2月26日。その日は雄英高校の入試だった。
傀薇は朝早くに起きて準備をすませ、広い中庭で身体を動かしていた。ヒーロ科の入試だけあって必ず個性や身体を使う試験になるからだ。
先に推薦で合格を決めた幼馴染の八百万百がタオルを手にそろそろ時間だと教えてくれる。
「ありがとうですわ、百」
「いえ、傀薇さん入試頑張ってくださいね。きっと傀薇さんなら大丈夫ですわ!」
「ええ、この日のために訓練も、学力だって百にたくさんお世話になりましたもの、首席で受かって見せますわ!」
キリっとした顔で自信満々に答える傀薇に八百万も特訓の日々を思い出した。頑張った、本当に頑張ったのだ。主に学力においてそれはもう頑張った。何を隠そう、傀薇は身体能力と精神力が出色する代わりに学力がとても低かったのだ。雄英高校の偏差値はなんと79である。八百万はこれはこれは心配し、ずっと勉強に付き合ってくれていたのだった。八百万が大変有能な先生であったためになんとか合格圏内にまで学力を上げた傀薇はもう向かうところ敵なしの勢いだった。本当に心意気だけは立派である。
「オ〜ホッホッホッ! ロボでしたらわたくしの向かうところ人なしですわ!!」
高笑いしながら個性、マリオネットで針を付着させロボ同士で同士討ちをさせたり、回路を強制ショートするなど確かに大活躍であった。美しいソプラノの鈴が鳴るような高笑いに反応しロボがまた寄ってきては楽々撃破していく姿は見ていて爽快だったが、近くにいた数名が向かうところ人なし? 敵なしの間違いじゃないかと冷静に心の中でツッコみをいれていたことを傀薇は知らない。すごいけどおバカが露呈している。
傀薇がすごいのはその無尽蔵かと思われる体力にあった。多くのロボを相手にしていたのにも関わらずまったく疲れた様子をみせない。個性とは身体能力である。行使すれば当然疲れるはずだが、中盤になっても傀薇に変わった様子はまったくなかった。
むしろバテてきて隙がでた受験者のフォローに回る余裕すらあった。「ありがとう! えっと、ツインテールの!」「大したことではありませんことよ〜! オ〜ホッホッホッ!」むしろハイになっている。
「まぁ! やはり最後はラスボスの登場ですわね! 待ちかねましたわ!!」
現れた純然たる脅威である0P敵 相手に傀薇は大興奮だった。逃げ惑う受験者たちを意に介さず、傀薇は胸を張って堂々とそこにいた。瞳をきらめかせ、それはあまりにも眩しく希望と自信に満ち溢れた姿だった。
「君! 危険だ! 逃げるんだ!」
「? 何を言ってますの? あれはラスボスでしょう。ラスボスを前に尻尾を巻いて逃げるヒーローがありまして!? 恥をお知りになって!」
傀薇はスーパーマリオブラザーズをやったことがなかった。プレゼント・マイクがたとえていた話もよくわからず、とりあえず最後に現れるやつはラスボスと決まっていると決めつけていた。
親切に声をかけてくれた受験者にも何を言ってますの? といった様子で返し、声をかけてた受験者は一瞬動揺するも「あんなのにかなうわけないだろ……無謀なのはヒーローとしてどうなんだ」と去ってしまった。傀薇は去っていく背中を振り返ることなく歩み出る。
「無謀かどうかはやってみなくてはわかりませんわ。でもわたくし、負ける気はありませんの……!!」
身体中から針を噴射し、的の大きい0P敵にこれでもかと刺していく。0P敵の大振りの一撃を倒壊したビルを引き寄せ盾にした。いつもテレビで見ているヒーロー活動の緊迫した現場を思わせるそれに傀薇は上機嫌だった。夢が現実に近づいていることを実感する。敵に背を向けるヒーローにだけはなりたくない。
傀薇は今度は掌から長く、太い丈夫な糸を出す、それらを幾重にも重ねより太くしていく。それらを0P敵に付着させた。
「さぁ!! ここからはわたくしと力比べでしてよ!!」
大きな大きな0P敵の回線を切りつつ転倒を試みる。こんなに大きな図体では起き上がることはまずできない。ぐっぐっと0P敵が引っ張られていく光景に、退避していた受験者たちが注目する。これはもしかして、本当にやってしまうんじゃないか……? 次第に傀薇を応援する声が集まってきて、中には駆け出してくる者がいた。
「すごいなお前! 俺、瀬呂! テープの個性! 加勢するぜ!」
「私も微力ながらお力添えを……共に悪しき獣を封じましょう」
「お心遣い感謝いたしますわ!」
テープとツルが0P敵に絡まっていく、瀬呂の他にも0P敵の標準をそらしてくれたり、飛んでくる瓦礫を気にしなくていいように払ってくれる受験者もいた。もう会場は熱気がこもっていた。その場にいた誰もが「頑張れ!」と思わず声に出した。あと少し、あと少しというところで終了の合図が鳴り響く。それでも誰も手を休めなかった。そうしてついに倒れた0P敵に会場がわっと湧いた。
「やったな! すごいぜお前!! なぁ名前は!?」
「わたくしは手繰傀薇ですわ! 名乗るほどのものでありますわ!!」
「まって情報が渋滞した。わたくし? ですわ? お嬢様なの? って名乗るほどのものなの?」
「私も自己紹介をさせてください。私は塩崎茨。あなた様の勇姿にいたく感動いたしました……!」
「それほどでもありますわね!!」
「すげぇ謙遜しねぇじゃん……」
その後も代わる代わる俺も、私も! と自己紹介が始まる。時間内にこそ倒せなかったが、それでもみんなで協力して0P敵を転倒することに成功したという実績はみんなの中に確かに自信として残ることになる。
後にプロヒーローとなった手繰傀薇について聞かれたとき、彼らはこう答える。「あいつは最初からぶっとんだやつだった」と。
手繰傀薇はこうして雄英高校ヒーロー科に入学を果たした。
「ん? レスキューPのおかげで総合1位にも関わらず首席ではないなんてどういうことですの!?」
それは筆記試験の成績が悪かったためである。合格圏内ではあるが悪すぎたため、いやもはや実技試験のとびぬけた成績がなければ入学できなかっただろう。ということで傀薇は次席扱いとなったとさ。「な、納得いきませんわ〜!!」傀薇の受難は続く。
傀薇は朝早くに起きて準備をすませ、広い中庭で身体を動かしていた。ヒーロ科の入試だけあって必ず個性や身体を使う試験になるからだ。
先に推薦で合格を決めた幼馴染の八百万百がタオルを手にそろそろ時間だと教えてくれる。
「ありがとうですわ、百」
「いえ、傀薇さん入試頑張ってくださいね。きっと傀薇さんなら大丈夫ですわ!」
「ええ、この日のために訓練も、学力だって百にたくさんお世話になりましたもの、首席で受かって見せますわ!」
キリっとした顔で自信満々に答える傀薇に八百万も特訓の日々を思い出した。頑張った、本当に頑張ったのだ。主に学力においてそれはもう頑張った。何を隠そう、傀薇は身体能力と精神力が出色する代わりに学力がとても低かったのだ。雄英高校の偏差値はなんと79である。八百万はこれはこれは心配し、ずっと勉強に付き合ってくれていたのだった。八百万が大変有能な先生であったためになんとか合格圏内にまで学力を上げた傀薇はもう向かうところ敵なしの勢いだった。本当に心意気だけは立派である。
「オ〜ホッホッホッ! ロボでしたらわたくしの向かうところ人なしですわ!!」
高笑いしながら個性、マリオネットで針を付着させロボ同士で同士討ちをさせたり、回路を強制ショートするなど確かに大活躍であった。美しいソプラノの鈴が鳴るような高笑いに反応しロボがまた寄ってきては楽々撃破していく姿は見ていて爽快だったが、近くにいた数名が向かうところ人なし? 敵なしの間違いじゃないかと冷静に心の中でツッコみをいれていたことを傀薇は知らない。すごいけどおバカが露呈している。
傀薇がすごいのはその無尽蔵かと思われる体力にあった。多くのロボを相手にしていたのにも関わらずまったく疲れた様子をみせない。個性とは身体能力である。行使すれば当然疲れるはずだが、中盤になっても傀薇に変わった様子はまったくなかった。
むしろバテてきて隙がでた受験者のフォローに回る余裕すらあった。「ありがとう! えっと、ツインテールの!」「大したことではありませんことよ〜! オ〜ホッホッホッ!」むしろハイになっている。
「まぁ! やはり最後はラスボスの登場ですわね! 待ちかねましたわ!!」
現れた純然たる脅威である0P
「君! 危険だ! 逃げるんだ!」
「? 何を言ってますの? あれはラスボスでしょう。ラスボスを前に尻尾を巻いて逃げるヒーローがありまして!? 恥をお知りになって!」
傀薇はスーパーマリオブラザーズをやったことがなかった。プレゼント・マイクがたとえていた話もよくわからず、とりあえず最後に現れるやつはラスボスと決まっていると決めつけていた。
親切に声をかけてくれた受験者にも何を言ってますの? といった様子で返し、声をかけてた受験者は一瞬動揺するも「あんなのにかなうわけないだろ……無謀なのはヒーローとしてどうなんだ」と去ってしまった。傀薇は去っていく背中を振り返ることなく歩み出る。
「無謀かどうかはやってみなくてはわかりませんわ。でもわたくし、負ける気はありませんの……!!」
身体中から針を噴射し、的の大きい0P敵にこれでもかと刺していく。0P敵の大振りの一撃を倒壊したビルを引き寄せ盾にした。いつもテレビで見ているヒーロー活動の緊迫した現場を思わせるそれに傀薇は上機嫌だった。夢が現実に近づいていることを実感する。敵に背を向けるヒーローにだけはなりたくない。
傀薇は今度は掌から長く、太い丈夫な糸を出す、それらを幾重にも重ねより太くしていく。それらを0P敵に付着させた。
「さぁ!! ここからはわたくしと力比べでしてよ!!」
大きな大きな0P敵の回線を切りつつ転倒を試みる。こんなに大きな図体では起き上がることはまずできない。ぐっぐっと0P敵が引っ張られていく光景に、退避していた受験者たちが注目する。これはもしかして、本当にやってしまうんじゃないか……? 次第に傀薇を応援する声が集まってきて、中には駆け出してくる者がいた。
「すごいなお前! 俺、瀬呂! テープの個性! 加勢するぜ!」
「私も微力ながらお力添えを……共に悪しき獣を封じましょう」
「お心遣い感謝いたしますわ!」
テープとツルが0P敵に絡まっていく、瀬呂の他にも0P敵の標準をそらしてくれたり、飛んでくる瓦礫を気にしなくていいように払ってくれる受験者もいた。もう会場は熱気がこもっていた。その場にいた誰もが「頑張れ!」と思わず声に出した。あと少し、あと少しというところで終了の合図が鳴り響く。それでも誰も手を休めなかった。そうしてついに倒れた0P敵に会場がわっと湧いた。
「やったな! すごいぜお前!! なぁ名前は!?」
「わたくしは手繰傀薇ですわ! 名乗るほどのものでありますわ!!」
「まって情報が渋滞した。わたくし? ですわ? お嬢様なの? って名乗るほどのものなの?」
「私も自己紹介をさせてください。私は塩崎茨。あなた様の勇姿にいたく感動いたしました……!」
「それほどでもありますわね!!」
「すげぇ謙遜しねぇじゃん……」
その後も代わる代わる俺も、私も! と自己紹介が始まる。時間内にこそ倒せなかったが、それでもみんなで協力して0P敵を転倒することに成功したという実績はみんなの中に確かに自信として残ることになる。
後にプロヒーローとなった手繰傀薇について聞かれたとき、彼らはこう答える。「あいつは最初からぶっとんだやつだった」と。
手繰傀薇はこうして雄英高校ヒーロー科に入学を果たした。
「ん? レスキューPのおかげで総合1位にも関わらず首席ではないなんてどういうことですの!?」
それは筆記試験の成績が悪かったためである。合格圏内ではあるが悪すぎたため、いやもはや実技試験のとびぬけた成績がなければ入学できなかっただろう。ということで傀薇は次席扱いとなったとさ。「な、納得いきませんわ〜!!」傀薇の受難は続く。
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