仮免をとったその晩になんと爆豪と緑谷が喧嘩して謹慎処分になった。新学期早々このような形で迎えてしまい生活指導のハウンドドッグの怒りはすさまじかった。どれくらいすさまじかったのかというと思わず人語を忘れる程であった。ヒーローインターンの話も出てきて、けれどプレゼントマイクの授業でしれっと習っていない文法がでてきたりと学業もレベルが上がっていた。
ようやく緑谷の謹慎明けに三年生のトップ3……通称ビッグ3がインターンの説明にやってきてくれた。物凄く後ろ向きな天喰と好奇心旺盛な波動、つぶらな瞳が特徴的な通形だった。通形がその強さを身をもって説明してくれたおかげでA組の面々は腹パンを食らって痛い思いをしていた。唯一まだ謹慎が解けていない爆豪と仮免とってないからと不参加だった轟だけが無事だった。
結果的にヒーローインターンはインターンの受け入れ実績が多い事務所に限り実地を許可するというものだった。みながインターン先を検討する中、傀薇はマジェスティックを当たることにした。前回の職場体験は残念な結果に終わったが、それでもマジェスティックは「仮免取れたらうちにおいで。まだ教えたいことがたくさんあるんだ」と期待をかけてくれていた。結果的にマジェスティックも受け入れ実績を多く持っていたためインターンが可能になった。轟が「傀薇……勉強大丈夫なのか」といってきたので「大丈夫じゃありませんわね!」と元気いっぱいに答えた。轟が教えてくれるそうだった。素敵な恋人である。
「傀薇ちゃーん!」
「マジェスティック! お久しぶりですわ!」
「うんうん、ちょっと見ないうちにまた美人になったねぇ。彼氏でもできた?」
「まぁ! よくわかりましたわね! そうなんですの!」
「え、マジ? 冗談だったんだけどなぁ」
苦笑するマジェスティックに傀薇が「冗談でしたの!」と驚く。てっきり見破られたと思っていたのだ。
「誰々? 俺の知っている人?」
「多分知ってますわ。体育祭で二位だった――」
「あー! エンデヴァーの息子の」
「ええ、半冷半燃の」
「そりゃすごいの捕まえたねぇ」
「逆ですわ。わたくしが捕まりましたの」
悪戯に微笑む傀薇にマジェスティックがおやと驚いた顔をした。ちょっと見ないうちに自分の魅せ方をまた学習したのかと思いきやこれは恋する乙女の顔だなぁと再認識する。魅力的なその表情にこりゃ彼氏くんも気が気じゃないなと同情した。
「さて傀薇ちゃん、さっそくだけど職場体験で習得してもらうはずだったものをやってもらうよ」
「その節はお世話になりましたわ……わたくし精一杯頑張りますわ!」
「うんうんその意気その意気。傀薇ちゃんにやってもらうのは――じゃーん、マジックでーす」
「……マジック……?」
マジェスティックの手元から出てきた紙吹雪に傀薇は思わずぽかーんとしていた。マジック……マジックですの。
「なぜ……?」
「なぜってこれが一番手っ取り早くいろんな人を笑顔にできるからさ」
「笑顔に……」
「笑顔を守るのはヒーローの役目だけど、笑顔を作るのもまたヒーローだからね。君は見栄えもいいし、個性柄マジシャンにも向いてる。それにマジックは器用じゃないとできない。君の個性は複数を同時に使役できるんだ、奇術と相性いいはずだよ」
「奇術……そうですわね。わたくし頑張りますわ!」
こうして傀薇のマジック特訓が始まった。一つできるようになると二つを同時に個性でやり、二つできれば三つと増やしていく。これがなかなか頭の回転だったり手先の器用さだったりと磨かれていく。中でも展開の順番は傀薇の頭を使わせた。奇術とは予想できないことが起きてこそだ。如何に予測させず効率よくマジックを披露できるかは傀薇を知らず知らずのうちに大きく成長させていた。
寮に戻ると何やら緑谷、切島、麗日に蛙吹といった傀薇以外のインターン組が思いつめた顔をしていた。そろって暗い顔をしているからおそらくインターンでなにかあったのだろう。ならば話を聞くわけにもいかないと傀薇は思い、マジックをすることにした。言葉をかわせずとも気持ちを伝えられる、気分を上げられるマジックが早くも役に立つことに傀薇はマジェスティックってやっぱりすごいですわと心の中で感謝した。
「さぁみなさん、これよりマリオネットの奇術ショーの開幕ですわ。注目なさって!」
「手繰さん……? 奇術ショーって、え……?」
「え、なになに」
「手繰なんかやんのか……?」
「ケロ……?」
「傀薇がなんかしてくれんなら俺も見る」
ちゃっかり混ざってきた轟が可愛かった。「まぁ、ご覧になって」と傀薇は手品を繰り出していく。どこからともなく帽子を取り出し、ひっくり返して中に何も入ってないのをアピールすると魔法をかけるような仕草をする。すると中からキャンディが山ほど溢れてくる。思わず「おお……!!」と声が出た。
「さ、みなさん好きなキャンディを選んでらして」
「俺これ! 赤いやつ!」
「じゃあ私ピンク!」
「ケロケロ……緑にしようかしら」
「えっと僕は……(オールマイトっぽい)黄色で」
「俺はこれ。なんか赤と混ざってるやつ二色の」
「承知いたしましたわ」
それぞれが選んだキャンディをこれまた何も入っていないアピールをした帽子に入れくるくると回ってダンスをする。軽やかなステップに思わず魅入っていると傀薇が止まり、中からキャンディを出す。
「えっええ!!? 私のハートになってるうう!」
「俺も! ドラゴンだ!! すげええええ!!」
「僕もオールマイトになってる!!」
「ケロッ、私のは蛙だわ」
「俺のは……混じってた色が半分ずつに綺麗に分かれてる……」
「えっへん! なんの変哲もないキャンディですわ。どうぞお召し上がりになって」
ウィンクをして茶目っ気たっぷりにそういった傀薇に五人は大興奮だった。すごいったらありゃしない。何をどうしたかまったくわからないが素晴らしいマジックだった。すっかり笑顔になったインターン組に傀薇は満足げな笑みを浮かべた。頑張ってと心の中でエールを送るのだった。
「――ということがありましたのよ、マジェスティック! マジックってすごいんですのね!」
「あはは、すごいのはどちらかというと傀薇ちゃんかなぁ。この短時間で本職顔負けだよ」
「それほどでもありますわ!」
「うんうん、君は天才だ!」
そういってマジェスティックは傀薇の頭を優しく撫でた。すっかり信頼関係が築かれている。もう何年も前からの付き合いのような気さえしていた。マジェスティックは真面目な顔をして改めて切り出した。
「本当に傀薇ちゃんはすごいよ。君は俺の自慢の愛弟子だ」
「まぁ! わたくしそんなにマジェスティックに買ってもらえましたのね!」
「売っての……おや、合ってるぞ。そう、だから君にはこれからこう名乗ってほしいな。奇術ヒーローマリオネット、魔法ヒーローマジェスティックの愛弟子だってね!」
「!! ええ、ええ……!! もちろんですわ!! ありがとうマジェスティック、わたくしとても嬉しいですわ……!!」
「そんな風に喜んでもらえると俺も嬉しいよ。改めてよろしく、俺の愛弟子」
「よろしくお願いしますわ! マスター!」
こうしてマリオネットは奇術ヒーローマリオネットと改め、正式に魔法ヒーローマジェスティックの愛弟子となったのだった。彼女の奇術は多くがマジェスティックが仕込んだものであり、それを彼女は進化させ続けたという。彼らの師弟愛は長きにわたって奇術という形で紡がれていくのだが、この時はまだそのことを彼らは知らなかった。
ようやく緑谷の謹慎明けに三年生のトップ3……通称ビッグ3がインターンの説明にやってきてくれた。物凄く後ろ向きな天喰と好奇心旺盛な波動、つぶらな瞳が特徴的な通形だった。通形がその強さを身をもって説明してくれたおかげでA組の面々は腹パンを食らって痛い思いをしていた。唯一まだ謹慎が解けていない爆豪と仮免とってないからと不参加だった轟だけが無事だった。
結果的にヒーローインターンはインターンの受け入れ実績が多い事務所に限り実地を許可するというものだった。みながインターン先を検討する中、傀薇はマジェスティックを当たることにした。前回の職場体験は残念な結果に終わったが、それでもマジェスティックは「仮免取れたらうちにおいで。まだ教えたいことがたくさんあるんだ」と期待をかけてくれていた。結果的にマジェスティックも受け入れ実績を多く持っていたためインターンが可能になった。轟が「傀薇……勉強大丈夫なのか」といってきたので「大丈夫じゃありませんわね!」と元気いっぱいに答えた。轟が教えてくれるそうだった。素敵な恋人である。
「傀薇ちゃーん!」
「マジェスティック! お久しぶりですわ!」
「うんうん、ちょっと見ないうちにまた美人になったねぇ。彼氏でもできた?」
「まぁ! よくわかりましたわね! そうなんですの!」
「え、マジ? 冗談だったんだけどなぁ」
苦笑するマジェスティックに傀薇が「冗談でしたの!」と驚く。てっきり見破られたと思っていたのだ。
「誰々? 俺の知っている人?」
「多分知ってますわ。体育祭で二位だった――」
「あー! エンデヴァーの息子の」
「ええ、半冷半燃の」
「そりゃすごいの捕まえたねぇ」
「逆ですわ。わたくしが捕まりましたの」
悪戯に微笑む傀薇にマジェスティックがおやと驚いた顔をした。ちょっと見ないうちに自分の魅せ方をまた学習したのかと思いきやこれは恋する乙女の顔だなぁと再認識する。魅力的なその表情にこりゃ彼氏くんも気が気じゃないなと同情した。
「さて傀薇ちゃん、さっそくだけど職場体験で習得してもらうはずだったものをやってもらうよ」
「その節はお世話になりましたわ……わたくし精一杯頑張りますわ!」
「うんうんその意気その意気。傀薇ちゃんにやってもらうのは――じゃーん、マジックでーす」
「……マジック……?」
マジェスティックの手元から出てきた紙吹雪に傀薇は思わずぽかーんとしていた。マジック……マジックですの。
「なぜ……?」
「なぜってこれが一番手っ取り早くいろんな人を笑顔にできるからさ」
「笑顔に……」
「笑顔を守るのはヒーローの役目だけど、笑顔を作るのもまたヒーローだからね。君は見栄えもいいし、個性柄マジシャンにも向いてる。それにマジックは器用じゃないとできない。君の個性は複数を同時に使役できるんだ、奇術と相性いいはずだよ」
「奇術……そうですわね。わたくし頑張りますわ!」
こうして傀薇のマジック特訓が始まった。一つできるようになると二つを同時に個性でやり、二つできれば三つと増やしていく。これがなかなか頭の回転だったり手先の器用さだったりと磨かれていく。中でも展開の順番は傀薇の頭を使わせた。奇術とは予想できないことが起きてこそだ。如何に予測させず効率よくマジックを披露できるかは傀薇を知らず知らずのうちに大きく成長させていた。
寮に戻ると何やら緑谷、切島、麗日に蛙吹といった傀薇以外のインターン組が思いつめた顔をしていた。そろって暗い顔をしているからおそらくインターンでなにかあったのだろう。ならば話を聞くわけにもいかないと傀薇は思い、マジックをすることにした。言葉をかわせずとも気持ちを伝えられる、気分を上げられるマジックが早くも役に立つことに傀薇はマジェスティックってやっぱりすごいですわと心の中で感謝した。
「さぁみなさん、これよりマリオネットの奇術ショーの開幕ですわ。注目なさって!」
「手繰さん……? 奇術ショーって、え……?」
「え、なになに」
「手繰なんかやんのか……?」
「ケロ……?」
「傀薇がなんかしてくれんなら俺も見る」
ちゃっかり混ざってきた轟が可愛かった。「まぁ、ご覧になって」と傀薇は手品を繰り出していく。どこからともなく帽子を取り出し、ひっくり返して中に何も入ってないのをアピールすると魔法をかけるような仕草をする。すると中からキャンディが山ほど溢れてくる。思わず「おお……!!」と声が出た。
「さ、みなさん好きなキャンディを選んでらして」
「俺これ! 赤いやつ!」
「じゃあ私ピンク!」
「ケロケロ……緑にしようかしら」
「えっと僕は……(オールマイトっぽい)黄色で」
「俺はこれ。なんか赤と混ざってるやつ二色の」
「承知いたしましたわ」
それぞれが選んだキャンディをこれまた何も入っていないアピールをした帽子に入れくるくると回ってダンスをする。軽やかなステップに思わず魅入っていると傀薇が止まり、中からキャンディを出す。
「えっええ!!? 私のハートになってるうう!」
「俺も! ドラゴンだ!! すげええええ!!」
「僕もオールマイトになってる!!」
「ケロッ、私のは蛙だわ」
「俺のは……混じってた色が半分ずつに綺麗に分かれてる……」
「えっへん! なんの変哲もないキャンディですわ。どうぞお召し上がりになって」
ウィンクをして茶目っ気たっぷりにそういった傀薇に五人は大興奮だった。すごいったらありゃしない。何をどうしたかまったくわからないが素晴らしいマジックだった。すっかり笑顔になったインターン組に傀薇は満足げな笑みを浮かべた。頑張ってと心の中でエールを送るのだった。
「――ということがありましたのよ、マジェスティック! マジックってすごいんですのね!」
「あはは、すごいのはどちらかというと傀薇ちゃんかなぁ。この短時間で本職顔負けだよ」
「それほどでもありますわ!」
「うんうん、君は天才だ!」
そういってマジェスティックは傀薇の頭を優しく撫でた。すっかり信頼関係が築かれている。もう何年も前からの付き合いのような気さえしていた。マジェスティックは真面目な顔をして改めて切り出した。
「本当に傀薇ちゃんはすごいよ。君は俺の自慢の愛弟子だ」
「まぁ! わたくしそんなにマジェスティックに買ってもらえましたのね!」
「売っての……おや、合ってるぞ。そう、だから君にはこれからこう名乗ってほしいな。奇術ヒーローマリオネット、魔法ヒーローマジェスティックの愛弟子だってね!」
「!! ええ、ええ……!! もちろんですわ!! ありがとうマジェスティック、わたくしとても嬉しいですわ……!!」
「そんな風に喜んでもらえると俺も嬉しいよ。改めてよろしく、俺の愛弟子」
「よろしくお願いしますわ! マスター!」
こうしてマリオネットは奇術ヒーローマリオネットと改め、正式に魔法ヒーローマジェスティックの愛弟子となったのだった。彼女の奇術は多くがマジェスティックが仕込んだものであり、それを彼女は進化させ続けたという。彼らの師弟愛は長きにわたって奇術という形で紡がれていくのだが、この時はまだそのことを彼らは知らなかった。
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