傷ついた身体でそれでも脳無という化け物の精神世界に入ってしまった傀薇は外傷もさることながら、それより内側の精神が傷ついていたため目覚めるのに三日を要していた。その時、脳無の中に精神が複数あったのを確認しており、それが脳無が改造人間であることを裏付ける決定的なものになった。
「とりあえず1年A組、無事に集まれてなによりだ」
全寮制導入となり、家庭訪問が行われ相澤が全生徒の親御さんに説明に回った。中には葉隠のように苦戦したところもあったが結果的にみんな寮制導入を受け入れてくれた。ちなみに傀薇の家は親より兄二人の説得が大変だった。襲撃云々より末っ子で兄妹唯一の女ということもありただ単に兄に可愛がられていたため寮というもの自体が却下されたのだ。けれどそれも傀薇が最高のヒーローになるために必要なことだと最後は受けいれてくれたのだった。
これからは仮免取得に向けて動いていくという説明のあと、相澤が大事な話だと言って話した内容は少なからず衝撃を与えた。
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この5人はあの晩あの場所 へ爆豪救出に赴いた」
「え……」
「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は爆豪・葉隠・耳郎・手繰以外全員除籍処分にしてる」
相澤は続ける、オールマイトの引退でしばらく混乱が続く、連合の動きも読めない以上今雄英から人を追い出すわけにはいかないと。行った5人はもちろん、知っていながら止められなかった12人も理由はどうあれ信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してほしいと締めくくられ、中に入って元気にいこうなどという相澤にみんなついていけなかった。
思いつめた表情をしているみんなと切島みた爆豪が上鳴を連れていく。そして出てきた上鳴は「うェ〜〜〜い……」とアホ面を晒していた。
「バフォッ」
「何? 爆豪何を……」
「切島」
「え怖っ、何カツアゲ!?」
「違え俺が下した金だ! いつまでもシミったれられっとこっちも気分悪ィんだ」
その額は切島が爆豪奪還のためにアマゾンでぽちった暗視鏡の値段だった。「いつもみてーに馬鹿晒せ」と口にする爆豪の気遣いに切島は爆豪の思いやりを感じた。
「皆! すまねえ……!! 詫びにもなんねえけど……今夜はこの金で焼き肉だ!!」
「いいじゃありませんの! わたくし焼くだけなら得意ですわ!」
「焼くに得意もなんもねぇンだわ!」
寮生活初日は慌ただしいスタートだった。一通り設備の案内をされたあと各自部屋作りへと移行する。そうして終わったころ芦戸の提案でお部屋披露大会が始まった。
「和室だ!! 造りが違くね!?」
「まぁ……轟リフォームしましたのね。素晴らしいですわ!」
「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねぇ」
「理由はいいわ! 当日即リフォームってどうやったんだおまえ!」
「……頑張った……」
「何だよこいつ!!」
実家が完全に洋風建築というか宮殿と見まごうそれであるため、傀薇にとって畳というものは新鮮だった。興味深げに畳を触る傀薇に轟が「気になるなら今度部屋に遊びに来ればいい」と誘った。傀薇はにっこりと笑って「そうですわね、今度お邪魔しますわ」と返した。轟の恋心を知っている緑谷たちがそのやり取りを頑張れ轟くん……! とこっそり応援していた。
「わたくしの部屋ですけれど、少しベッドが大きすぎましたの。手狭で申し訳ないですわ……」
「……まじででかっ! お姫様のベッドじゃーん!」
「天蓋……」
「わー! こっちには可愛いぬいぐるみ! あれ写真がある……わ! すごいイケメンが二人も!! もしかしてどっちか傀薇ちゃんの彼氏!?」
葉隠が興奮したように言ったそれに轟がぴくっと反応する。傀薇が答えるそれより早く八百万が「傀薇さんのお兄様方ですわ!」と食い気味に主張した。
「あー言われてみれば似てる! 尖った耳とか、釣り目がちの大きな目とか!」
「こんなイケメンなお兄さんが二人もいるんだ! いいなぁ傀薇ちゃん!」
「まぁ……どちらも尊敬する兄ですわね。でも少々過保護で困ってますの」
「え〜! でもうらやまし〜!」
傀薇の部屋というより話題は兄のそれであった。轟は彼氏でも友達でもなく兄だというそれにほっとした。結局部屋王は部屋と関係なく、おいしいシフォンケーキでおもてなしをしてくれた砂藤の部屋だった。唯一畳というものに関心を示した傀薇が女子の中で砂藤ではなく轟に入れていた。その一票にこれ以上ないものを感じた轟が浮かれているのを緑谷が微笑ましそうに見ていた。
だが眠気に負けて解散しようとするも、轟達爆豪奪還組は蛙吹に話があると呼び出される。そこで蛙吹が抱えていた苦悩を初めて知り、5人は改めて自分たちの行動の責任を感じたのだった。
「轟? こんな時間に女性の部屋を訪ねるのはよくありませんわよ? どうなさったの?」
蛙吹と話し終わった後、眠気を押し切って傀薇の部屋を轟は訪れていた。蛙吹の話を聞いて、轟は前に重ねた傀薇の言葉を思い出し、話さなければならないと来ていたのだ。
どこか深刻な様子のそれに傀薇が轟を中へ招き入れた。廊下でする話ではないのだろうと察したからだ。ベッドで圧迫されているがかろうじてテーブルスペースを確保したそこにハーブティーを入れる。緊張した様子だったので傀薇の心遣いだった。
「俺……爆豪を助けに行ったとき、あれが間違ってるって思わなかったんだ。合宿で目の前で爆豪が攫われて、でもまだ手を伸ばせるんだって気づいたとき俺はそれが間違ってるなんて思わなかった」
「まぁ、轟はそういう奴ですわよね。良くも悪くも真っ直ぐすぎるのですわ」
あっさりと言い切った傀薇に轟は何も言えなかった。カップに口をつけてハーブティーを飲む傀薇は寝る前というのもあり髪をおろしていた。傷だらけだった身体も回復したようで傷跡もなくなっていた。それに安堵するもあの時の光景が忘れられかった。
「俺、お前が倒れたってしってすげぇ後悔した」
「後悔? 何をですの?」
「お前のピンチに俺は駆けつけられなかった……」
「そんなの場所が違うんだから当たり前ですわ。わたくしが脳無と戦っている間、あなたも別の場所で爆豪を守ろうと戦っていたではありませんの」
「そうだけど、そうじゃねぇ……俺がお前を守りたかった……俺も八百万みてぇにお前のヒーローになりたかったんだ」
さすがにこの告白には傀薇も目を見開いた。まさか轟からそんな話がとんでくるとは思ってなかったのだ。
「爆豪の奪還、もしお前の意識が戻ってたら……お前もついてきてくれたのか……?」
今度の轟の表情は複雑だった。そうであってほしいという感情と、やっぱりいやだという感情が見え隠れする。いつになく不安定な轟の様子に傀薇は少し困ってしまった。
「ルール違反はいけませんわ。それにわたくしたちは保須で学んだはずですもの」
「……お前も飯田側か」
「やっぱり飯田はそうでしたのね。ちゃんと学習しててえらいですわ」
「どうせ俺は学習しねぇ……」
拗ねた様子でそっぽを向く轟に傀薇は苦笑する。今日の轟はなんだか子供みたいだ。でも、と傀薇は思う。自分だってルール違反をするところだったのだ。嫌な予感がすると身体が勝手に動いていた。気づいたときには身体が動いて走っていたのだから。
「でもきっとわたくしも――じっとなんてしていられませんでしたわ」
「! 手繰」
「頭ではわかっているはずなのに、身体が勝手に動いてしまいますの。だって級友のピンチなんですもの。手を伸ばせるとしってしまったら……きっと飛び出してしまいますわ」
その返答に轟が「やっぱりお前はお前だ」とほっとしたように口にする。けれどどこか拗ねたままの表情に傀薇はおや? と訝しんだ。まだ拗ねてらっしゃる。轟、と声をかけようとしたところで轟の手が傀薇の頬に伸びた。
「お前が爆豪気にしてんの、嫌だ」
「轟? どうしましたの?」
「俺のことだけみててくれ……」
ついに場所を移動して抱き着いてきた轟にさすがの傀薇も困ってしまう。以前女子会で雛鳥のそれだとはいったけれどさすがに度が過ぎている。ここは無暗に女性に触れてはならないと教えなければと意を決したところ轟が衝撃の告白をする。
「おまえが好きだ……俺と付き合ってくれ」
「とりあえず1年A組、無事に集まれてなによりだ」
全寮制導入となり、家庭訪問が行われ相澤が全生徒の親御さんに説明に回った。中には葉隠のように苦戦したところもあったが結果的にみんな寮制導入を受け入れてくれた。ちなみに傀薇の家は親より兄二人の説得が大変だった。襲撃云々より末っ子で兄妹唯一の女ということもありただ単に兄に可愛がられていたため寮というもの自体が却下されたのだ。けれどそれも傀薇が最高のヒーローになるために必要なことだと最後は受けいれてくれたのだった。
これからは仮免取得に向けて動いていくという説明のあと、相澤が大事な話だと言って話した内容は少なからず衝撃を与えた。
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この5人は
「え……」
「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ。色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は爆豪・葉隠・耳郎・手繰以外全員除籍処分にしてる」
相澤は続ける、オールマイトの引退でしばらく混乱が続く、連合の動きも読めない以上今雄英から人を追い出すわけにはいかないと。行った5人はもちろん、知っていながら止められなかった12人も理由はどうあれ信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してほしいと締めくくられ、中に入って元気にいこうなどという相澤にみんなついていけなかった。
思いつめた表情をしているみんなと切島みた爆豪が上鳴を連れていく。そして出てきた上鳴は「うェ〜〜〜い……」とアホ面を晒していた。
「バフォッ」
「何? 爆豪何を……」
「切島」
「え怖っ、何カツアゲ!?」
「違え俺が下した金だ! いつまでもシミったれられっとこっちも気分悪ィんだ」
その額は切島が爆豪奪還のためにアマゾンでぽちった暗視鏡の値段だった。「いつもみてーに馬鹿晒せ」と口にする爆豪の気遣いに切島は爆豪の思いやりを感じた。
「皆! すまねえ……!! 詫びにもなんねえけど……今夜はこの金で焼き肉だ!!」
「いいじゃありませんの! わたくし焼くだけなら得意ですわ!」
「焼くに得意もなんもねぇンだわ!」
寮生活初日は慌ただしいスタートだった。一通り設備の案内をされたあと各自部屋作りへと移行する。そうして終わったころ芦戸の提案でお部屋披露大会が始まった。
「和室だ!! 造りが違くね!?」
「まぁ……轟リフォームしましたのね。素晴らしいですわ!」
「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねぇ」
「理由はいいわ! 当日即リフォームってどうやったんだおまえ!」
「……頑張った……」
「何だよこいつ!!」
実家が完全に洋風建築というか宮殿と見まごうそれであるため、傀薇にとって畳というものは新鮮だった。興味深げに畳を触る傀薇に轟が「気になるなら今度部屋に遊びに来ればいい」と誘った。傀薇はにっこりと笑って「そうですわね、今度お邪魔しますわ」と返した。轟の恋心を知っている緑谷たちがそのやり取りを頑張れ轟くん……! とこっそり応援していた。
「わたくしの部屋ですけれど、少しベッドが大きすぎましたの。手狭で申し訳ないですわ……」
「……まじででかっ! お姫様のベッドじゃーん!」
「天蓋……」
「わー! こっちには可愛いぬいぐるみ! あれ写真がある……わ! すごいイケメンが二人も!! もしかしてどっちか傀薇ちゃんの彼氏!?」
葉隠が興奮したように言ったそれに轟がぴくっと反応する。傀薇が答えるそれより早く八百万が「傀薇さんのお兄様方ですわ!」と食い気味に主張した。
「あー言われてみれば似てる! 尖った耳とか、釣り目がちの大きな目とか!」
「こんなイケメンなお兄さんが二人もいるんだ! いいなぁ傀薇ちゃん!」
「まぁ……どちらも尊敬する兄ですわね。でも少々過保護で困ってますの」
「え〜! でもうらやまし〜!」
傀薇の部屋というより話題は兄のそれであった。轟は彼氏でも友達でもなく兄だというそれにほっとした。結局部屋王は部屋と関係なく、おいしいシフォンケーキでおもてなしをしてくれた砂藤の部屋だった。唯一畳というものに関心を示した傀薇が女子の中で砂藤ではなく轟に入れていた。その一票にこれ以上ないものを感じた轟が浮かれているのを緑谷が微笑ましそうに見ていた。
だが眠気に負けて解散しようとするも、轟達爆豪奪還組は蛙吹に話があると呼び出される。そこで蛙吹が抱えていた苦悩を初めて知り、5人は改めて自分たちの行動の責任を感じたのだった。
「轟? こんな時間に女性の部屋を訪ねるのはよくありませんわよ? どうなさったの?」
蛙吹と話し終わった後、眠気を押し切って傀薇の部屋を轟は訪れていた。蛙吹の話を聞いて、轟は前に重ねた傀薇の言葉を思い出し、話さなければならないと来ていたのだ。
どこか深刻な様子のそれに傀薇が轟を中へ招き入れた。廊下でする話ではないのだろうと察したからだ。ベッドで圧迫されているがかろうじてテーブルスペースを確保したそこにハーブティーを入れる。緊張した様子だったので傀薇の心遣いだった。
「俺……爆豪を助けに行ったとき、あれが間違ってるって思わなかったんだ。合宿で目の前で爆豪が攫われて、でもまだ手を伸ばせるんだって気づいたとき俺はそれが間違ってるなんて思わなかった」
「まぁ、轟はそういう奴ですわよね。良くも悪くも真っ直ぐすぎるのですわ」
あっさりと言い切った傀薇に轟は何も言えなかった。カップに口をつけてハーブティーを飲む傀薇は寝る前というのもあり髪をおろしていた。傷だらけだった身体も回復したようで傷跡もなくなっていた。それに安堵するもあの時の光景が忘れられかった。
「俺、お前が倒れたってしってすげぇ後悔した」
「後悔? 何をですの?」
「お前のピンチに俺は駆けつけられなかった……」
「そんなの場所が違うんだから当たり前ですわ。わたくしが脳無と戦っている間、あなたも別の場所で爆豪を守ろうと戦っていたではありませんの」
「そうだけど、そうじゃねぇ……俺がお前を守りたかった……俺も八百万みてぇにお前のヒーローになりたかったんだ」
さすがにこの告白には傀薇も目を見開いた。まさか轟からそんな話がとんでくるとは思ってなかったのだ。
「爆豪の奪還、もしお前の意識が戻ってたら……お前もついてきてくれたのか……?」
今度の轟の表情は複雑だった。そうであってほしいという感情と、やっぱりいやだという感情が見え隠れする。いつになく不安定な轟の様子に傀薇は少し困ってしまった。
「ルール違反はいけませんわ。それにわたくしたちは保須で学んだはずですもの」
「……お前も飯田側か」
「やっぱり飯田はそうでしたのね。ちゃんと学習しててえらいですわ」
「どうせ俺は学習しねぇ……」
拗ねた様子でそっぽを向く轟に傀薇は苦笑する。今日の轟はなんだか子供みたいだ。でも、と傀薇は思う。自分だってルール違反をするところだったのだ。嫌な予感がすると身体が勝手に動いていた。気づいたときには身体が動いて走っていたのだから。
「でもきっとわたくしも――じっとなんてしていられませんでしたわ」
「! 手繰」
「頭ではわかっているはずなのに、身体が勝手に動いてしまいますの。だって級友のピンチなんですもの。手を伸ばせるとしってしまったら……きっと飛び出してしまいますわ」
その返答に轟が「やっぱりお前はお前だ」とほっとしたように口にする。けれどどこか拗ねたままの表情に傀薇はおや? と訝しんだ。まだ拗ねてらっしゃる。轟、と声をかけようとしたところで轟の手が傀薇の頬に伸びた。
「お前が爆豪気にしてんの、嫌だ」
「轟? どうしましたの?」
「俺のことだけみててくれ……」
ついに場所を移動して抱き着いてきた轟にさすがの傀薇も困ってしまう。以前女子会で雛鳥のそれだとはいったけれどさすがに度が過ぎている。ここは無暗に女性に触れてはならないと教えなければと意を決したところ轟が衝撃の告白をする。
「おまえが好きだ……俺と付き合ってくれ」
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