「いらっしゃい。さ、中にお入りになって」
「……ああ」
いつかと同じようにテーブルにハーブティーを並べ静かに轟の話を待つ。なんだかこうしてみると轟が緑谷と戦ったあと似ているなと感じた。
「俺たち……別れた方がいいかと思ってる」
「……急にどうしましたの」
「元々俺が無理やり押して付き合っただろ……俺がお前に気持ちを押し付けた。お前は優しいから俺を拒絶できなかった。ならこんなのは……よくねぇと思った」
間違いなく夜嵐の影響だと確信する。詳しく聞いていたわけではないけれど、夜嵐はエンデヴァーと何かあったようで、昔の轟も余裕がなかった。そのとき絡んだものだから轟とエンデヴァーの悪いところを同一視していたのだ。自分が忌み嫌っていた父親と似通ったところを直視して、傀薇とのことを見つめなおしたのだろう。
無理やり付き合ったというのがおそらくエンデヴァーが轟の母親を個性婚で弱みに付け込み娶ったことに重ねたのだろうと傀薇は気づいてしまった。
「まぁ……焦凍ったら本当に手がかかりますわね」
「? 手がかかる……?」
「ええ。あまりに手がかかって、もうほっとけませんわ」
わがままなのに繊細だ。轟の独占欲みたいなのは元をたどれば、おそらく幼い頃に母親と引き離されたことに原因があるのだと思う。轟はお母さんのことが本当に大好きだったようだから。無意識に自分を甘えさせてくれる人を求めているのか、付き合ってからの轟は本当に甘えたがりだった。それをもう傀薇も当たり前のように受けいれてしまって、今更もう元の距離感に戻りましょうはできそうになかった。だってもう轟のことが可愛くてしかたないのだもの。
「わたくし手がかかる方が好みですの。わたくしがついていないと心配でたまらない人とか。そう、ちょうど……焦凍みたいな」
「俺……?」
「だってあなた、もうわたくしがいないとだめでしょう」
笑ってそういった傀薇に轟の瞳が大きく見開く。「……いいのか……」震える声で紡がれたそれに傀薇は抱きしめて答えた。
「あなたがいいんですわ、焦凍」
「傀薇……俺は――」
「始まりがどんなでもかまいませんわ。梅雨ちゃんがいってましたの。恋は突然落ちるものだと。こんなにあなたが可愛いく思えてしまうんだもの。きっとわたくし恋してるんですわ」
「可愛いって……それほんとに恋か」
「あら、焦凍はわたくしのこと可愛く思ってませんの?」
「思ってる」
「まぁ、いいお返事。即答でしたわね。ならばそういうことなのですわ。ちなみにわたくしはかっこいい殿方より可愛い殿方が好きですの」
「そうか、ならいい。……可愛いでいい」
「素直でお可愛いこと」
ずるずると上体を移動し、膝に頭を乗せてくる轟が可愛かった。膝枕好きですものね、と傀薇は可愛い可愛いと頭を優しく撫でた。いつかの憑き物がとれたように、何一つ憂いのない満ち足りた顔は酷く幼くて微笑ましかった。
そのまま結局寝落ちしてしまった轟をベッドに移動させようとしたところしがみついて離れなかったので、しょうがなくベッドの上で膝枕をしていた。轟は寝相が悪い。それ故かしがみつく力が強くサキュバスの体質を受け継いだ傀薇じゃなかったら身体を痛めていたと確信する。それに何だかんだ自分たちはお似合いだと思う。需要と供給が一致してるのだから何の問題もない。
「ふふ、ほんと……焦凍って顔がいいですわね。なんでも許してしまいそう……」
それに、轟の顔で迫られたら落ちる他ないのだ。
それから夕飯の時間になりさすがに起こした。起きたがらなかったけれど無理やり起こした。仮免で疲れているのだから、だからこそご飯はちゃんと食べなければ。寝ぼけ眼で食事をする轟を起こしつつ食事をする。人前ではまだ甘えるのを自重していたのだが眠いからか、はたまた両想いになったという意識からかどうも甘えたが抜けなかった。油断するとすりっと頬を擦りよせてくるので芦戸や葉隠が大興奮だった。
少し覚醒してきた轟を緑谷と飯田に任せ入浴する。轟の方でも緑谷たちが一緒に入浴してくれているはずだった。本当に轟はいい友達を持った。髪を乾かし終わった頃、部屋に轟が訪ねてきた。
「来ると思ってましたわ」
「以心伝心だな。泊めてくれ」
「ちょっとそこまでは読んでませんでしたけれど……しょうがありませんわね」
もう両想いであるしまぁいいかと思う。さすがに不埒なことはよくないが。純粋に一緒に寝たいと強請ってくる轟は可愛かったのだ。甘えたりなかったか、そうか。なら仕方ないなといった具合である。
「傀薇、膝枕してくれ」
「はいはい、本当に好きですわねぇ」
「ん……すげぇ安心する。傀薇が頭撫でてくれんの好きだ。気持ちいい」
「本当に可愛いこと……」
多分轟が傀薇に求めているのは母性だ。けれど轟は傀薇に恋をしている。不思議なものだと思う。傀薇も轟に対して母性を感じているけれどそれでもちゃんと好きなのだ。こうしていると満たされるような気持ちと一緒にドキドキしてくる。恋愛って不思議。
そのまま寝落ちそうな轟を宥めて一緒にベッドに横になる。今度はぎゅっと傀薇の方が抱きしめられた。がっちりしている身体に抱きしめられると無性に照れてしまった。轟の方から今度は傀薇の髪を撫でてくるものだから余計にドキドキしてしまう。
目が合って、お互い少し赤い顔が見えた。電気を消そうと起き上がろうとして轟に阻まれる。近寄ってくる顔に傀薇は色々と察してしまい、少し迷って目をつぶった。重なった柔らかな唇の感触に心臓がうるさいくらいドキドキした。
「傀薇……」
「な、なんですの……」
「大好きだ……」
ぎゅうっと抱きしめられてそのまま轟は寝息を立てた。どうしようもなく赤い顔を見られずに済んでよかったと思うのにこのドキドキどうしてくれますのと思う自分もいる。うわああと叫びたい衝動にかられつつも電気を消して傀薇も眠りの姿勢を整えた。
寝相のよろしくない轟が胸にダイブして傀薇を絞め殺そうかという力で起きるまであと数時間の話であった。しばらくお泊りは禁止にした。ものすごく衝撃を受けた顔をしていたが知ったことではなかった。
「……ああ」
いつかと同じようにテーブルにハーブティーを並べ静かに轟の話を待つ。なんだかこうしてみると轟が緑谷と戦ったあと似ているなと感じた。
「俺たち……別れた方がいいかと思ってる」
「……急にどうしましたの」
「元々俺が無理やり押して付き合っただろ……俺がお前に気持ちを押し付けた。お前は優しいから俺を拒絶できなかった。ならこんなのは……よくねぇと思った」
間違いなく夜嵐の影響だと確信する。詳しく聞いていたわけではないけれど、夜嵐はエンデヴァーと何かあったようで、昔の轟も余裕がなかった。そのとき絡んだものだから轟とエンデヴァーの悪いところを同一視していたのだ。自分が忌み嫌っていた父親と似通ったところを直視して、傀薇とのことを見つめなおしたのだろう。
無理やり付き合ったというのがおそらくエンデヴァーが轟の母親を個性婚で弱みに付け込み娶ったことに重ねたのだろうと傀薇は気づいてしまった。
「まぁ……焦凍ったら本当に手がかかりますわね」
「? 手がかかる……?」
「ええ。あまりに手がかかって、もうほっとけませんわ」
わがままなのに繊細だ。轟の独占欲みたいなのは元をたどれば、おそらく幼い頃に母親と引き離されたことに原因があるのだと思う。轟はお母さんのことが本当に大好きだったようだから。無意識に自分を甘えさせてくれる人を求めているのか、付き合ってからの轟は本当に甘えたがりだった。それをもう傀薇も当たり前のように受けいれてしまって、今更もう元の距離感に戻りましょうはできそうになかった。だってもう轟のことが可愛くてしかたないのだもの。
「わたくし手がかかる方が好みですの。わたくしがついていないと心配でたまらない人とか。そう、ちょうど……焦凍みたいな」
「俺……?」
「だってあなた、もうわたくしがいないとだめでしょう」
笑ってそういった傀薇に轟の瞳が大きく見開く。「……いいのか……」震える声で紡がれたそれに傀薇は抱きしめて答えた。
「あなたがいいんですわ、焦凍」
「傀薇……俺は――」
「始まりがどんなでもかまいませんわ。梅雨ちゃんがいってましたの。恋は突然落ちるものだと。こんなにあなたが可愛いく思えてしまうんだもの。きっとわたくし恋してるんですわ」
「可愛いって……それほんとに恋か」
「あら、焦凍はわたくしのこと可愛く思ってませんの?」
「思ってる」
「まぁ、いいお返事。即答でしたわね。ならばそういうことなのですわ。ちなみにわたくしはかっこいい殿方より可愛い殿方が好きですの」
「そうか、ならいい。……可愛いでいい」
「素直でお可愛いこと」
ずるずると上体を移動し、膝に頭を乗せてくる轟が可愛かった。膝枕好きですものね、と傀薇は可愛い可愛いと頭を優しく撫でた。いつかの憑き物がとれたように、何一つ憂いのない満ち足りた顔は酷く幼くて微笑ましかった。
そのまま結局寝落ちしてしまった轟をベッドに移動させようとしたところしがみついて離れなかったので、しょうがなくベッドの上で膝枕をしていた。轟は寝相が悪い。それ故かしがみつく力が強くサキュバスの体質を受け継いだ傀薇じゃなかったら身体を痛めていたと確信する。それに何だかんだ自分たちはお似合いだと思う。需要と供給が一致してるのだから何の問題もない。
「ふふ、ほんと……焦凍って顔がいいですわね。なんでも許してしまいそう……」
それに、轟の顔で迫られたら落ちる他ないのだ。
それから夕飯の時間になりさすがに起こした。起きたがらなかったけれど無理やり起こした。仮免で疲れているのだから、だからこそご飯はちゃんと食べなければ。寝ぼけ眼で食事をする轟を起こしつつ食事をする。人前ではまだ甘えるのを自重していたのだが眠いからか、はたまた両想いになったという意識からかどうも甘えたが抜けなかった。油断するとすりっと頬を擦りよせてくるので芦戸や葉隠が大興奮だった。
少し覚醒してきた轟を緑谷と飯田に任せ入浴する。轟の方でも緑谷たちが一緒に入浴してくれているはずだった。本当に轟はいい友達を持った。髪を乾かし終わった頃、部屋に轟が訪ねてきた。
「来ると思ってましたわ」
「以心伝心だな。泊めてくれ」
「ちょっとそこまでは読んでませんでしたけれど……しょうがありませんわね」
もう両想いであるしまぁいいかと思う。さすがに不埒なことはよくないが。純粋に一緒に寝たいと強請ってくる轟は可愛かったのだ。甘えたりなかったか、そうか。なら仕方ないなといった具合である。
「傀薇、膝枕してくれ」
「はいはい、本当に好きですわねぇ」
「ん……すげぇ安心する。傀薇が頭撫でてくれんの好きだ。気持ちいい」
「本当に可愛いこと……」
多分轟が傀薇に求めているのは母性だ。けれど轟は傀薇に恋をしている。不思議なものだと思う。傀薇も轟に対して母性を感じているけれどそれでもちゃんと好きなのだ。こうしていると満たされるような気持ちと一緒にドキドキしてくる。恋愛って不思議。
そのまま寝落ちそうな轟を宥めて一緒にベッドに横になる。今度はぎゅっと傀薇の方が抱きしめられた。がっちりしている身体に抱きしめられると無性に照れてしまった。轟の方から今度は傀薇の髪を撫でてくるものだから余計にドキドキしてしまう。
目が合って、お互い少し赤い顔が見えた。電気を消そうと起き上がろうとして轟に阻まれる。近寄ってくる顔に傀薇は色々と察してしまい、少し迷って目をつぶった。重なった柔らかな唇の感触に心臓がうるさいくらいドキドキした。
「傀薇……」
「な、なんですの……」
「大好きだ……」
ぎゅうっと抱きしめられてそのまま轟は寝息を立てた。どうしようもなく赤い顔を見られずに済んでよかったと思うのにこのドキドキどうしてくれますのと思う自分もいる。うわああと叫びたい衝動にかられつつも電気を消して傀薇も眠りの姿勢を整えた。
寝相のよろしくない轟が胸にダイブして傀薇を絞め殺そうかという力で起きるまであと数時間の話であった。しばらくお泊りは禁止にした。ものすごく衝撃を受けた顔をしていたが知ったことではなかった。
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