緑谷たちが何を思い悩んでいたのか知ったのはそれから数日後のことだった。ニュースで死穢八斎會にヒーローたちが乗り込み戦闘を行っていることが報道されていた。そしてそこにはインターン中の緑谷たちも含まれているということをA組は理解していた。皆共有スペースに集まって心配していた。轟が傀薇の手を握る。それは元気づけているようにも、安心を得たいようにも見えた。きっとどっちの感情もあったのだ。
「帰ってきたァアアア! 奴らが帰ってきたァ!!!」
「大丈夫だったかよォ!!?」
「大変だったな!」
「ニュース見たぞおい!!」
「みんな心配してましたのよ」
「まァとにかくガトーショコラ食えよ!」
「お騒がせさんたち☆」
「おまえら毎度すげえことなって帰ってくる、怖いよいいかげん!」
「無事で何より」
「ブジかなあ……無事……うん」
帰ってきた4人を騒々しく迎える。葉隠が麗日と蛙吹に抱き着いて泣いていた。傀薇がさっと淹れたてのハーブティーをテーブルに置く。砂藤のガトーショコラも切り分けて一緒に置いた。くつろぎ空間の出来上がりである。
「皆心配だったのはわかるが!! 落ち着こう!! 報道で見ただろうあれだけの事 があったんだ。級友であるなら彼らの心を労り静かに休ませてあげるべきだ。身体だけでなく……心もすり減ってしまっただろうから……」
「飯田くん飯田くん」
「ム」
「ありがとうでも……大丈夫」
「じゃあいいかい。とっっっっっっても心配だったんだぞもう俺はもう君たちがもう!!」
「おめーがいっちゃん激しい」
4人はもう前を向いていた。悔しさも悲しみも今度はそうならないように。今度こそ助けれられように。傀薇は4人なら大丈夫だと判断して、もう寝るとスマホとにらめっこしながら部屋に戻ろうとする轟の方へ向いた。
「焦凍、また明日」
「……ああ。おやすみ」
あんな顔するのは家の事、とりわけエンデヴァー絡みであるのを傀薇は知っていた。傀薇は静かに見守る。轟が少しずつ乗り越えようとしているのを知っているから。疲れた時に止まり木であれるように傀薇は見守っていた。
「それではマジェスティック、お世話になりましたわ」
「こちらこそ。連合が出てきたのが残念だ。またインターンが再開したら戻っておいで」
「ええ、もちろん!」
緑谷たちが関わった死穢八斎會の件で連合が噛んでいたことからインターンを自粛する運びになってしまい、傀薇のインターンは一度終わることになった。けれどまたいつかインターンが再開することを願って次の約束をする。マジェスティックがこれを見てとスマホを差し出した。
「まぁ……! これってわたくし……!?」
「そう! インターン中の期待の星、奇術ヒーローマリオネット。その美貌と奇術は多くの者から笑顔を取り戻した。いい記事だろう?」
それはインターンの最中に災害現場で恐怖と不安に押しつぶされそうな被災者たちを奇術で笑顔にした事を取り上げられた記事だった。それは大きく拡散しており、フォロワーになるといった嬉しいコメントもたくさん寄せられていた。
「もう傀薇ちゃんも立派なヒーローだ。次に会うときには君はもっと成長してるだろう。楽しみにしてるよ」
「ええ、ええ……! わたくし彼らの期待に応えるためにもきっともっと成長してまた会いに来ますわ」
「ああ、また……俺の愛弟子」
「ええ、また……マスター」
次に会うときはもっと成長した自分で。マジェスティックの名に恥じない愛弟子であるように。彼らは次の再開を楽しみにしていた。こうして傀薇のインターンは一旦終わりを告げた。
寮に帰るとちょうど轟がいた。傀薇を待っていたのか駆け寄ってきて「おかえり」とぎゅっと抱きしめてきた。「ただいま戻りましたわ」と軽く抱き返す。
すり、と擦り寄ってくる姿に甘えたいのサインを察して先に入浴してくるから先に部屋で待ってるように伝える。久しぶりにお泊り解禁であった。轟が嬉しそうに「ほんとか?」って聞いてくるので「ほんとですわ」と返すと「待ってる」ともう一度ぎゅっと抱きしめられて解放された。
「お待たせしましたわ」
「そんなに待ってない。急いできてくれたのか?」
「ええまぁ、待たせてますもの」
「好きで待ってんだ。今度からは気にしなくていい」
「では今度は急ぎませんわ」
当然のように今度からも約束できる関係に傀薇は少し擽ったいものを感じた。風呂上がりで降ろしてある髪を轟が梳いてくれた。「まだ中ちょっと濡れてんな。俺が乾かしてもいいか?」「やっていただけますの? お願いしますわ」まさかの轟の炎を使った乾かし方だった。だが温度調節が上手くなっているようでなかなかに気持ちがいい。轟の努力が垣間見えたのと、あれほど左を憎んでいた轟を知っていただけに感慨深かった。
「よし乾いたぞ」
「ありがとうですわ。意外と気持ちがいいものですわね」
「傀薇がいいならまたいつでもやってやる」
「ふふ、たまにお願いするとしましょうか」
最後に髪を櫛で梳かしてもらい、傀薇もティーセットを準備しようとすると腕を引いて引き止められ、そのままベッドに連行されてしまった。膝枕かと思ったら、それでもなくただ二人そろって広いベッドに横になった。
「焦凍……?」
「このまま寝るまで話したい。だめか?」
「だめじゃありませんわ。そうしましょう」
向き合った轟の横髪を撫でた。そうして轟が話し始めたのは今日あった仮免補講の出来事だった。補講の見学にエンデヴァーが訪れたらしい。昨日スマホを見ていたのはこのことかと合点がいくが、なんと補講内容は子供たちの心をつかむことだったらしい。だいぶ擦れた子たちだったようだが、個性の正しい使い方、人を笑顔にできる使い方で彼らの心を掴んだそう。最終的に根が素直だった子供たちは改心できたようで課題をクリアしたらしい。
「随分濃い一日でしたのね」
「ああ……でも人を笑顔に出来るヒーローになりてぇって改めて思ったよ」
「それは……わたくしもそう思いますわ」
傀薇は今日どうだったんだと聞かれて、インターンが中止になったこととネットニュースに載ったことを話した。載ったのが今日ということもあり、轟も知らなかったらしく見たがったため若干照れながらページを開いた。
「へぇ……こんなことしてたのか。すげぇな」
「まだまだですわ。これからも精進しませんと。マジェスティックの愛弟子として恥じないためにも」
「すっかり奇術ヒーローだもんな。この間の手品もすごかった」
「ふふ、もっとすごいのを今度お見せしますわ。わたくし進化してますの」
「そりゃ楽しみだ」
うとうとしてきた轟の頭を撫でてやる。本格的に寝る姿勢を整えようと轟が距離を詰めてきた。胸に顔を埋めてくるのをしょうがないなと受け入れる。そうして頭を撫でているとぽつりと轟が呟いた。
「でも……他の男が傀薇に騒いでんのいやだ……」
「焦凍?」
「俺の恋人なのにって……思っちまう」
ぎゅうっと抱きしめてきた轟に傀薇はヤキモチモードなのかと察する。相変わらず独占欲が強いこと。
なにか言おうと口を開くが、間もなく規則正しい寝息が聞こえてきて脱力する。いうだけ言って寝てしまった。胸に埋まる紅白の頭を撫でてその夜は更けていくのだった。
いつかと同じようにやはり寝相の悪さが直っていない轟はまたやらかすのだが、それはまた別の話。
「帰ってきたァアアア! 奴らが帰ってきたァ!!!」
「大丈夫だったかよォ!!?」
「大変だったな!」
「ニュース見たぞおい!!」
「みんな心配してましたのよ」
「まァとにかくガトーショコラ食えよ!」
「お騒がせさんたち☆」
「おまえら毎度すげえことなって帰ってくる、怖いよいいかげん!」
「無事で何より」
「ブジかなあ……無事……うん」
帰ってきた4人を騒々しく迎える。葉隠が麗日と蛙吹に抱き着いて泣いていた。傀薇がさっと淹れたてのハーブティーをテーブルに置く。砂藤のガトーショコラも切り分けて一緒に置いた。くつろぎ空間の出来上がりである。
「皆心配だったのはわかるが!! 落ち着こう!! 報道で見ただろう
「飯田くん飯田くん」
「ム」
「ありがとうでも……大丈夫」
「じゃあいいかい。とっっっっっっても心配だったんだぞもう俺はもう君たちがもう!!」
「おめーがいっちゃん激しい」
4人はもう前を向いていた。悔しさも悲しみも今度はそうならないように。今度こそ助けれられように。傀薇は4人なら大丈夫だと判断して、もう寝るとスマホとにらめっこしながら部屋に戻ろうとする轟の方へ向いた。
「焦凍、また明日」
「……ああ。おやすみ」
あんな顔するのは家の事、とりわけエンデヴァー絡みであるのを傀薇は知っていた。傀薇は静かに見守る。轟が少しずつ乗り越えようとしているのを知っているから。疲れた時に止まり木であれるように傀薇は見守っていた。
「それではマジェスティック、お世話になりましたわ」
「こちらこそ。連合が出てきたのが残念だ。またインターンが再開したら戻っておいで」
「ええ、もちろん!」
緑谷たちが関わった死穢八斎會の件で連合が噛んでいたことからインターンを自粛する運びになってしまい、傀薇のインターンは一度終わることになった。けれどまたいつかインターンが再開することを願って次の約束をする。マジェスティックがこれを見てとスマホを差し出した。
「まぁ……! これってわたくし……!?」
「そう! インターン中の期待の星、奇術ヒーローマリオネット。その美貌と奇術は多くの者から笑顔を取り戻した。いい記事だろう?」
それはインターンの最中に災害現場で恐怖と不安に押しつぶされそうな被災者たちを奇術で笑顔にした事を取り上げられた記事だった。それは大きく拡散しており、フォロワーになるといった嬉しいコメントもたくさん寄せられていた。
「もう傀薇ちゃんも立派なヒーローだ。次に会うときには君はもっと成長してるだろう。楽しみにしてるよ」
「ええ、ええ……! わたくし彼らの期待に応えるためにもきっともっと成長してまた会いに来ますわ」
「ああ、また……俺の愛弟子」
「ええ、また……マスター」
次に会うときはもっと成長した自分で。マジェスティックの名に恥じない愛弟子であるように。彼らは次の再開を楽しみにしていた。こうして傀薇のインターンは一旦終わりを告げた。
寮に帰るとちょうど轟がいた。傀薇を待っていたのか駆け寄ってきて「おかえり」とぎゅっと抱きしめてきた。「ただいま戻りましたわ」と軽く抱き返す。
すり、と擦り寄ってくる姿に甘えたいのサインを察して先に入浴してくるから先に部屋で待ってるように伝える。久しぶりにお泊り解禁であった。轟が嬉しそうに「ほんとか?」って聞いてくるので「ほんとですわ」と返すと「待ってる」ともう一度ぎゅっと抱きしめられて解放された。
「お待たせしましたわ」
「そんなに待ってない。急いできてくれたのか?」
「ええまぁ、待たせてますもの」
「好きで待ってんだ。今度からは気にしなくていい」
「では今度は急ぎませんわ」
当然のように今度からも約束できる関係に傀薇は少し擽ったいものを感じた。風呂上がりで降ろしてある髪を轟が梳いてくれた。「まだ中ちょっと濡れてんな。俺が乾かしてもいいか?」「やっていただけますの? お願いしますわ」まさかの轟の炎を使った乾かし方だった。だが温度調節が上手くなっているようでなかなかに気持ちがいい。轟の努力が垣間見えたのと、あれほど左を憎んでいた轟を知っていただけに感慨深かった。
「よし乾いたぞ」
「ありがとうですわ。意外と気持ちがいいものですわね」
「傀薇がいいならまたいつでもやってやる」
「ふふ、たまにお願いするとしましょうか」
最後に髪を櫛で梳かしてもらい、傀薇もティーセットを準備しようとすると腕を引いて引き止められ、そのままベッドに連行されてしまった。膝枕かと思ったら、それでもなくただ二人そろって広いベッドに横になった。
「焦凍……?」
「このまま寝るまで話したい。だめか?」
「だめじゃありませんわ。そうしましょう」
向き合った轟の横髪を撫でた。そうして轟が話し始めたのは今日あった仮免補講の出来事だった。補講の見学にエンデヴァーが訪れたらしい。昨日スマホを見ていたのはこのことかと合点がいくが、なんと補講内容は子供たちの心をつかむことだったらしい。だいぶ擦れた子たちだったようだが、個性の正しい使い方、人を笑顔にできる使い方で彼らの心を掴んだそう。最終的に根が素直だった子供たちは改心できたようで課題をクリアしたらしい。
「随分濃い一日でしたのね」
「ああ……でも人を笑顔に出来るヒーローになりてぇって改めて思ったよ」
「それは……わたくしもそう思いますわ」
傀薇は今日どうだったんだと聞かれて、インターンが中止になったこととネットニュースに載ったことを話した。載ったのが今日ということもあり、轟も知らなかったらしく見たがったため若干照れながらページを開いた。
「へぇ……こんなことしてたのか。すげぇな」
「まだまだですわ。これからも精進しませんと。マジェスティックの愛弟子として恥じないためにも」
「すっかり奇術ヒーローだもんな。この間の手品もすごかった」
「ふふ、もっとすごいのを今度お見せしますわ。わたくし進化してますの」
「そりゃ楽しみだ」
うとうとしてきた轟の頭を撫でてやる。本格的に寝る姿勢を整えようと轟が距離を詰めてきた。胸に顔を埋めてくるのをしょうがないなと受け入れる。そうして頭を撫でているとぽつりと轟が呟いた。
「でも……他の男が傀薇に騒いでんのいやだ……」
「焦凍?」
「俺の恋人なのにって……思っちまう」
ぎゅうっと抱きしめてきた轟に傀薇はヤキモチモードなのかと察する。相変わらず独占欲が強いこと。
なにか言おうと口を開くが、間もなく規則正しい寝息が聞こえてきて脱力する。いうだけ言って寝てしまった。胸に埋まる紅白の頭を撫でてその夜は更けていくのだった。
いつかと同じようにやはり寝相の悪さが直っていない轟はまたやらかすのだが、それはまた別の話。
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