事で……申し訳ない……」
「またそんな事を……」
「だからもう三人にこれ以上血を流させるわけにはいかない」
飯田の言葉にステインが感化され取り繕っても人間の本質は変わらないという。飯田は贋物で英雄≠歪ませる社会の癌だと。けれど傀薇はそれは違うと思う。人はいつだって変われるのだ。その人にきっかけがあって、そうありたいと思えば、そのように行動すれば人は変わるのだと手繰傀薇は信じている。
「言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格など……ない。それでも……折れるわけにはいかない……俺が折れればインゲニウムは死んでしまう」
飯田はもう大丈夫だ。だってもう前を見ている。なりたいヒーローをちゃんと見ているのだ。インゲニウムを本当の意味で継いだ今、飯田はこの瞬間からいいヒーローになると決まっているのだ。
そこからは凄まじい戦いだった、飯田の足を轟が冷やしている間緑谷と傀薇がステインを近づけないようにする。轟に飛んできたナイフが捌ききれず刺さろうとするも、飯田が身を挺して庇った。コントロールが鈍っている、腕に受けたナイフが悪かった。けれど手首から先は無事なのだ、やれる、やる。
緑谷の拳と飯田の蹴りが炸裂した。
「お前を倒そう! 今度は……! 犯罪者として――ヒーローとして!!」
そうしてたたみかけるとヒーロー殺しステインは気絶していた。
「ええ! わたくしの個性の見せ場ですもの!! 気合いしかありませんわーー!!」
倒壊した建物をマリオネットで支え、中に残された人々をマジェスティックが救出していた。マジェスティックのマホウは汎用性が高く、傀薇のマリオネットも人命救助に大いに貢献していた。あらかた救出をし終え、次の場所に行こうとしていたところ、傀薇のスマホが鳴る。
それは虫の知らせだった。なんだか見なくてはならない気がした。「マジェスティックごめんなさい、わたくしどうしても見なくてはなりませんの!」「傀薇ちゃんがそう言うなら大事なことなんだろう! いいよ見なさい!」「ありがとうですわ!」頑張り屋で真面目な傀薇の人となりを知っているマジェスティックが許可を出した。そうして開いたチャットには緑谷が位置情報だけ送っていた。傀薇がいる保須と同じだった。
「マジェスティック! 友達が近くで助けを求めていますの! わたくし、わたくし――」
「承知した! 行っておいで!」
「マジェスティック……!」
「その代わり決して無理はせず、対敵するようなことがあったら戦闘は避けて逃げること! それがかなわない場合は自分と友だちの命を守るために正しく個性を使うんだ! いいね!」
「約束しますわマジェスティック。ありがとう、行ってきますわ!!」
マジェスティックが民間人を救出するために駆ける傍ら、傀薇は緑谷が送ってきた位置情報を頼りに走った。間違えて送信したなら間違いだと送る人だ。そうじゃなかった、ならきっと緑谷がピンチなのだ。
「あら、轟もいましたのね!」
「!! 手繰さん……!!」
轟の血を舐めようとしたヒーロー殺しに針を投げて阻止したのは傀薇だった。暗器を使うだけあって針ははじかれてしまったがそれでも轟から距離を取らせることができた。
倒れている飯田と緑谷に、近くにいる動けないヒーローを見て合点がいく。
「ヒーロー殺しですの……! 轟! わたくしが三人を運びますわ! あなたはヒーロー殺しを牽制してくださいまし! 人命優先、逃げますわよ……!」
「いやダメだ……! 逃げる隙がねぇ……!」
確かにステインの身のこなしは素早すぎた。一気に距離を詰められる。ナイフが掠めようとしているのをギリギリで避ける。緑谷が血を見せてはだめだと叫ぶ。血を摂取することで身体の自由を奪う個性。なるほどだからみんなそんなぐったりしているのかと理解する。
「何故……三人とも……何故だ……やめてくれよ……兄さんの名を継いだんだ……僕がやらなきゃ、そいつは僕が……」
「継いだのかおかしいな……俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな」
「飯田……憎しみに捕らわれてはなりませんわ! あなたの兄は! 誇り高きインゲニウムは! 私怨で敵と戦い、救うことを後回しにするような愚か者ではなかったはずですわ!!」
「おまえん家も裏じゃ色々あるんだな」
「轟! 来ましてよ……!!」
轟の氷結を「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る……愚策だ」とステインがいい、轟が炎を出して超爆風を放とうとした瞬間ナイフが飛んでくる。傀薇の個性が間に合わないと判断し、傀薇は自分の身を盾にして轟を庇った。
「っ!」
「手繰……!!」
「おまえたち良いな……」
上からステインが攻撃を仕掛けてくるけれど対応が間に合わない、そんなとき動けなかったはずの緑谷が動いた。
「緑谷!」
「あなた動けますの!?」
「なんか普通に動けるようになった!!」
「時間制限か」
「いやあの子が一番後にやられたハズ!」
緑谷が蹴落とされる。轟の氷で距離をとった。あの時とっさに身体が動いて気づけば庇っていたけれど、轟に怪我をさせなくてよかったと思う。距離をとれる氷結は今ものすごく大事だ。
「血を摂り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたってことは考えられるのは3パターン、人数が多くなる程効果が薄くなるか摂取量か……血液型によって効果に差異が生じるか」
「血液型……俺はBだ」
「僕はA……」
「血液型……ハァ、正解だ」
でもわかったところでどうしようもなかった。傀薇は血を流しすぎているし、かといって轟たちもステインの動きに反応できるわけではない。早すぎるのだ。そして巧みだ。暗器をはじき切れていない。
傀薇のバカ力をもってすれば倒れているヒーローと飯田を個性で連れていくことはできるだろうが、ステインがそれを許さない。まさにマジェスティックが最終手段として残した自分と友だちの命を守るために個性を行使するしかないのだ。ごめんなさいマジェスティック……ルール違反ですわ。ヒーロー活動を正しく行えない、でも守るために今はルールを破らなきゃなりませんの。だってわたくし誰も死なせたくないんだもの……!
「轟! 緑谷! 三人で守りますわよ!! 誰も死なせませんの!!」
「ああ……!!」
「うん!!」
緑谷が突っこんでいく。轟が氷結をステインに放つ。傀薇は轟の当たらなかった氷に糸を付着させ再びステインに迫らせた。腕に食い込んだナイフがなかなかくるが、そんなことは関係ない。そんなことは個性を行使できない理由にはならない。守るために使う個性なのだから、守れなくては意味がないのだ。
氷を避けてステインが轟に迫る。傀薇が飛び出そうとするもナイフを足に投げられ傷を負ってしまう。轟にステインがナイフを振り上げようとしているのが目に映った。
「やめてほしけりゃ立て!!!」
「轟っ!!」
「なりてえもんちゃんと見ろ!!」
轟に迫ったナイフに絶対当ててやるという気概で針を命中させた。付着する針にやっぱりわたくしできますの!! ここぞというところでちゃんとできますの!! 可能性の塊ですもの!! と自分を心の中で鼓舞する。鼓舞しなくてはならない、強がりでもなんでも。轟を、みんなを自分が守るのだ。こんなの全く痛くありませんわと足に刺さったナイフを抜いた。立たなくちゃ、ヒーロー殺しに誰も殺させないために。
「あれを弾くか……だが次はどうだ……!」
「(っ……んで避けられんだよコレが!)」
「言われたことはないか? 個性≠ノかまけ挙動が大雑把だと」
「化けモンが……」
間に合わない、刀が轟の身を裂こうとしている。糸、針……だめだ届かない振り降ろすが早い。傀薇の口から「轟ぃっ!!」と悲鳴が零れる。間に合わない、自分じゃ間に合わない、誰かお願い轟を助けて。その瞬間飯田が動いた。ステインの個性の効果時間が切れたのだ。
「飯田くん!!!」
「解けたか意外と大したことねぇ個性≠セな」
「よくやりましたわ飯田! 今の最高にヒーローでしてよ!」
「轟くんも手繰くんも緑谷くんも関係ない事で……申し訳ない……」
「またそんな事を……」
「だからもう三人にこれ以上血を流させるわけにはいかない」
飯田の言葉にステインが感化され取り繕っても人間の本質は変わらないという。飯田は贋物で英雄≠歪ませる社会の癌だと。けれど傀薇はそれは違うと思う。人はいつだって変われるのだ。その人にきっかけがあって、そうありたいと思えば、そのように行動すれば人は変わるのだと手繰傀薇は信じている。
「言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格など……ない。それでも……折れるわけにはいかない……俺が折れればインゲニウムは死んでしまう」
飯田はもう大丈夫だ。だってもう前を見ている。なりたいヒーローをちゃんと見ているのだ。インゲニウムを本当の意味で継いだ今、飯田はこの瞬間からいいヒーローになると決まっているのだ。
そこからは凄まじい戦いだった、飯田の足を轟が冷やしている間緑谷と傀薇がステインを近づけないようにする。轟に飛んできたナイフが捌ききれず刺さろうとするも、飯田が身を挺して庇った。コントロールが鈍っている、腕に受けたナイフが悪かった。けれど手首から先は無事なのだ、やれる、やる。
緑谷の拳と飯田の蹴りが炸裂した。
「お前を倒そう! 今度は……! 犯罪者として――ヒーローとして!!」
そうしてたたみかけるとヒーロー殺しステインは気絶していた。
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